ネット小説講座 その2 タイトルについて
「所で、どうしてこういうネット小説って同じようなタイトルばっかなんですか?」
私は誤字脱字のチェックをしながら気になった事を聞いた。
というのも、ネット小説からアニメ化や書籍化される作品、つまりは人気のある作品は大体ジャンルが決まっており、タイトルも似たりよったりであるからだ。
昔からそこがどうしても気になっていた。
「そうだね。じゃあ、そこについて説明しようか。」
片桐さんは小説を書く手を止め、こちらに正対する。
どうやらこの人は集中して書くことが出来ないらしい。
まぁ、投稿する分は間に合いそうだし良いのだが。
「例えば、君はソーセージが食べたいとする。」
「何故ソーセージ……。」
この話でソーセージを選ぶ理由があるのだろうか。
少し不安になってきた。
「同じ値段、同じ味、ただ一つ違うのは商品名のみ。片方は『ソーセージ』という商品名。もう片方は『あの有名シェフが監修!最高に美味しいソーセージ!』という商品名。さて、君はどちらを選ぶ?」
「それは後者ですね。」
すると、片桐さんはこちらを指差す。
というかソーセージである理由は無い。
恐らく、片桐さんが好きなだけだろう。
「そこ!そこなんだよ!」
成る程、何となく理解した。
「つまり、商品名で客を引く要素を作る必要があるんですね。」
「……今それを言おうとしたのに。」
片桐さんはあからさまにがっかりする。
何だか悪い事をした気がする。
この人は本当に大人なのだろうか。
「で、でもそれぐらいしか分からないんで詳しくお願いします。」
「う、うん!」
なんだか大きい子供の相手をしている感じがする。
これからも疲れそうだなと思ってしまった。
「つまり、内容が分からない以上、タイトルで内容を何となく分からせる必要がある。そして、その上でネット小説で人気のジャンルが異世界転生系だからどれも似たりよったりなタイトルになってしまうんだ。」
「やっぱり普通のタイトルじゃ厳しいんですか?」
「まぁ、実績のある作家じゃないと厳しいね。」
そこでとある事に気が付く。
「……じゃあなんで片桐さんは普通のタイトルにしたんですか?」
「……テンプレに負けたく無い。」
やはり、子供だろう。
本当に書籍化したいのであれば自分のプライドのようなものは捨て、勝てる方法を使えば良いのだ。
「……タイトル変更しましょう。」
「……はい。」
片桐さんも厳しいのは理解していたのだろう。
まぁ、内容はそこまで悪く無い筈だからさっきの理論なら、読者も増えてくれるだろう。
これで、片桐さんの夢に一歩近づけた。
……いや、違うだろ。
私は片桐さんを挫折させるために協力してるんだ。
それを忘れない様にしなければ。
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