17. 夏の稲妻⭐️
「きゃああああ!」
夜になってからこの海岸に雨雲が接近し、それは雷を伴っていた
雷鳴よりも大きな音量でマリーンの悲鳴が寝室に響き渡り、ウィンが心配そうに背中をさすっている
「大丈夫だよ、落ちたりしないから」
「そ、そうね
わかってるけど、子供の頃から苦手で、ダメなの」
マリーンは耳を押さえベッドの上で小鳥のように震えている
張り倒されそうなので言わないが各段に色っぽい
「マリーン、可愛い」
「ナマイキ言わないの、きゃあ!」
また雷鳴が聞こえ悲鳴が上がる
ウィンはそっと抱き寄せて慣れた仕草でキスをした
「こら、ドサクサに紛れて」
「少しは気が晴れるでしょ。ジェイはまだ帰らないの?」
「呑みに行ったけど、この雨じゃしばらく戻れないでしょ」
「へぇ」
そう言って笑みを浮かべるとウィンはマリーンの柔らかい胸に頭をうずめて耳を当てた
「ちょっと何を」
「こうすると心臓の音が聞こえて安心する
母さんも寝る前にこうしてくれたんだ」
「なるほど、それは年上の女を口説くときの十八番?」
「そう、テッパンだよ」
マリーンはあははと笑ってウィンのおでこを小突いた
「ほら、マリーンの鼓動が聞こえる、ドキドキしてる」
「吊り橋効果を狙ってる? 怖いときのドキドキを恋と勘違いするやつ」
「僕はほんとにマリーンが好きなのに」
「それも勘違い。手近なところにがんばればヤレそうなお姉さんがいる、そんなとこかな。ヤリ逃げはだめよ」
「違うってば!」
ウィンは急に身を翻してマリーンを押し倒し馬乗りになった
「ちゃんと恋人になりたい」
「恋人って、ジェイはどうするのよ」
「別に、そのままで」
「まさか逆ハーレム? 身がもたないわ」
マリーンが苦笑いするとウィンは彼女の両手を押さえつけた
「僕は本気だからっ」
「毛も生え揃ってない子供に言われても」
「な、なんでそんなこと知ってるの?」
ウィンが真っ赤になって股間を押さえたのでマリーンはケラケラと笑いだした
「シャワーの後、ジェイと裸で遊んでるからよ」
「うううう、マリーンのエッチ!」
「そろそろいいか?」
いつの間にか寝室の入口にタオルを被ったジェイが立っていた
「雷が鳴ったから怖がってんだろうと思ってさ
びしょ濡れで帰ってきたら、とんだ濡れ場だなぁおい」
「上手いこと言ったつもり? 悪趣味よ」
「ウィン、続けていいぞ」
咎めるような口ぶりにジェイがへそを曲げた、売り言葉に買い言葉だ
「バカなこと言わないで!」
マリーンは勢いよく跳ね起きて、ウィンはベッドの上でひっくり返った
「その小僧、気に入ってんだろ
寝てやれよ」
「マリーン、ジェイがいいって」
「いいわけないでしょっ、私は子供を相手にするシュミはないの!」
マリーンはウィンの頭を引っ叩きながら言った
「ちょっ、引っ張り込んどいてそれはないだろ、可哀想に」
「引っ張り込んでなんていないわ」
「やめてよ、僕のせいで喧嘩しないで」
「ちげーわ!」「違うわよ!」
雷鳴はすでに遠ざかっていた




