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22,毎度どうも

 スキュシ鉱石の採掘を終え、翌日の日中にアジサシは次の場所へと移動した。

 向かう先は、霊氷山からそれほど離れていない大きな谷の中だ。

 そこにあるズスの隠れ里へ寄ってからリコリスに向かう予定になっている。


 この隠れ里も、他と同じように亜人たちが暮らしている村である。ここには特に、寒さに強かったり暑さに弱かったりする者たちが多い。

 まぁ、そうでなければ過ごせない土地なので、そういった人たちが集まるのも当然と言えば当然なのだけれど。


「なんだ、また来たのか?」

「またというけれどね、前に来てから結構時間は経っているんだよ」


 谷の中、壁に出来た横穴に入って行くとあるのがこの隠れ里だ。出入り口は他にもあるのだけれど、アジサシの馬車が入れるのはこの横穴くらいである。

 出迎えてくれた顔見知りに返事をしつつ馬車を一度止めて、ここからは周りにぶつけないようにゆっくりと進んで行く。


 馬車が大きすぎて村の中までは入れないので、出来るだけ近付いたら必要そうなものを持って村に歩いて行くことになるのだ。

 持って行く荷物は既に仕分けが終わっていて、ギーネあたりは既に荷物を背負っている事だろう。


「レウコスとカタリナは行かないだろうけど、他はどうする?あ、ギーネは強制」

「強制なんだ。行きますけどね、言われなくても」

「俺は強制じゃないのか」

「え、行かないつもりなのかい?」

「行くよ、普通に」


 馬車後方の出入り口から中に声を掛けたら、アンドレイが紛らわしい事を言った。

 睨んだら笑いながら手を振って奥の方へ行ってしまったので、視線を見える範囲に居る他の団員に向けた。コリンは多分来るだろうけれど、他はどうするのか。


「おれは残る。コリンは行くならアンドレイについて行け」

「分かりました!」

「あたしは行こうかな、調味料欲しいし」

「俺も行く、残ってもすることねぇし」


 エリオットが残るのなら馬車の心配も要らないので(そもそも心配もしていないが)心置きなく取引に行けそうだ。

 サシャの目的はこの隠れ里で栽培されている調味料の類だそうなので、セダムは荷物持ちがてらそちらについて行ってもらう。


 チグサとギーネ、アンドレイとコリンは、ひとまずは一緒にこの村の住民たちが欲しがりそうなものを売って回る。

 途中で別行動になるかもしれないが、なったらなったで問題ないのでそのあたりは場合で決めればいいだろう。


「じゃあ行ってくるよ」

「はいはい、妙なもん買ってくんなよ」

「時と場合によるね」

「頼むぞアンドレイ、お嬢を止められるのはお前だけだ」


 なにやらエリオットが失礼なことを言っている気もするけれど、まぁいいかと無視して馬車を降りた。

 アンドレイは確かにチグサのストッパーではあるが、いざという時に意見が食い違うことは無い。つまり、チグサがどうしても欲しいと思ったものは、何であれアンドレイに止められることはないのだ。


 止められるものは諦めがつくものだけだ。ならば別に、制限をかけられようが構わない。

 かなり自由にやってはいるが、馬車に乗る物に制限があることくらいは分かっている。その程度も分からない小娘がやってる店だったら、アジサシはここまで大きくなってはいないのである。


「星の輝きを見たぞ、今回は何を持ってきたんだ?」

「流星鱗があるよ。スキュシ鉱石とオーロラ鉱石は……要るかい?」

「石はあるからな、星は貰おう」

「はぁい、毎度どうも」


 何故知っているのか、とかは聞いても無駄なので聞かない。種族が違えば分かることも違うのだ。

 チグサはそう納得して久しいが、コリンはまだまだ不思議に思う事があるのか時々なんで分かるのかと聞きに行っている事がある。


 素直に聞きに行ってそのまま会話が出来るのはコリンの凄い所だ。あの素直さは、チグサにはないものなので少しばかり眩しく感じる。

 今回も元気に人に話しかけに行ったコリンを見て眩しい……と目を細めたら、同じような顔をしたアンドレイがコリンを追って行ったのが見えて思わず笑ってしまう。


「コリンは元気がいいねぇ」

「若さですねぇ」

「君が言うんじゃないよ、ボクらはどうなるんだい」


 ギーネと軽口をたたき合いながら里の中を歩き、声を掛けられたら取引をして、世間話のついでに情報収集も行っておく。

 さらにそのついでに買い物もして、時々足りない物を馬車に取りに行く。


 そんなこんなで夕方には馬車に全員が集合し、明日の早朝に出発しようということで話がまとまった。

 チグサも欲しかったものは買えたし、サシャも目的の調味料が買えたらしい。

 なんだかんだ売れた物も多く、売り上げと在庫の確認をチグサとギーネの二人掛かりで行うことになった。


「さ、今日は早く寝よう。明日はリコリスまで行くよ!」

「おー」

「おぁー」

「お、反応した」

「暖かい所の気配を感じたのかな」


 毛布の中で団子になっている寒がり二人が反応した。

 暖かい所の情報に敏感だなぁ、なんて思いつつ食事を終えたら出発準備を整えて、さっさと眠ることにした。


 寝れなかったら夜の番がてら在庫の見直しと今後の予定でも考えようか、と思っていたのだけれど、アンドレイにバレていたのか問答無用で布団に叩きこまれてしまった。

 仕方が無いので眠れないなら眠れないなりに目だけでも閉じておこう、と目を閉じて、寄ってきたカタリナの体温でぽかぽかになって見事に夢の世界に放り込まれるのだった。

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