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47.真相告白ーオーウェン編②ー

 大変申し訳ございません。修正部分が多くて、一度投稿した47話は削除して、再投稿させて頂きました。内容はさほど変わりありませんので、気にせず読んで頂けたらと思います。

 「ゴホン、そこのお二人さん、仲がよろしいのは良いですが、もう少々自重して下さいませんかね。仮にも今は外交会議中ですから、宜しくお願いしますよ。」

 

 注目を集める為に、咳払いをするオーウェン。

 うまく、クライシスとマリアンヌの雑談を中断させて、先程の続きを話し始めた。


 「ここからは、我々諜報員しか知らない話だ。気分が悪くなったら、遠慮せずに部屋から出て行っても良いからな。おそらく、耳を塞ぎたくなるような話になってしまうと思うから。」


 声色は優しく穏やかではあるものの、オーウェンの眼鏡越しに見える瞳は、怒りに満ちていた。同じく、瞳の奥に強い憎悪を浮かべて、歯噛みするエミリア。横目で見ながらライオネルは虚しさを感じる。


 輝く青い瞳が、胸を締めつけ、痛みを伴う。

 時より目を伏せて物思いに沈むライオネル。エミリアは、封じ込めていた現実を突きつけられ、虚無感に襲われていた。


 「モネの暗殺阻止は、多くの犠牲を伴った。それは、モネ自身もだ。毒を盛られて生死を彷徨い、生還するも、二度と子を産めない体になってしまう。エスバーンは、モネが帝国に赴けば、暗殺されると危惧していた。けれど、条約を守らないわけにもいかない。偽の諜報員を帝国軍に就任させ、モネはグランド公爵本邸で匿っていたんだ。でも、そう上手くいくわけがない。誰もが最初からわかっていた。

 執念深く、嫉妬に狂ったミレーナは暴挙に出た。偽の諜報員はすぐに殺害され、国内の青い瞳の女性も全員殺害、抹消した。私の祖母は青い瞳でね、暗殺された。そして父親の恋人も、モネの身代わりとなって。グランド公爵家に帝国軍の暗殺者が侵入して、次々と………。モネは、帝国軍に連行されて、ロズウェル国から去った。

 しかし妙なことに、帝国軍の諜報員になったモネは暗殺されなかった。それは、皇帝の仕組んだ罠だった。二人は罠とも知らずに、断ち切った関係を再燃する。亡命して数日も経たないうちに逢瀬を交わしてしまう。再び、嫉妬に狂うミレーナは暴れ出した。皇帝の罠に気づかず、まんまと嵌り、思惑通りの悪行を働いた。自分が捨て駒だとは知らずに。

 父親はエスバーンに、必死で逢瀬を止めるよう説得した。だが、ミレーナの悪行が激化すればするほど、モネとの逢瀬は増すばかりで、もう誰も止めようとはしなくなった。エスバーンは、ミレーナを心底毛嫌いしていたんだ。それは、王宮内の人間も皆同じであった。

 私利私欲を満たす為に、宝飾品やドレスを次々と新調して、国費を費やした。更には、王妃専用の宮殿を特別に設けた。それが、今の王宮西棟だ。気に障る人間を次々と排除した王宮内は、未だかつてない王妃の独壇場と化していた。

 次第に、国民の不満は高まり、度々暴動が起こるようになる。そこで、高位貴族達は王妃を廃妃する動きを活発化させていった。当時、宰相を務めていたゴードンのお祖父様が、一番苦労していたと聞いている。

 身の危険を感じたミレーナは、策を練る。それが“青い瞳の呪い”だ。ロズウェル国の民話で、誰もが知っている話だ。あんな物語が、今や子供達の教本となっている。本当におかしな国だよ。このお伽噺話は、紛れもなくミレーナが自作した妄想の物語だ。

 不満の元凶を青い瞳の女性、すなわちグランド公爵一族のモネがもたらしたと、国民に周知させる。自分は悲劇の主人公で、国の聖女と謳う内容に、エスバーンは激怒した。

 国外にまで広まった嘘話の影響によりモネは、もう二度とロズウェル国に足を踏み入れることはなかった。エスバーンとモネの関係に終止符が打たれた。

 それ以降、エスバーンはまるで人が変わる。冷酷無情、卑劣、無慈悲と言われ、皆から恐れられる国王になった。虚勢を張って、国民を守ろうとしていただけなのに。

 孤独や寂しさを埋める為に、二人の女性と関係を持った。側妃廃止により王宮内には正妃しか暮らせない。その為、女性は王都の隠し部屋での生活を余儀なくされる。クレイアスとクライシスの母親がその一人だ。足繁く通い詰めるエスバーンの護衛に苦労はしたみたいだが、本当の夫婦の様に仲睦まじく、生まれてくる我が子を楽しみにして、甲斐甲斐しく世話を焼いている姿に驚かされたとは言ってたな。

 ミレーナも、同時期にエスバーンとの子を身籠もっていたんだ。一度だけ、薬を盛られて関係を持ってしまったそうなんだ。父親も毒を盛られて身動きが取れなくなり、その隙に。死ぬまで悔やんでいたよ。

 ミレーナの方が、先に子が産まれそうになった。その時、戦地に赴いていたエスバーンは、直ぐに帰還するのは難しかった。漸く戦地から帰還したエスバーンを待ち受けていたのは、酷い惨状であった。

 ミレーナの子は死産だった。取り乱して暴れた後に、衝撃的な事を命令したんだ。

 産気づいてもいない女性に、毒を盛って子供を産ませた。女性は子供を産んで直ぐに亡くなってしまう。生まれた二人の男の子を手にしたミレーナは、瞳の色を見て一人だけを残し、もう一人は捨てろと命令した。それがクライシスだ。捨てられた当時は濁った琥珀色の瞳で、クレイアスは綺麗な琥珀色だったみたいだ。まさか、成長と共に変わるとは知る由もない。宰相は捨てずに我が子として育てた。

 ゴードンのお祖父様のおかげでクライシスは、ここにいるんだ。」


 話を止めて、ゴードンと目配せをする。ゴードンは、クライシスに視線を向けた。

 「知っています。我が家の唯一の隠し事なので、口外は禁じられています。代々、守るようにと教えられております。宰相を務める高位貴族の責務ですから。」


 今まで見たことのない、軽快な口調と凛々しい姿のゴードンに、エミリアは無意識に声を発していた。

 「え⁉︎ 今の誰?ゴードン、頭おかしくなった?」

 「おい!失礼だぞ。」

 「ごめんなさい。なんかいつもと違って、素敵だったわ。」

 「お、おう。ありがとう。」

 「やめろ、静かに。」


 エミリアは、些か恍惚とした表情をゴードンに向けていた。ライオネルは嫉妬して不機嫌になる。クライシスは、三人の様子を微笑ましく見ながら、穏やかな表情でゴードンに視線を向けて口を開く。


 「当時は、君のお祖父様やお祖母様、そして娘のローラにもたくさん世話になった。感謝してもしきれないくらいだ。まさか、三人共にミレーナに殺されるとは、本当に許せない。」

 「ありがたいお言葉ありがとうございます。落ち着いたら是非、我が家に足を運んで頂けないでしょうか。お祖父様が渡せなかった手紙を、お渡ししたいと思っておりました。

 クライシス総帥閣下のご活躍は、お祖父様も喜んでいると思います。」


 ゴードンは、椅子から立ち上がり頭を深く下げた。目には涙を浮かべている。

 蘇る過去の記憶に目頭を熱くさせるクライシスは、ガバニエル公爵邸で過ごした幼少期を、片時も忘れた事はなかった。ゴードンの祖父母は、クライシスには父親と母親であり、ローラは妹であった。大切な家族を失った悲しみは、クライシスの復讐心の原動力であった。


 「君は、デニス様にそっくりだよ。涙もろい所なんてまさにそうだ。会えて良かった。本当に感謝してる、命の恩人だ。」


 部屋の中に、啜り泣く音が響き渡る。



 壮絶な過去は、語り尽くせないほど卑劣で残酷なものであった。

 


 いつもたくさん読んで頂き、本当にありがとうございます。

 今回は、本当に申し訳ございませんでした。とても反省しております。大幅な修正にならないように頑張りますので、これからもよろしくお願い致します。

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