表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/80

66,好きな方行っていいぞ

 第一大陸のとある山の中腹あたりに野営の準備をした後は、予定通り各自好きに過ごすことにした。

 サシャは料理の支度を始め、カタリナは馬たちを連れて小川へ向かい、レウコスは移動中と変わらずずっと刺繍を続けている。


 アンドレイとチグサは揃って何やら道具を引っ張り出しており、ギーネもそれを手伝っているようだ。

 残る三人、エリオット、コリン、セダムはこれから山を少し下って狩りをする予定でいる。

 一番の目的はコリンが新調した剣の扱いに慣れることだが、エリオットとセダムもたまには動かなければやり方を忘れる、と戦闘するつもりだ。


 荷物の確認を終えたらチグサに一言声をかけて、日暮れまでには戻ると予定を伝えて山を下る。

 この山は人が登ることなんてほとんどない山なので、道も整備されておらず非常に歩きにくい。

 顔にかかりそうな枝を剣で落として歩いている分多少はマシだろうが、一人背の高いエリオットは時折頭が引っかかるのか追加で枝を落としていた。


「……ふぅ。さてどっちに行くかね」

「あんまり離れると面倒だしなぁ。よし、コリン好きな方行っていいぞ」

「はーい!じゃあ、あっち!」


 元気よく右を指さしたコリンを先頭にして、三人で話しながら進んでいく。そうして少し歩くと、群れを成している小さな魔獣が走ってくるのが見えた。

 それを見て誰が言うでもなく足が止まり、各々武器を構える。


「逃げてんのはキュボドだな。……お、来たぞ」

「でっかい!」

「ありゃあ……ヴァラメか。コリン、爪に当たんな、毒がある」

「はい!」


 足元を逃げていく小さな魔獣、キュボドは無視して、それを追ってやってくる大型の魔物に狙いを定める。ヴァラメというそれは、多少面倒な毒は持っているが逃げなければいけないほどの強さではない。

 気を付けるのは鋭く毒のある爪と、非常に硬い尻尾。基本は地を走るが、少しなら滑空もするらしい。


 素材として欲しいのは爪と牙、あとは外皮くらいだろうか。なんて既に解体の事を考え始めているセダムを置いて、エリオットとコリンは駆けだした。

 ヴァラメもこちらを認識して大きく吠えている。そのまま頭突きの姿勢を取ったヴァラメに、エリオットは剣を構えた。


 盾があったら盾を使うらしいが、何せ日頃馬車の中から飛び出して戦闘に向かっているものだから、盾はかさばると使わないのが日常になっており、攻撃も防御も剣でやってしまうのだ。

 とはいえ、エリオットの剣は特別固く作ってある。コリンの剣よりも重く、ヴァラメに頭突きをされようが噛み付かれようが砕けることはない。


 ガキン、と重そうな音が響いて、ヴァラメの頭突きをエリオットが止める。

 その隙にコリンが横を駆け抜けて、無防備な横腹に攻撃を仕掛けた。振るわれた剣は外皮に多少の傷はつけたが、それほど深くは剣が入らないようだ。


「コリン!外皮はオレが切ってやるからそこ狙え!」

「はーい!」


 ヴァラメが身体を捩って、その動きで先端が非常に硬い尻尾が勢いよく振るわれる。

 それから逃げつつ、セダムもヴァラメの側面を陣取った。

 セダムはアジサシの戦闘要員としても数えられる男だが、名乗るとしたら「解体屋」だ。なので、これを素材として解体することを考えて下手なところに傷はつけたくない。


 と、いうわけで。エリオットの圧でそちらから視線を外せないヴァラメの身体を軽く駆けあがって、首を狙って斧を振り下ろした。

 ヴァラメの外皮、特に背中の皮は防具としても使われることが多く、傷のないものだと価値が跳ね上がる。


 見たところこの個体はそれほど大きな傷は無いようなので、背中はこの状態で確保したい。

 となるとやるべきは急所一点狙いである。なにせヴァラメの皮は固いので、普通に倒そうとすると皮に傷が大量についてしまう。それでも売れるが、出来る事なら綺麗な状態で確保したいだろう。


「コリン!来い!」

「はー……うわぁ!危ない!」


 よく研いだ斧の切れ味は鋭く、ヴァラメの首には一線の傷が出来ている。

 そこをコリンに狙わせようとしたところ、流石にそんな傷をつけられてはエリオットに構っていられなうなったらしいヴァラメが暴れて身体の側面に居たコリンを押しつぶそうとした。


 器用に逃げたコリンの傍に、振り落とされたセダムも合流する。

 ヴァラメは逃げる様子はなく、怒りに任せて再度突撃してきそうな様子だ。


「首と、あとはどこだ?」

「次は尻尾の付け根だな。上に乗れれば振り落とされる以外は攻撃されないから、コリンは上狙え」

「分かりました!」

「正面はおれが受ける。……来るぞ」


 二度目の突撃は頭突きではなく噛み付きだった。それも正面から受け止めて防いだエリオットの横を二人はすり抜けて、コリンは背に登ることを狙い、セダムは尻尾の付け根を狙いに行った。

 危険なのはセダムの方だ。一撃でも当たれば致命傷になりえる尻尾の攻撃を避けて、付け根に斧を振り下ろす。


 狙い過ぎれば尻尾の危険があるが、尻尾にだけ集中していれば有効な攻撃は出来ない。

 面倒なところだが、慣れたものだ。なにせコリンが入るまで、入った後も前線に出していいほど育つまで。それまでの期間、アジサシの戦闘を最前線で支えたのはエリオットとセダムなので。


 エリオットが正面を受けてくれるなら後ろに回る、というのがセダムの常だったので、尻尾を避けるのは慣れたものだ。

 あらゆる種類の尻尾攻撃を避け続けたセダムからすれば、ヴァラメの尻尾攻撃は避けやすい類だ。


 そうして危なげなく攻撃を重ねていると、それほど時間もかからずヴァラメは地に伏した。

 しっかりとどめを刺した後に解体を始め、終わってもまだ日が落ちるまでは時間があった。が、解体したこれをもって次に行くのはなぁと全員が思ったので、一日目はヴァラメ討伐で満足して終わることにするのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ