手伝い
「じゃあ、そろそろ手伝ってもらおうかな。」
「何をすれば良いんですか?」
私が明日は投稿しましょうといった途端、急に手伝えと言われた。
それ程執筆が間に合っていないのだろうか。
「では、誤字脱字のチェックをお願いします。」
「……なんか拍子抜けです。」
片桐さんからタブレットを手渡される。
片桐さんパソコンで小説を書いているようだったが、出先でも書けるように、そして、パソコンが死んだときの為にタブレットにもデータを入れているらしい。
「取り敢えず、その話のチェックをお願い。」
「……分かりました。」
タブレットをスクロールし、小説を読んでいく。
すると、至る所に誤字脱字が見つかる。
「これ、自分でチェックしました?」
「……一応は。」
やはり、二重のチェックは必要ということだろう。
チェックしてこれなら問題だ。
まぁ、私がチェックしたところで、更に誤字脱字があるかもしれないのだが。
そんな事より……。
「あの、ここの状況よく分からないんですけど。」
「ん?おお、本当だ。言葉足らずだね。」
片桐さんはタブレットを受け取り、少し修整していく。
こういうのは気付かないものなのだろうか。
「結構こういうのはね、誰かに読んでもらわないと気づけない事もあるんだ。自分の頭の中ではその情景が出来てるんだけど、これでわかってもらえてるつもりになっちゃうんだよね。」
「そういうものなんですか。」
片桐さんからタブレットを再度渡される。
文が追加され、先程よりも情景がわかりやすくなっていた。
が、それ以前に一つ気づいた事がある。
「片桐さんって国語の点数低かったりします?」
「ぐっ、な、何故それを……。」
どうやら図星だったようだ。
この小説の文章からなんとなくそんな気はした。
別に下手くそな文章という訳では無いのだが。
「えぇ、そうですよ!別に頭が良い訳ではないですよ!」
「別に怒らなくても良いじゃないですか。」
本気で怒っている訳では無いのは分かる。
これくらいで怒る人物では無いだろう。
「それでもね、夢は掴みたいのよ。只のファンじゃなくて提供する側になりたいの。」
「そうですか。まぁ、私も私が出来る事なら全力で手伝いますよ。」
すると、片桐さんは涙を流しそうな顔をして、目元を抑えた。
因みに全く涙出ていない。
演技が過ぎる。
「巴ちゃん……。私のためにそんな……。」
「はい。どうでもいいのでさっさと書いてくださいね。」
夢を諦めて真っ当に生きてくれたらそれで良いのだ。
全力で臨んで、失敗すればもう夢を持つことも無いだろう。
私は片桐さんが夢を諦める様になるために全力を尽くそう。
悔いの残らないように、完膚なきまでに挫折するように。
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