20. Gone with the Wind
「別に優しいってわけじゃ」
ヒロは照れ臭そうに頭を掻いた
ヨシキのグループはここらではかなりタチの悪い半グレだが、この男はその中で一番若く、イキがってはいても人の良さが見え隠れするようなヤツだ
(このままじゃヨシキみてえに早死にしそうだな)
「ヨシキが死んでから髪染めてねえだろ、綺麗なプリンになってんぞ
ヨシキも取引に連れて行かなかったのは、おまえが引き返せるようにだろうさ
ヤクザもんにまで関わっちまうと、落ちるばっかりだしな」
ヒロは泣きそうな顔になって俯いた
(あんな野郎でも慕ってくれるヤツがいたのか)
「マリーンみたいな "いい女" 見つけろや
カタギも悪くないって思えるぞ」
「あんな女、そうそういませんって」
「当たり前だ、ばーか
でもな、そんな女を見つけたら愛想尽かされないようにしろよ、そうすりゃ長生きできるから
女ってのは錨なんだよ、ふらっふらしてる男を繋ぎ止める」
「惚気っすか?」
「そうだよ」
ジェイは悪びれもせず笑った
説教臭くなるよりはましだ
「あのチビ助のことは任せろ
俺から探りを入れとくよ」
その夜、店が終わった後
バルコニーで風に当たっていたマリーンのところに、ライムを差したビールを両手にジェイがやってきた
二人の仲直りの合図だ
「私たちあの子に振り回されてるわね」
マリーンは左の唇の端を少し上げて笑うとビールを受け取った
休戦成立だ
「あの子にね、家族にならないかって言ってみたの」
「なんて言ってた?」
「家族より恋人になりたいって、愛してるよーだって」
「イタイ奴だな」
「きゅんとしちゃうわね」
マリーンはライムを齧って口をすぼめた
「子供扱いされて怒ってたけど、あの子が大人だったら私は近付かない」
「アイツ、けっこうな美男になるぞ」
「だからよ
見た目の良すぎる男は信用できないわ、もれなく性格悪いに決まってるもの」
「よかった~、イケメンじゃなくて」
笑いながらジェイはビール瓶にライムを押し込んだ
「ママがね、小さい頃話してくれたの。悪魔はとても綺麗な姿してて美しい声で人を惑わすって」
サタンは堕天使、天界にいたときは『明けの明星』と呼ばれる光の天使ルシファであったと記されている
「そうして、いつの間にか心に入り込んで支配されてしまう
だから見た目が綺麗で口の上手い男には気を付けなさいって」
「可愛い小悪魔か、なるほど」
「ん?」
ビールを煽りながらマリーンは目線を向けた
「俺らいつの間にかあいつがキスしてくるのに慣れちまったし、子供だからってベッドに入ってきても許しちまってる」
「慣れるのも考えものね」
ジェイはマリーンをそっと引き寄せキスをした
「ジェイ…やだわ、いままでわざと下手なフリをしてたの?」
「キスが上手い男は嫌いなんだろ
でも、アイツより下手だと思われるのはムカつくからな」
「バカね」
「たいていの男はバカだ」
そう言って笑うとジェイはマリーンを抱き上げ寝室へと運んで行った




