15. 家族になろう
ウィンはジェイの言いつけ通り、マリーンの横で男たちを威嚇し続けた
ときどき胸を触ろうとしてマリーンに手を引っ叩かれていたが、懲りない様子で隙を窺っている
(ジェイはこの子に何を吹き込んだのかしら)
おかげでビーチチェアでくつろいでいても気が気ではない
「ねえねえ、そこのキミ
いっしょにビーチバレーしない?
人数が合わないの」
急に声をかけられてウィンはきょろきょろして自分を指差した
高校生くらいの男女のグループが手招きしている
「せっかくのお誘いだもの、行ってらっしゃい」
マリーンに送り出されてウィンは走り出した
「やれやれ、これでゆっくりできるわ」
わざと聞こえるように言うと、ジェイはニヤっと笑ってビールを差し出した
ウィンはすぐに打ち解けて、持ち前の敏捷さでなかなか活躍している
歳の近い子たちと遊ぶところを見たことがなかったが、考えてみればこれが当たり前なはずだ
「ねぇ、ジェイ
やっぱり、ああいう普通の子たちと遊ぶのが自然だと思わない?」
「そうなんだけど、あいつの常識はかなりずれてるからなぁ」
「なんとかしてあげられないかしら
例えば日本の学校に通えるようにするとか
あの子って中学生か、もしかすると小学生くらいだと思うの
幸い日本語はできるんだし」
「本人次第だろ
アイツが望まないことをするのはどうかな」
ジェイは恐らくだが、深く事情を訊いたらウィンはいなくなるだろうと思っていた
「俺たちはアカの他人だ
お節介はほどほどにしといた方がいい」
「ベッドに入ってくるアカの他人ってなによ」
「そりゃちょっとアレだけど
自分から話してくれないとどうしようもないだろ
国籍すら知らないんだぞ」
「このまま一緒に暮らすなら、そこんとこはちゃんとしないと…」
「マリーン、アイツと家族になることを考えているのか?」
「ジェイはイヤ?」
「マリーンがそうしたいならいいと思うよ
ただアイツのこと何も知らないんだ、先走らない方がいい」
その言葉にマリーンは何度も頷いた
(そうだわ、私にそんな資格が…)
誰にだって言えない罪はある
それはきっとジェイにも、ウィンにも、マリーンにも
それらすべて受け入れられなければ、家族などと軽々しく言うべきではない
「そうね、簡単に言うことじゃないわね」
マリーンはジェイに微笑み、ビーチバレーをしている子たちを見やった
ウィンがきゃっきゃと笑う声がする
いままで聞いたことのない子供らしい笑い声がマリーンには悲しみを帯びて聞こえた
(どんな修羅場をくぐるとあんな仕上がりになっちゃうのかしら。何とかしてあげたいと思うのは、お節介なのかな)
夏が始まったばかりだった
太陽は焦げるほど降り注いでいた




