報道
学び舎とはいつの時代も閉鎖的である。
全寮制のエリート学校であればなおさらだ。
『少年がナイフで』
事件の初報を聞いた記者は、同期のカメラマンを引き連れて現場に赴いた。
ほんの少しの正義感と、有り余る特ダネを求めて。
学校の前は静まり返っており、野次馬と思わしき人だかりもない。
チャンスだ、一番乗りだ。
そう感じた記者は制服を着たそれっぽい生徒たちに声をかける。
「誰か現場を見たとか、近くにいたとか、そういう友達いない?」
「友達が言ってた話を聞いただけです」
「学年が違うからわかりません」
「校舎が隣なので……」
「どこのTV局ですか?」
これでは駆けつけた意味がない。
学生寮の前で執拗に聞き回っていると1人の生徒が近づいてきた。
「俺、そこにいましたよ」
カメラマンが慌てて発言者にレンズを向ける。
特ダネを確信した記者は畳み掛けるように質問をした。
「その時はどういう状況でしたか?」
「どんな経緯でそうなってしまったか知っていますか?」
「学校……先生たちはそのことについて何か言ってましたか?」
少年はカメラを一瞥すると、ぽつりとつぶやいた。
「同級生刺しちゃったし、これで俺も終わりかなぁって思いました」
(具合が悪いシリーズ『報道』 おわり)