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18,可愛らしいことになってるね

 霊氷山に到着してまずやることは、風の吹きこんで来ない洞窟で火を起こして暖を取ることだ。

 鉱石はこの山の山頂付近で見つかるので、上の方の洞窟を野営地点として整備していく。

 火は早めに焚かないと、レウコスが布団にくるまって動けなくなってしまうので急いで準備する。


 まぁ、すでにレウコスは布団にくるまって出てこなくなってきているけれど。

 もう駄目だぁ、と確認に行ったセダムが笑って戻ってきたので、火おこしの準備をしていたチグサとサシャは思わず笑ってしまい、火おこしに若干の遅れが出た。まぁ、若干だ。バレはしない。


 遅れは出しつつも火は起こし、焚火に拾ってきていた木の枝やら何やらを突っ込んで火を大きくしていく。

 ある程度火が大きくなったところで馬車からもこもこのレウコスが出てきて、火の傍に座った。


「釣られて出て来たね」

「寒いんだよ……セダムが可笑しいんだよ」

「俺を巻き込むなって」


 鉱石採取のための道具を用意しているセダムが気候への文句に巻き込まれて笑い、寒そうに縮こまりながらモソモソと文句を言うレウコスにチグサも笑った。

 第六大陸に来るとよく見る光景ではあるが、何ともまぁ、普段のレウコスとの態度の違いが面白くなってくるのだ。


 うだうだと小声で文句を言いつつ、もこもこの外套に包まって火にあたっている。

 ミノムシ、と言ったのは誰だったか忘れたが、全員で噴き出したのは覚えている。それにレウコスがまたモソモソ文句を言っていたのも覚えている。


 これだけ寒がるのに、第六大陸に行くことには反対しないしついて来るのだから可愛いものだ。

 暖かいところで待っていてもいい、と言ったこともあるのだが、断固拒否の姿勢を示されたのでミノムシになってでもついて来るつもりなのは知っている。

 それにしたって、脳が動いていないのが分かりやすくて面白い。


「早めにご飯にしよっか。なんか食べたら、ちょっとは温かくなるでしょ」

「そうだね。……ん?そういえば、カタリナは?」


 笑いながら鍋の用意を始めたサシャと話しながら、チグサはふともう一人の寒がりが居ないことに気が付いた。

 猫は寒いと団子になって丸まるけれど、猫獣人であるカタリナも寒いといつもより寄ってくるのだ。


 なので第六大陸にいる間は大体レウコスの傍に居てお互いで暖を取っているのだけれど……馬車はしばらく動かさないからと牽引ハーネスを外していたのは見たけれど、その後が分からない。

 火を焚いたのに寄ってこないあたり、何か作業中なのだろうか。


「おーい?カタリナー?」

「団長、こっちだ」

「エリオット?そんなところで……わぁ、可愛らしいことになってるねぇ」

「言ってねぇで連れてってくれ」


 馬車の方へ向かいながらカタリナを探していたら、エリオットから声を掛けられた。何かと思えば、膝の上にあがり込んだカタリナがそのまま丸くなって動けなくなっているようだ。

 二人は普段から宿に行かずに馬車に残っているし、付き合いも長いから安心感もあるのだろう。それになによりも、


「エリオット、体温高いもんねぇ」

「セダムの方が高いだろ……連れてってくれって。動けねぇんだよ」

「はいはい」


 焦りはせずとも助けは欲しているらしいエリオットに言われて、チグサはカタリナへ手を伸ばした。

 チグサはこれでもアジサシの団長なんてやっているので、見た目以上に力がある。常から積み荷の上げ下ろしやら積み直しやらやっている成果だ。


 なのでカタリナくらいなら運べるのだが……カタリナが、駄々を捏ねるようにエリオットの外套に爪を立てたので笑ってそのまま元の位置に戻した。

 エリオットはゴーグルを首までおろして露わになっている目元を手で覆っている。


「あっはっはっは!嫌だってさ。エリオットごと火の傍に行きな」

「勘弁してくれよ嬢ちゃん……」


 言いながらも抱えて立ち上がったあたり、諦めは付いたらしい。

 まぁ火の傍に居たらそのうち動き出して開放されるかもしれないし、それを期待して置いてほしい。代わりに作業はある程度やっておくから。


「はぁー……笑った笑った……コリン!」

「はい!なんですか!」

「スキュシ鉱石の採取方法は覚えているかい?」


 普段、細かい採取や繊細な採掘となるとレウコスがやることも多いのだけれど、第六大陸でレウコスを働かせるのはあまりに酷なので、スキュシ鉱石は他の者で採取するしかない。

 以前採取に来た時にコリンに任せた記憶はないが、確かエリオットの傍で見ていたはずだし今回はやらせてみてもいいだろう。


「えーと……熱を持たせすぎちゃだめ」

「うん」

「直接傷をつけないで、外側を削る」

「うん」

「最後は蹴る」

「それは悪い例だ、忘れなさい」

「はーい」


 前回のエリオットの雑な作業を今になって知ったけれど、それは一旦置いておく。

 ともあれ説明しながらやらせる分には問題なさそうなので、今回はコリンも採取班だ。

 コリンがアジサシの一員となったのは六年ほど前で、スキュシ鉱石の採取はそんなに頻発する用事ではないので見るのも多分これが二回目だろう。


 まぁ、壊滅的に不器用な訳でも無し。なんでも素直に受け取れる子なので、やらせてみるのが一番ではある。

 なんて考えながら準備を進めて、ある程度までやったところで火の傍に戻って来た。

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