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出会い

「お前、頭おかしいんじゃないの?」

「あの子ってちょっとズレてるよねー。」

「普通、そんな考えにはならねぇだろ!馬鹿か!?」

「お前本当に使え無ぇな!」


 昔からズレてるとか、頭がおかしいとか、普通じゃないとか沢山言われてきた。

 家族も父親のみで、昭和人間。

 子供の頃から殴られて怒鳴られて生きてきた。

 そんな環境で生きてきたせいか、学校でもおかしいとか、普通じゃないとかで虐められてきた。

 だから、私は「普通」を演じる事にした。

 親の仕事の関係で転校したことをきっかけにやり直すことにした。

 まずは観察。

 普通の女子高生がどんな趣味を持っていてどんな喋り方をしてどんな私服を着るのか。

 そして、それを私と照らし合わせ、修整していく。

 自分の口調、声の高さ、テンポ、全てを録音して調整し、練習していった。

 その努力のお陰で学校では友達も出来た。

 虐められることも無くなった。

 それどころか、人生初の彼氏まで出来た。

 でも、そんな幸せな時間は長くは続かなかった。


「なんか、気持ち悪いんだよね。お前。ちょっと無理だわ。」


 ある日、初めて出来た彼氏にそう言われた。

 別にあの彼氏は好きとかそういうわけでは無かった。

 普通の女子高生を演じるために付き合ったに過ぎなかった。

 でも、気持ち悪いと言われたのは傷付いた。

 更にその日は追い打ちをかけられることとなる。


「飯が不味い!これくらい何で作れねぇんだよ!」


 家に帰っていつも通りにご飯を作ったのだが、仕事で失敗したのか父の機嫌は悪く、八つ当たりを食らった。

 茶碗を投げつけられた。

 これでも一生懸命作ったご飯を目の前で捨てられたら悲しくもなる。

 今は近くのコンビニに代わりとなる夕飯を買いに来ていた。

 その帰り、道路を行き交う車を眺める。


(もう、疲れたな……。)


 あれだけ努力して来たのにやっぱり私は普通じゃないんだ。

 確かに、「普通」の人はそんな努力をしないんだろう。

 気持ち悪い、頭おかしい、ズレてる。

 もう、疲れた。

 本当にそう思う。

 楽になろう。

 車が来るタイミングを見計らって足を一歩踏み出そうとする。


「ねぇ、君、死にたいの?」


 すると、後ろから声をかけられる。

 女性の声だった。

 振り返るとスーツを来た恐らく仕事帰りであろう女性がいた。


「……え?」

「ねぇ、なんで死のうとしてたの?死ぬつめりならさ、せめて私の役に立ってから死んでみない?」


 この女性は一体何を言っているんだろうか。

 いくらなんでも普通じゃない。

 ……今、なんて思った?

 普通じゃない?

 そうか、私を虐めてた人達もこんな気持ちだったんだ。

 気になる。

 もっと知りたい。

 私を虐めてた人達の気持ちを。

 一体どんな気持ちで私に罵詈雑言を浴びせていたのだろう。

 この人と関わる事で少しは理解できる。

 そう思えたのだ。

 私の知的好奇心が知りたいと騒いでる。


「……良いですよ。」

「ホント!?やったぁ!」


 すると、女性は私の手を握った。


「私は片桐由紀子。あなたは?」

「……高杉巴です。」


 片桐由紀子と名乗った女性は満面の笑みだった。


「私、趣味で小説書いてるの!あなたの事、もっと聞かせて!いいネタになりそう!」


 この人との出会いが私の人生を大きく変えることになる事をこの時の私はまだ知らなかった。

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