学校生活
「で、バイト始める事にしたんだ。」
「うん。」
後日、学校にて唯一気楽に話せる友人、内田茜と昼食を共にしながら話をしていた。
茜は唯一、普通を演じ無くても良い友人である。
ただ、彼女はいわゆるぼっちと言うやつであり、彼女からしたら私が唯一の友人である。
いつもなら別の人と食べるのだが、たまにこうして昼食を一緒にしている。
私は普通を演じている上では友人はたくさんいるが、心を許せる友は彼女だけである。
ただ、普通を演じた上での心を許せる友である。
そして、彼女には他の人には打ち明けていない家庭の環境や、悩みなんかも一部聞いてもらったりしており、これまで何度も助けられた。
まぁ、愚痴を聞いてもらうだけなので根本的な解決にはなんの役にも立っていないのだが。
「あの人、なんで今まで生きてこれたんだろ……。」
片桐さんと数日共に過ごして分かった事がある。
片桐さんは所謂駄目人間である。
ゴミは散乱し、洗い物、洗濯物はものすごい溜めている。
私が共に過ごすようになってからはまず片付けから始めた。
「……良かった。元気そうで。」
「え?」
彼女の顔を見ると、ホッとした顔をしていた。
「だって彼氏に振られたんでしょ。私、心配で心配で。」
「あぁ。それね……。」
気が付けばその話は学校中で噂になっていた。
が、皆が気を利かせてその話題は振らずにおいてくれていたのだが。
彼女がぼっちなのはやはり浮いているからというのがある。
所謂、普通の人が聞かない様な事を平然と聞いてきたりする所だろう。
うまく立ち回れば人気者にもなれるのだろうが、彼女には厳しいのかもしれない。
「別に良いんだ。振られたのは。ただ、振られた理由が……。」
「理由?」
そこまで言って慌てて口を閉じる。
振られた理由を知られたくは無いからだ。
いくら自然体で話せるからと言って、この性格が作られた物だと知れば幻滅されるかもしれない。
油断は禁物だ。
「……ううん、何でもないよ。」
「そう?まぁ、言いたくないなら深くは聞かないけど。」
すると、いきなり後ろから肩を叩かれる。
「ねぇ!巴!今日帰りいつもの店行こうよ!」
「うん!良いよ!」
面倒臭い。
内心そう思ってしまう。
いつもの店とはカラオケ店の事だ。
学校帰りに遊ぶなんて面倒臭いことこの上ないが、私が私であるためには必要な事だ。
こういうシチュエーションの為に私は一人で歌の練習をし、流行を学び、一般女子高生がどれ程の点数が取れるのか調査し、その得点が出せるように練習もした。
そのお陰で普通を過ごせている。
ふと、気が付けば茜が消えていた。
彼女は陽キャの気配に弱すぎる。
恐らく、トイレにでも行ったのだろう。
影が薄いのも、問題である。
……茜はキャラとして結構面白いのでは?
ふとそう思ってしまった。
今度片桐さんの小説を手伝う時はちょっと提案してみよう。
まぁ、まだ手伝った事は無いのだが。
茜をモチーフにしたキャラがいれば面白いかもしれない。
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