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45,進展はありました?

 チグサが盛大に機嫌を損ねて酒場でくだを巻いていた日から二日ほどが経った頃。

 迷子の増加について調べていたガルゴレ殿から調べがついたと連絡があり、アジサシの面々はとある店を訪れていた。


 屋敷に訪れては目立ってしまうということで、貴族も利用する個室完備のレストランで待ち合わせることになったのだ。

 そのため、今日はアジサシは休業日である。

 全員で行っていいかと聞いたら是非とも、と色よい返事をもらったので、全員連れてきた。問答無用だ。


「やあ、ガルゴレ殿」

「お越しいただきありがとうございます、チグサ殿。皆さんも、どうぞお寛ぎください」


 店に入ってすぐに名前を告げたら案内された部屋の中には、既にガルゴレ殿が来ていて優雅に腰掛けていた。

 チグサがガルゴレ殿の正面に腰を下ろすと、アジサシの面々は好きな場所に腰を下ろし始める。


 ガルゴレ殿が指定した店だけあって、食事をするためのテーブルの他にもソファやローテーブルも置かれているのだ。

 さっそくカタリナとサシャがソファの方へ行ったのを視界の端で捉えつつ、チグサはガルゴレ殿に向き直った。


「それで、何か進展はありました?」

「えぇ。こちらを」


 さっそく本題に振れると、すぐに何かが差し出された。

 机の上に置かれた箱が開けられて、中に納まっていた物が見える。

 そこに納まっていたのは……


「……香水と、お菓子?」

「はい。香水は最近人気が出て、トルを経由して多く販売されるようになった品です。菓子の方は、キニチ・アハウでは昔から食べられているものです」

「手に取っても?」

「どうぞ」


 許可を取って、香水瓶を持ち上げる。

 集中してじっと見つめると、詳しく情報が浮かび上がってきた。……特別、変な効果は乗っていない。なんの変哲もない香水だ。


 香水瓶を戻して、今度は菓子を手に取る。

 こちらもじっと見つめるが、やはり何も不審な物は入っていないようだ。

 二つとも元の位置に戻してガルゴレ殿に目線を戻すと、ガルゴレ殿は小さくため息を吐いた。どうやら、大分苦労したらしい。


「チグサ殿ならお分かりになると思いますが、どちらも特別なものではありません」

「そうですね、何も不審物は入っていない」

「はい。ですがこれら二つが合わさり、さらに魔力が当てられると……」


 言いつつ、ガルゴレ殿は用意してあったらしい袋の中に香水を一拭きし、そこに菓子を入れた。

 袋の口を閉じて軽く魔力を当てると、チグサの目に見える情報が変化する。

 思わず目を見開くと、袋を差し出される。口が開かないように注意しつつ受け取って、注視する。


「……軽い意識障害……?」

「詳しく調べた結果、意識がぼんやりとするが運動能力に問題はなく、無意識に動き回ってしまう効果がある、ということが分かりました」

「……なるほど、そういうことかぁ……」

「んえ?どういうことですか?」


 納得の声を上げるチグサとアンドレイの後ろで、コリンが首を傾げた。

 どうやら気になっていたようで、一人座らず二人の後ろからやり取りを見ていたらしい。

 ガルゴレ殿はこの程度で怒る相手でもないので別に構わないが、話を聞くなら座りなさい、と椅子へ誘導しておいた。


「つまり、流行り始めた香水の材料と、昔からあった菓子の材料が合わさって予期せぬ効果が発揮されたんだろうさ。どちらも単体なら問題はないし、さらに魔力が加わらなければ効果は発揮しないから、今まで問題にならなかったのだろう」

「迷子が多かったのは、無意識に動き回った結果元の場所に戻れなくて困るのは子供が多かったからだろうね。大人にも効果は発揮されていたけれど、大人たちは多少位置が変われども自力で戻れるから、問題が表面に出てこない」

「ついでに、キニチ・アハウでのみ効果が出たのは魔力の点だな。この国の中は他に比べても圧倒的に魔力で満ちてる。他では問題のない組み合わせでも、ここだと魔力が加わってしまう」


 チグサとアンドレイがそんな風に説明をすると、コリンはほわー、と分かっているのか分かっていないのか分からない返事をした。おそらく、分かっているんだと思うが。

 つまりこれは、何の悪意があったわけでもないただの事故、という事だ。


「お二人のおっしゃる通りです。現在、より具体的に材料のうちどれが原因となっているのかを調べているところでして、その調査が終わるまでは香水の輸入を止めるしかない、という話で纏まりました」

「まぁ、そうなるでしょうね。悪用する奴が現れないとも限らない」

「はい。大きな事件、事故が起こる前に気付けて良かった。情報提供に感謝を」

「ボクらは不思議に思った事を伝えただけさ。そんな大層な事はしていないよ」


 アジサシでは調べきれなかったことを調べて貰ったのだ。話をするだけして丸投げした身としては、感謝されるのもむず痒い。

 と、そんなわけで本題は早速終わってしまったのだけれど、ガルゴレ殿のご厚意でそのまま食事をいただくことになった。


 無邪気に喜ぶコリンに微笑まし気な目を向けるガルゴレ殿を見て、やはりコリンは年上に可愛がられる才があるな……なんて考えたりもしながら食事をいただき、しばらく雑談に興じたのちに店を出た。

 そして、これでやらなければいけないことは全て終わったので、そこそこ長期になったイツァムナー滞在も終わりとなり、次の目的地へと向かうことになったのだった。

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