21. 光の天使⭐️
ハリウッド映画さながら張り切って抱え上げてみたものの、さすがにジェイの体力では寝室に辿り着くのが精いっぱいで、マリーンはベッドの上に放り出されてバウンドした
「もう、無理しちゃって」
胸に乗っているジェイの頭を抱えてマリーンは笑った
カラカラと風車が回るような乾いた音でジェイも笑っている
「ねぇ、ジェイ
今日は何もしないでって言ったらどうする?」
「いっ! そ、そりゃ、その気がないなら仕方ない」
「それで他の女を探しに行く?」
「まさか、ガキじゃねえし」
「思春期なら?」
「100%女とヤルことしか考えてなかった」
正直な言葉にマリーンは吹き出した
「大人になると寸止めでおあずけくらっても我慢できるのね」
「俺は修業ができてるからな、あのガキじゃ絶対無理だ
今日もナンパに行ったきり帰って来ねえ」
「おカネは取ってないでしょうね」
「バイト代出すから女からカネを取るなと言ってある
妬けるか?」
「ばかばかしい」
「あいつを手放したくない、だから家族になんて言い出した」
「違う!」
叫んだマリーンの頭をジェイは抱えて胸に押し当てた、潤んだ瞳を隠すように
「私、そんなにひどい顔してる?」
「恋する乙女って顔だな」
「嘘よ」
ジェイの大きな掌がマリーンの髪を撫でた
(ああいやだ、この人はこんなときまで優しい)
「傍にいて欲しい、でもヤラせないとかそりゃキツイって」
「だって子供なのよ、ありえない
神様はお許しにならないわ」
「気にするな、神様なんていない
いてもいらない、どうせ役立たずだ」
「罰当たりね
私はずるい? 家族なんて誤魔化さないで、もう私に触るなって言わなきゃいけない?」
「そんなんで諦めるかな」
「玩具を欲しがる子供と同じ、すぐに飽きて目移りするわ」
「おまえはそれでいいのか?」
「そんな火遊びするほど若くない、オバサンになって捨てられるのがオチだもの」
マリーンはジェイの胸の中で小さく頭を振り、消え入りそうな声で言った
「俺はマリーンなら100歳でも抱く自信はあるぞ
そん時は俺もジイサンだから勃てば、だけどな」
「もう、やだジェイ」
腕の中で笑い出したマリーンの体が揺れる
ジェイは微笑んで彼女を抱く腕に力を入れた
「ところでマリーンさん、ほんとに今日はおあずけ?」
「ばーか」
そっと横たえるとマリーンがベッドの上で手を差し伸べてくる
ジェイはその名の通り海だと思う
すべてを許し、すべてを愛し、すべてを飲み込む
(溺れているんだろうな、俺は)
お互いを見つめながらボタンを外す儀式
両手で頬を包み口づけるジェイが、今日はとても優しくやがて激しい
(いつの頃からだろう)
何も言わなくても、マリーンが求める瞬間がわかるようになったのは
愛していると言わなくても、お互いの気持ちがわかるようになったのは
(痛ぇなぁ)
小さな心の揺れさえ伝わりトゲとなって刺さる
それはたぶん彼女も同じだ
(俺にもわかんねえよ、愛が何かなんて
ただ、おまえのことしか考えられない、それで勘弁してくれ)




