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68,よし、撤退準備!

 アジサシの野営地には、いつもちょっとした結界が張ってある。

 本当にちょっとしたものだが目くらましとしてはほどほどに役に立つもので、もし面倒な魔物と遭遇して逃げてきても、その範囲に入ればひとまず安心できる程度には役目をはたしている結界だ。


 とはいえ、物理的な防御力はほとんどない。主な効果は目くらましなので。

 なので例えば超大型の魔物がそこを通過したら普通に壊滅する。そういう結界なのだ。

 故に、狩りに出ていた四人が全力で走って戻ってきた、となると即時撤退の可能性を考慮しなくてはいけない。


「ベリアレスだ」

「おやまぁ、それはなんとも。マズベッタは?」

「少なくとも見えはしなかったが、近くには居るかもな」

「なるほどね。よし、撤退準備!モーショボーのギルドに報告に行くよ!」


 チグサの合図で皆が一斉に広げていた道具をしまい始める。

 狩りに出ていた四人も少し休んだら動き出し、ベリアレスと出くわす前に討伐していたウイキコの最低限の処理をしてから折り畳みの道具などを畳み始めた。


 そうして慌ただしく出発準備を終えると、ベリアレスと出くわしたのとは逆の方に進んで山を越え、平地に降りたら馬たちに足環をつけた。

 ここからは人も通る場所を進んでいくので、元の毛色のままだとまずいのだ。


「まぁ、第一大陸だしねぇ。ベリアレスも居るよねぇ」

「だとしても急に出てくるとビビるぜ」


 軽やかに走る馬車の見張り台で、チグサとエリオットは周囲を見張りながらそんな会話をした。

 ちなみにチグサの外套は新しい物になっている。一体どうなってしまうのかと心配していた細かい刺繍は、布とほとんど同じ色で裏地に刺繍がされていたので、近くで見なけれはほとんど分からない状態になっている。


 そうなると見えないのに一面に刺繍をしたのか、と思う気持ちが湧いてくるわけだけれど、単に刺繍がしたかっただけだろうから特に何も言わないで置いた。

 ともかく、正直普段使いにするにはもったいないとは思いつつ、前まで着ていた外套は回収されてしまったので新しい外套を着ているのだ。


 古い方はばらされて外套ではなく布になっていた。きっとまた別の何かになるのだろう。

 チグサの選ぶ外套は大体丈夫な布を使っているから、外套の役目を終えた後は別のものに加工されがちだ。汚れの強い部分を切り離すなり刺繍で隠すなりして、ポーチや服に仕立て直されている。


「……ん?誰かいるな」

「どこだい?……おや、本当だ。あれは……カタリナ!進路変更!」


 声を張ると、エリオットが見つけた人影を既に発見していたのか馬車の向かう先が微調整された。

 見張り台には望遠鏡が据え置かれており、小さく見えた人影が誰なのかも確認が出来ている。

 まぁつまりは、知り合いだから声をかけよう、という話だ。


「やぁ!久しぶりだね!」

「お、アジサシだ」

「やほー。なんか急いでんね」

「どこに行くところだい!?」

「お?なんか非常事態?」

「とりあえず乗せてくれー」


 見張り台から声をかけて、急ぎの用はないらしいので馬車に乗り込んでもらって再び馬車を走らせた。

 この二人はアジサシとなぜかよく行き合う冒険者だ。村や国ではなく、今日のように何も無い平原で出会うことが多い。


 元々はアジサシが面倒だからと逃げの一手を取った魔物を討伐してくれたり、出会った時にはアジサシから何かを買っていったりする普通の商人と客の仲だった。

 しかし何せ付き合いが程々に長いので、アジサシ馬車に乗って移動することもあったのだ。


「で、どしたん?」

「ちょっとベリアレスに出くわしてね。モーショボーのギルドに報告に行くところなんだ」

「わぉ。この時期のベリアレスこわぁい」

「マズベッタは?」

「確認は出来てない」


 突発遭遇だろうと問題なく倒せるだろうに、おどけたように口に両手を当てた冒険者に笑う。

 そもそもそんな反応が取れる時点でさほど怖がっていないのが丸分かりである。

 もし出くわしたらよろしくね、なんて軽口を叩いたらなんの迷いもなく任せろと返ってきたので、本当におどけただけなのだろう。


「ところで今買い物ってしていい?」

「今かい?何が欲しいの?」

「ハイポーションとヘアオイルと靴紐と包帯」

「そこそこあるね。ギーネ、聞いてたかい?」

「はい」


 移動中暇だから、と普通に買い物を始めた冒険者に笑う。肝が据わっているというか、本当にベリアレスごとき、という認識なのが滲んでいるというか……

 チグサだけでなくギーネも笑っているので、アジサシは全体的にこの二人が来る時を楽しんでいる感じがある。唯一コリンだけは楽しんでいるというか、目をキラキラさせて懐きに行っているけれど。


「お、剣変わった」

「はい!新しくなったので狩りに出てたらベリアレスに出くわしました!」

「君は本当に引きが強いなぁ」


 二人とも近接戦闘が出来る強い冒険者なので、コリンが懐くのも納得ではある。

 さっそく何やら剣や戦い方の話で盛り上がっているので、それを聞きつつチグサはギーネと共に商品を揃えて商売の方を進めた。


 そうして道中は特に問題もなく、二人の手を借りなくてはいけないものにも出くわさずにモーショボーに入ることが出来た。

 二人はギルドまでついてくるそうなので、ベリアレスの討伐依頼が出たら受けるつもりなのだろう。

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