親父の実家は幽霊屋敷 前編
「あー・・・確かにそんな話だったな。それでこのキャンプ場の曰くって自殺者が後を絶たないって事でOK?」
「いや、実はそれも曰くの1つではあるんだけど、この場所の本当の曰くっていうのが100年以上も昔の話になるんだけど、当時ダムを建設するのはかなり難しい作業だったらしくてな、ダムの氾濫とかで何回もダムが決壊したらしいんだよ。その当時の人は考えた。簡単に言うと生贄を用意すればきっとダムは決壊しないだろう。」
「はぁ?」
「まぁ昔だからそういうのを信じてる人が多かったんだろ。それで、当然だけどこの近隣に住んでる人から生贄を出したくはないわけだな。だから、遠くに住んでいて障害を持っている子供を買って生贄としてこのダムに生き埋めにしたんだよ。」
「なんというか・・・幽霊より人間の方が怖いな・・・。」
「本当にそうだよな。ここからが本題なんだけど、不思議な事に数年に1回氾濫が起きてたダムも生贄を捧げてから本当にピタリと反乱をしなくなったんだ。その代わり、生贄に捧げられた子供がダムの近隣住民の枕元に夜な夜な立つようになった。そんな声が広がっていったから、その子供の供養をするために祠を作ったらしい。」
「なるほどな。それで千春はその子供を視てから幽霊が視えるようになったわけだ。それで高校で俺と出会って心霊スポットに連れまわされる事になったと。」
「生贄にされた子供かは分からないけどな。そうだな・・・俺の親父の実家に来た時が初めてじゃないか?」
「そうそう!お前の家は幽霊屋敷だったもんな!」
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親父の転勤に伴い、俺は県外の高校に進学していた。県外とは言っても親父の実家がある場所なので、俺にとって全く馴染みのない場所ではなかった。
小さい頃から毎年夏休みになると親父の実家に泊まりに行って、じいちゃんとばあちゃんに遊んでもらった記憶がある。そんなじいちゃんも俺が6歳の時に亡くなってしまったからそこまで記憶にあるわけじゃないんだが・・・。
たまたま親父の勤務地と実家が近くという事と、通える高校も自転車で30分もかからない場所にあったから、現在は親父の実家に住んでいる。
親父の実家はじいちゃんが生きてた頃は自分の土地で米なんかを作ったりしていた農家だったから、家は結構でかい。高校で友達になった篤が来た時は「旅館の玄関みたいだ」とか言ってたな。
そんな親父の実家は少しおかしい。
簡単に説明すると、茶の間のドアは引き戸なんだけど夜中に携帯いじりながらグダグダしてると、勝手に引き戸が30㎝くらい開いたりする。勿論家族は寝ているし、誰も居なかったのは確認済みだ。その他にも人影なんかが歩きまわっていたり・・・。
そんなことがほぼ毎日起きる。そんな話を友人である篤にしたら俺の家に泊まりたいと騒ぎ始めた。そう。友人の篤は心霊オタクなのだ。
丁度その週末は、ばあちゃんが老人会の旅行で1泊2日で東京に行く予定だったし、親父と母さんもばあちゃんが家に居ないからと旅行に行くようだった。
俺は軽くため息を吐きながら篤が泊まる事を了承した。
土曜日になり篤は夕方頃に大量の荷物と共に現れた。
「なんでそんなに荷物持ってるんだよ・・・。」
「心霊現象を納めるためのカメラとか色々入ってんの。しかし思い・・・荷物を置かせてくれ。」
パンパンになったリュックサックを背負いながら自転車をこいできた篤に、そこまでするか?と呆れつつも家の中にいれた。
「それで何処が一番霊障が起こるんだ?」
少し興奮気味に聞いてくる篤にドン引きしながら、
「一番は茶の間かな?その次は仏壇の隣の部屋。」
「んー・・・じゃあ寝る前までは茶の間で過ごして、寝る時は仏間の隣にしよう。」
寝る時は動画を回すぞ。と気合を入れてる篤を他所に俺は夕飯の準備をする。
台所で夕飯の準備をしてるというのに篤はしつこくどんな霊障が起こったかを聞いてくる。篤の場合、質問に答えないとしつこく聞き続けてくるので、しょうがなく説明してやった。
「俺って篤にどこまで話をしたか覚えてないんだけど・・・」
「あれだよ!茶の間の引き戸が勝手に開くとか、人影がどうとか。」
「そうだな・・・」
親父の実家では勝手に引き戸が開いたり、人影が歩いたりする他にも消していたテレビが点いたり消えたりを繰り返す事や、飾ってある日本人形が床に落ちていたりする事がある。
正直ここまでは気のせいだろ。とかたまたまじゃない?って思うかもしれないけど、俺が中学の時に体験した話は絶対に気のせいなんかじゃない。あれは、俺が初めて幽霊を視たキャンプ場の出来事から数日程経った日の話である。
当時中学3年生だった俺は夏休みに墓参りもかねて、親父の実家に泊まりにきた。毎年のように恒例となっている豪華な夕食をばあちゃんが作ってくれてその日も楽しく過ごしていた。
酒で酔っ払った親父はそうそうに寝床に行き、最終的には俺だけが茶の間に残っていた。
時計を見るともう少しで日付が変わるくらいになっている。
そろそろ寝ようかと自分がいつも寝ている仏間の隣に向かう。仏間は襖で仕切ってるだけで、薄い襖を開ければすぐそこには立派な仏壇がある。
今まで幽霊なんて信じてなかった俺だったけど、キャンプの件があって数日しか経っていなかったので内心ビビッていた。
俺が寝る寝室は10畳あるかないかくらいの広さで、その部屋にはばあちゃんが用意してくれたであろう敷布団が中央に敷かれていた。
部屋には弓を構えた武士の人形と着物を着た日本人形も飾ってある。
あの出来事があった後だとなんだか不気味に思えてきて、俺は嫌な想像をしないように布団にすぐ入り頭までかぶって寝た。
どの位の時間が経っただろうか・・・寝苦しさからなのかふと目が覚めた。
ボーッとした頭で枕元に置いてある携帯を確認する。午前4時を少し過ぎた頃だったと思う。夏だからか辺りは少し明るくなり始めた頃だった。
少し離れた台所からばあちゃんが朝食を作っているのか、少し物音が聞こえてきた。
ばあちゃんは相変わらず朝が早いな。なんて思い、まだ俺が起きるには早い時間だからともうひと眠りしようとした瞬間、身体が固まった。
俗にいう金縛りって奴だな。身体は動かせないのに目だけは動かせる。
そんな状況の中、視線が天井を向く。
そこには、2つの目がせわしなくキョロキョロと動いていた。
薄暗い室内なのに、その目だけはハッキリと見えた。血走った白目にキョロキョロ動く黒目。
逃げ出そうにも身体が動かない。
声を出そうにも声が出ない。
目をつぶろうにも目を閉じれない。
そんな状況の中、先程までせわしなく動いていた目とバッチリ目があった。そこで俺は気を失った。
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