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28,どこへ行こうか

 トクティラの夢宮を後にしてアジサシの馬車に戻ってきたところで、チグサはアンドレイに捕まって詳しい説明を要求されていた。

 ついでにお説教も入ったが、まぁ、思ったよりは怒られなかったので、チグサに原因は無い、と判断はされたらしい。一安心だ。


「ふぅ、やれやれだ」

「こっちの台詞だ。ほら、働け」

「扱いが雑だなぁ。数日ぶりの起床なんだから、もうちょっとゆっくり段階を経てからにしておくれよ……」


 文句を言っても仕方がないと分かってはいるので、アンドレイに背を押されるままにアジサシ馬車のカウンターの位置に移動して腰を下ろす。

 これからの時間は、珍しくアジサシが店も開かずにどこかへ向かっていった、とちょっとした噂になっているこの国の中でその噂をさっさと過去の物にする時間なのだ。


 大通りの中でも開けている一角に馬車を止めて、馬車を開店状態にする。

 チグサの隣にはギーネもいるが、いざ店を開けたら商品を取り出しに行く係になってしまうと思うので、隣に座っていてくれるのは今だけだろう。


「お、開けるのか?」

「開けるよー。いらっしゃい、何をお探しだい?」

「ギーバの角はあるか?三個ほど欲しいんだが」

「あるよー」


 店を開けた直後からひっきりなしにやってくるお客と話したり会計をしたり、久々にしっかり店番をしていたら、当然のように客からは国に入った直後の動きについて尋ねられる。

 一度も馬車を止めることもなく国の奥まで進んでいったのだから、非常事態なのは分かりやすかったことだろう。


「あれね、ボクがちょっとやらかしてね」

「団長が?」

「うん。もう解決したんだけど、さっきまでそれで怒られてたんだよ。だから今店番やってるんだ」


 内容は言わないが、まぁ嘘ではない。アジサシをよく知る人ならば納得するだろう言い方をして、チグサは話を終わりにした。

 これ以上は何も言うことがないのだから、話はこれで終わりなのだ。


 そうして一日店番をしていたら、夕方には「なんかやらかして怒られたんだって?」と声をかけてくる人もちらほら現れた。

 噂が広まるのが早い。今回に関しては有難いが、普段はそれが面倒に繋がることが多いので、何とも言えない気分だ。


「あー……普通に疲れた……」

「お疲れ団長。体力落ちた?」

「そもそもそこまで体力ないよ……アンドレイは?」

「買い付け行ったよ」


 日が暮れてきた頃に店を閉めて、いつも泊まってる宿に馬車を移動させていく。

 売り上げと在庫の確認をしていたらアンドレイがいないことに気が付いたのだが、まぁ別行動だとしてもアジサシ馬車の場所は簡単に把握出来るので、合流は出来る。


 ついでにサシャもいなかったので、食料の買い出しも兼ねているのだろう。

 それなら尚の事何も言うことはない。知らない間にどこかへ行っているのも、今回が初めてではないのだ。というか、チグサが忙しいときは大体アンドレイは何も言わずにどっかにいくので。


「そろそろ戻ってくると思うけど……移動の方が先かな」

「まぁそうだろうね。向こうも分かってるでしょ」


 ギーネと話している間に馬車は移動を終えたようで、いつもの宿前で止まった。

 馬車から降りるとすぐに宿の従業員が出迎えに出てきたので部屋を取り、さっさと風呂に入ってソファに深く腰掛けた。

 座りながら適当に髪を拭いていたら、後ろから軽く頭を叩かれる。


「おかえり」

「ただいま。ちゃんと髪拭け」

「今拭いてる」


 振り返ると案の定アンドレイが立っていたので、向かい側に座るように促す。

 一応部屋は男女で分けて取っているのだが、普段はまとめて雑魚寝なアジサシなので、それぞれの部屋を好きに往復しているのだ。


「なに仕入れてきたんだい?」

「リスト作って渡す。売り上げは?」

「上々過ぎてとても疲れた。ボクはもう体力が限界」

「肉体若いんだから体力つけなよ」

「つかないんだよ。知ってるだろう」


 だらだら言い合いながら髪の水気を取って、もういいかと首にタオルをかけたまま手を止める。

 アンドレイからは何か言いたげな目をされたけれど、特に何も言われはしなかった。

 ほっとけば乾くのだからよかろう、とチグサは思っている。結局まとめてしまうから、多少荒れても気にしないという悪癖だ。


「で、次の行先は?団長が寝てからここまでは直行だった」

「そうだねぇ……今から第四大陸に戻るのも手間だし、他に行きたいところでも考えようか」


 おそらくこちらが本題なので、ソファの上で座りなおして考える。

 何か珍しい物の出現予想はあっただろうか、と記憶を掘り起こしていたら、後ろから肩にかけたタオルを抜き取られた。

 そのまま髪を弄られているので、多分後ろにいるのはサシャだろう。


「どこか行きたいところあるかい?」

「あたしは特にどこも。コリンあたりに聞いてみたら?」


 雑に拭くだけで放置していた髪は、しっかり梳かされてヘアオイルまでつけられている。

 なんとなくそれを把握しながら、コリンは今どこにいるんだか、と思考を回した。

 コリンは宿に泊まりはするが、エリオットが馬車に残るからと寝る直前まで馬車にいることも多いのだ。


 後で探してみようか、と考えていたら、今度は髪が引っ張られ始めた。

 ……乾いたから結び始めたんだろうか。これは長くなりそうだ。

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