表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/80

67,保存食向きなのを探そうか

 第一大陸の山で野営を始めて早数日。セダム、エリオット、コリンの三人は連日狩りに出かけては大小さまざまな獲物を持ち帰ってきていた。

 野営地ではそれらの加工も行っており、道具を引っ張り出してきて皮を鞣したりもしている。


 狩りにはその時暇な団員も同行することがあり、今日はアンドレイを加えて四人で山を下っていた。

 アンドレイは直接戦闘はしないが魔法陣を描けるので、あらかじめ用意していた魔法陣を設置して罠を張るのが主な役目だ。


 今回ついてきた理由も新しく描いた魔法陣の確認の為なので、ついでにコリンに所定の場所まで獲物を追い込む練習をさせよう、という話しになっている。

 まずは山を下って適当に進み、手頃な獲物を探す。


「あ、何か居ますよ!」

「あれは……ウイキコか?何頭いる?」

「……八、いや九か。薄茶が二」

「なら一頭だけ引き離して狩るか。コリン、来い」

「はーい!」


 視線の先には群れを成している中型の魔獣がいる。その群れの中の一頭だけを狙うので、エリオットとコリンはどれを狙うのかの相談を始めている。

 アンドレイはその間に魔法陣を設置しに行ったようだ。


「決まったか?」

「おう、群れの外側に一頭外れてるのが居るからそいつを狙う」


 今回、セダムの出番は狩りが終わった後の解体作業くらいだろう。

 そんなわけで静観の姿勢を決め込んで、魔法陣の設置が終わったので隣に戻ってきたアンドレイと並んでコリンを見守る。


 エリオットの合図を受けて駆けだしたコリンは勢いよくウイキコの群れに突っ込んでいった。

 そのままだとただ逃げられて終わるが、エリオットの放った矢が逃げるウイキコの目の前に落ちたことで逃げる向きが変わる。

 その間に後ろに回り込み、剣を抜いて魔方陣の方へ追い立てていく。


「いいんじゃねぇか?」

「元々追い立てるのは得意だっただろう」


 アンドレイの敷いた魔方陣はそれほど大きくない。そこをしっかり踏ませるのは難しいのだが、コリンは中々器用にウイキコを追い立てていた。

 しかしウイキコは魔法陣の横をすり抜け、そのまま走り続ける。


 わー!と元気に騒いでいるコリンに笑っていると、エリオットが矢を打って再度ウイキコを反転させた。

 そうして何度か魔法陣の近くを往復したところで、ようやくウイキコが魔法陣を踏み抜き、討伐完了ということになった。


「思ったより上手くいかない!」

「ま、上々だろ」

「そうだな。逃げられた後の軌道修正も出来てたし、昼前に終わったしな。おしコリン、体力余ってんなら解体手伝え」

「はーい!」


 あれだけ走り回ったのにまだ元気なコリンがセダムに指示されてウイキコの解体を手伝っている間にアンドレイは魔法陣を回収し、裏にメモを書き込んだ。

 それが終わった後は解体を手伝い、持ち帰るための保存袋に入れたら場所を変えて昼食を食べる。


 連日狩りに出ているので、サシャが食べやすいようにとサンドイッチを作って持たせてくれたのだ。

 紙に包まれているので手を汚さずに食べられる。中に挟まれている肉は一昨日狩ってきたものだろう。一部を漬け込んでいたのは知っていたが、こうなったのか。


「おいひぃれふね!」

「飲み込んでから喋りなさい」

「ウイキコって美味しいですか!?」

「美味いぞ。柔らかいし油も乗ってる。多少癖はあるが、サシャなら美味く料理してくれるだろ」


 サシャはたとえ毒がある食材だろうと調理過程で無毒化して美味しく仕上げてくれるのだ、毒もない柔らかい肉は同にだってできるだろう。

 今日の夕飯は何になるかね、なんて昼食を食べながら話して、そろそろ肉は保存用に回されそうだな、という結論に至った。


 何せ連日狩りをしているので、取ってきた肉も消費しきっていないのだ。

 アジサシは旅商人にしては大所帯だしコリンやセダムはあればあるだけ食べるが、それでも満足してなお余る量がある。食料確保ではなくコリンの実戦経験を求めた結果である。


「おし、まだ時間もあるし、次探すか」

「どうせなら保存食向きなのを探そうか」

「どれですか?サナタム?」

「いればいいけどなぁ」


 話しながら立ち上がり、適当に歩き出す。

 特別狙わなければいけない魔獣もいないし、今日は既に戦果を得ているので気楽な歩みだ。

 まぁ、何も取らずに帰ったとて何か言われるようなことはないだろうが。何も居なかったかい?と聞かれて終わるだろう。


 なんて、取り留めもない話をしながら歩いていた四人に強い魔力が向けられる。

 武器を取って構えるのは誰が一番早かったか。少なくとも、目に見えて遅れた奴は居なかった。

 威嚇、もしくは索敵の意味が込められた魔力の方へ意識を向ける。


 そうしてじりじりと肌を焼くような魔力を浴びる時間を幾ばくか過ごして、その魔力の主を視界に収めた。

 瞬間、セダムが大きく声をあげる。


「ベリアレス!撤退!!」


 その声が聞こえた瞬間に、エリオットとアンドレイは持ち歩いている道具の一つを地面に投げた。

 地面に当たったそれが発動して勢いよく煙を吹き出し始めたので、全力で走って撤退する。

 あれはアンドレイとレウコスが一緒に作った、魔力もかく乱してくれる優れものの煙幕だ。


 魔力をかく乱して視界から外れれば大抵のものからは逃げ切れる。

 というわけで、その後も後方を気にしつつ野営拠点まで戻ることになったのだった。

 倒せない、もしくは危険があると判断したら即時撤退がアジサシの基本戦略である。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ