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64,予定を決めよう

 スコルを出た後、アジサシの馬車は第四大陸の村を巡りながら第五大陸へと続く関所へ向かい、そのまま通過して第五大陸に入っていた。

 第五大陸でも特に予定は決まっていないが、ひとまず村を回ることにする。


 何をしようかな、なんてぼんやり考えながら馬車の屋根に寝転がっていれば、いつものようにアンドレイがやってきて呆れたようにため息を吐いた。

 それを聞いて身体を起こし、窓枠に腰かけているアンドレイの方を見る。


「何か用事は思いつくかい?」

「特には。奥地にでも行くかい?」

「行ってする事もないからねぇ……何か居ればいいけれど、今の時期だと確実なのは特に居ないし」


 少し前にもしたような気がする会話を繰り返しつつ、何か用事はあっただろうかと考える。

 ……まぁ、用事がなくても奥地に行って少しのんびりしてもいいのだけれど。最近は真面目に旅商人をしていたし、そろそろ休憩する頃だろうか。


「となると、食料を買い込んだ方がいいね。結局魚は大分減ったみたいだし」

「奥地で確定かい?」

「どうしようか。寒がりたちが嫌がるようなら第一大陸に行こうかな」


 ガタンと馬車が揺れて、チグサは静かによろめいた。石にでも乗り上げたんだろうか。このくらいの衝撃は別に珍しいことでもないので、よろめきはしても落ちたりはしない。

 が、見ている側からすると不安が残るようで、アンドレイは窓枠を越えてきていた。


「……とりあえずみんなの意見も聞いてこようか」

「そうだな」


 アンドレイにしっかり二の腕を掴まれたので、二度寝は諦めて馬車の中に入る。そのまま見張り台へのはしごを上がって、見張り台にいたコリンとエリオットの間に入り込んだ。

 別に寒いわけでもないのだけれど、この二人の間に隙間があると暖かそうだなと思って思わず入り込んでしまうのだ。チグサが少女時代からほとんど成長していない身体だから出来る事である。


「団長だ!どうしたんですか?」

「第五大陸を巡った後の予定を決めようと思ってね。奥地に行くか、第一大陸に行くか。どっちがいい?」

「どっちでも!任せます!」

「だよねぇ。エリオットは?」

「あー……休むってんなら奥地の方がいいが……コリンの剣新調してから大して戦ってねぇしな。第一大陸で素材集めでもするか?」

「なるほど、それもありだね」


 遠くにうっすらと見える海を眺めながらそんな会話をして、二人の間から抜け出してはしごを降りる。

 二階にはアンドレイしかいなかったので、更にはしごを降りて一階にやってきた。

 まずははしごの傍にいたサシャとギーネに声をかける。


「第五大陸を巡った後の予定を決めるよ。奥地に行くか、第一大陸に行くか。どっちがいい?」

「僕はどちらでも。……あぁ、でも行くならその前に食料買い込んでくださいね」

「あたしは奥地の方がいいな。第一大陸、食材の痛みが早いんだよねぇ」


 二人の意見を聞いて、ふんふん頷いて馬車の中を進む。

 馬車の前方、御者台の傍にはセダムとレウコスが並んで座っていた。何やら二人揃って手仕事に勤しんでいるようである。レウコスはともかく、セダムがやっているのは珍しい。


「団長、オレ第一大陸がいい」

「私もー」

「話が早いねぇ。セダムは?」

「どこでも。第一大陸になりそうか?」

「まぁそうだね、そっちの方が多いし。……ところで、それは何をしてるんだい?」

「椀を掘ってる」

「ざっくり掘ってもらったのを細かく調整してる」

「なるほどね……」


 二人揃って何をしているのかと思ったら、木からお椀を掘り出していたらしい。これもまたレウコスがよくやる細工の一つで、お椀だけでなくスプーンなども作っていることがある。

 木をお椀の形に彫り出すところまではセダムがやって、表面を磨いたり模様を入れたりする作業をレウコスがやっているようだ。


 セダムは細かい作業はそこまで好きではないが、解体を主に担当しているだけあって狙った位置に切れ込みを入れたり掘り返したりという作業は苦手ではない。

 今は暇で、ついでにレウコスに声をかけられたから手伝っているのだろう。

 二人は仲がいいので、お互いの作業を手伝っているのもそう珍しい光景ではない。


「そんなわけで、第一大陸に行こうかな。いいかい?サシャ」

「いいよ。第一大陸に行きたくないわけじゃないから」


 笑って返事をくれたサシャは、第一大陸に行くという前提で食料を少し整理するらしい。

 在庫の把握はギーネがしているはずなので、チグサは上に戻って予定の決定を伝えることにした。

 そろそろ村に着く頃だろうしその後でもよかったのだが、チグサがやる事は特になくて暇なので。


「第一大陸にいる間、コリンは戦い通しかねぇ」

「そうなんじゃないかい?すごいやる気だよ」

「ポーション足りるかな……第一大陸の後はリコリスになりそうだね」


 行先決定を伝えた見張り台からは元気な声が聞こえてきているので、第一大陸に入ったらあの勢いで動きまわり続けることだろう。

 コリンももう一人前なので不注意で怪我をしたりはしないだろうけれど、それでも新しい剣に慣れるまでと言っていつまでも戦っているのが想像できる。


 ポーションの在庫は十分あったはずだけれど、第一大陸を出ることにはどのくらい減っている事か。

 また仕入れに行かないといけないかな、なんて思いつつ、チグサはアンドレイの横をすり抜けて屋根の上に出ようとして……首根っこを掴まれ、馬車の中に引き戻された。

 もう村に着くから出るのは禁止らしい。なんとも細かい副団長である。

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