親
その後、片桐さんは本当に私の親代わりとなった。
あの日はそのまま帰らずに詳しくは分からないが片桐さんが弁護士とかを上手く使い、あの親との親子関係を切ったのだ。
日頃から振るわれていた暴力も私が念の為にバレないように録画していたものがあり、それが決定的となったようだった。
その後、片桐さんは私の保護者として学校にも事情を説明してくれた。
教員も理解してくれたようで親の一件については校内で公表はしないと約束してくれた。
なので、名字もそのままだ。
これで私はこれまで通りに普通の女子高生として暮らす事が出来る。
しかし、そこでふと疑問に思ってしまった事がある。
片桐さんは一体何の仕事をしているのだろう。
数日、手続き等でずっと一緒にいたが、仕事をしている気配が無い。
職場に休む連絡を入れていた訳でもないし、仕事に出かけて行った訳でもない。
でも働いていない訳では無いと思う。
というのも、暮らしが豊かだからだ。
貧乏らしさを感じる物が一切無い。
そして、そもそも年齢も分からない。
恐らく25とかその辺りだと思う。
でもなんの確証もなく、只の外見からの判断である。
「で、何の仕事してるんですか?」
なので学校が終わってから思い切って聞いて見る事にした。
が、あからさまに目を逸らす。
「……言わなくちゃ駄目?」
私は頷く。
片桐さんは溜息をつくと口を開いた。
「無職です……。」
話を聞くと、彼女は自衛隊にいたそうだった。
それも幹部自衛官。
そして、在隊中に競馬とパチンコ、更には宝くじで大当たりしたそうで、元々在隊中に人間関係で苦しんでいた彼女は退職し、今は自由気ままに生きているらしい。
かなりの額を当てたのだろう。
正直羨ましい。
因みに初めて出会った日、仕事帰りのような格好をしていたのは近所の人に無職だと知られないようにそういう感じの服をわざわざ着たらしい。
やはり、変わっている。
……成る程、やはり普通の人とは変わってる人は集団に馴染めず、馴染もうとしてもそれは自分を押し殺しているだけだから非常にストレスが溜まり、結局破綻する。
でも、そうしないと虐められてしまう……。
結局、私は普通を演じ続けるしかないのか。
「別に、逃げるのは悪い事じゃ無いんだよ。」
私の考えを察したのか、片桐さんは口を開いた。
「耐えて耐えて耐え続けて、いつか大爆発するんならもっと早いうちから抜いていかないと。」
逃げても良いのか。
そう言われると、逃げ出したくもなる。
「……一つ聞いても良いですか?」
「とうぞ!」
だが、その前に一つ気になった事がある。
「収入無いのに私を養えるんですか?」
「……多分!」
本当に大丈夫なのだろうか……。
「実は、無収入って訳では無いんです!」
「……でも働いて無いんですよね。」
すると片桐さんは無い胸を張る。
「説明しましょう!書籍化されていなくても小説を書くことで収入を得る方法を!」
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