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コクリコの星は、八十八夜の宙に瞬いて

作者: 逢乃 雫

たとえば


青い麦畑を駆け抜ける



頬を流れる


風のメゾフォルテのように



鳥来月(とりくづき)


並木通りにささらめく



若葉風とともに   


舞いゆく燕を



見つめる瞳に


映るコクリコの花は



春の煌めきを


花びらに燈しながら



夕燕のシルエットが


とけゆく


青いひとときに



東の空を上りゆく


星は太陽の


ひとしずくのように




八十八夜の


空へ向かう星のように



青い波間の


大地の彼方から



北斗七星を


追いかけるように



空を駆け上がる


うしかい座の星々



ひときわ輝く


アークトゥルスの星は



まるで(そら)に咲く


コクリコの花のように




八十八夜の


宙を越えゆく星のように



春立つ日から


八十八の夜を数えて



青い麦畑が


黄金の時を待つように



青い空のしずくと


夕陽のしずくが



とけ合うように


煌めくイザールの星を



心の空に


想い浮かべながら




季節という


草原を駆け抜けながら


日々は風のように



晴天の日ばかりでは


ないけれど



冬の寒さの中で


小さな芽を出して



踏まれることで


より強く


根を張り育ちゆく


麦のように



そして


その根によって


穂に実りを結ぶように



心の大地に


夢をあたためながら



いつか


誰かの笑顔を


その穂に実らせるように




たとえば


黄金の麦畑を駆け抜ける



風の彼方の


麦星の輝きのように



八十八夜の


宙を越えゆく風は爽やかに



ひときわ輝く


アークトゥルスの星は



まるで宙に咲く


ひとひらの


コクリコの花のように



心の大地を


あたたかに、照らしながら

















うしかい座は、今の時期の東南の空高く上り、「春の大三角」の一つ、アークトゥルス(ギリシャ語で「熊の番人」)があります。この星はその色から「麦星」とも呼ばれます。


イザール(アラビア語で「腰紐」)は、オレンジと青の二重星で、「プルケリマ」(ラテン語で「最も美しいもの」)とも呼ばれます。鳥来月とりくづきは4月のことです。


立春から88日目の「八十八夜」は農作業などの転機とされ、今年は5月1日となります。麦は踏まれることで強く根を張り、初夏に収穫され、花言葉は「希望」です。オレンジや紅の花が咲くコクリコの花言葉は「思いやり」です。


季節の星や花をモチーフに詩を描かせていただきました。お読みいただき、ありがとうございます。


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― 新着の感想 ―
八十八夜は、立春から数えてなのですね。勉強になりました。立春からの景色の色の移り変わりが伝わりました。「麦星」とともに、大地のコクリコが揺れる情景が心に響きます。 ラストの >心の大地を >あたたかに…
八十八夜というと、夏も近づくという茶摘みの歌がよぎります。 心の大地に 夢をあたためながら というフレーズが印象に残りました。 花と星の紡ぐストーリー、今回の詩もとても素敵でした。 逢乃さまの最近…
風のメゾフォルテ、若葉風……星と花と風と空(宙)を素敵な風景と共に見せてくださってありがとうございます。 いつも壮大なスケールに飲み込まれそうになります。 読ませていただいてありがとうございます。
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