カオス vs コスモス
「燃え上がれ! 俺のコスモス!」
真矢がそう叫ぶと、身に纏った青銅の宇宙服が膨れ上がった。はちきれんばかりに。そして、はちきれた。粉々になったそれは宇宙空間を漂い、真矢は、死んだ。
「おいおい……」
敵の戦士は思わず呟いた。
「自爆かよ」
彼は黒っぽい、なんだかよくわからない色の戦闘服に身を包んだ、顔面崩壊した感じの、いかにも悪役といった男であった。
傍で見ていた真矢の仲間、ドラゴン竜一は思わず呟いた。
「『コスモス』とは調和した宇宙の形……。それは美しく、安心を人に与える。が、得難いものだ。まるで汚れた街でROSIERを見つけるようなもの。それに対し、カオスは強い。どこにでもあるものだ。ゆえに、真矢は負けた。激しい宇宙のSTORMに体を砕かれた」
「でも……」
同じく真矢の仲間、アンドロメダ伊能蘭ちゃんがニコッと笑った。
「大丈夫よ! あの真矢だもの!」
「「そうだそうだ」」
同じく真矢の仲間、杉作とGも、声をあげた。
「「蘇れ! 真矢! おまえのコスモスを見せてやれ!」」
真矢はその声に、応えた。
宇宙の闇のむこうから、光で切り裂くように、黄金の宇宙服に身を包み直した真矢が飛んできた。
「受けてみろ! ペガサス68連打!」
真矢の正確無比かつ神速のドラムスティックが敵を襲う!
「フッ……」
黒っぽい、なんだかよくわからない色の戦闘服の敵は、鼻で笑った。
「この俺を誰だと思っている」
そして、必殺技名を口にした。
「エントロピー増大」
「うわああああっ!」
絶叫をあげながら、真矢が上へ吹っ飛ばされた。
敵はなんか必殺技名を口にしただけなのに。
「フッ。俺の名は『ガクッと』。アラフィフにして映画で高校生役が張れるカオスな男だ」
いつの間にかその顔面崩壊していたルックスには格好いいサングラスがかけられ、美しく整っている。
「それって……」
真矢の仲間たちが口々に感想を漏らす。
「カオスなの?」
「コスモスじゃないの?」
「この上なく維持するのが大変なやつじゃない?」
図星を突かれ、ガクッとはガクッと膝をついた。
そんな隙を見逃す真矢ではない。
「ハハハハ! 死ねやイケオジ!」
真矢は必殺技名を口にした。
「ナルシー殺しー」
必殺技名を口にしただけなのに、ガクッとの体が上へ吹き飛ばされた。
もう、どちらがコスモスでどちらがカオスなのかもわからない。
観測点によってそれは姿を買える量子力学のようにも見えた。
そしてイケオジは星のように砕け散った。