35.マリアンヌとの再会
昨日、投稿出来ずにすみませんでした。
「皆さん、ご機嫌麗しゅうございます。あら、ここは朝から揃いも揃って、まあーむさ苦しい男ばかりですこと。ふふふ。」
優雅に歩きながら、ダイニングルームに入って来た女性。上座に座るクライシスの横に立ち、へらへらと笑いながら軽口を叩く。
後を歩いていたオーウェンは、ダイニングルームに入るとすぐに、エドワードの元に駆け寄り、周囲に聞こえないような小声で事情を説明する。事情を聞いたエドワードの顔が、瞬く間に青褪める。
クライシスは、女性を見上げる事もなく、無表情で食事を摂っているが、ゾーゼフの溜息と共に殺気が溢れ出す。ダイニングルームが一気に凍てつく寒さとなり、戦慄が走る。
驚愕の光景に、ライオネルは茫然自失して、時が止まる。何が起きているのか、全くわからない。殺気に当てられ、体は震えていた。
ふとした瞬間、肩に重みを感じて我に返る。ゴードンが、驚きのあまり卒倒していた。急ぎ、もたれ掛かるゴードンに声を掛ける。
「ゴードン、ゴードン、わかるか。……ダメか。」
声を掛けても反応はなく、完全に意識を失っている。身体の力が抜けてダラっとしていた。今にも椅子からずれ落ちそうになっている為、一先ず椅子から下ろして床に寝かせようとした瞬間、ライオネルの声に反応を示した大人達が、一斉に駆け寄って来た。
「どうした!」とゾーゼフが真っ先に駆けつけて、ゴードンの身体を支えた。
「どうした?何した?あー大きいからな、これは大変だ。」
「え⁈ えー‼︎これは大変です。直ぐに部屋に運びましょう。」
「あら、まあ、そんなに驚くことかしら。」
ゴードンの周りを囲んで、ざわざわと騒ぎ始めた。これがまた、なかなかの騒音である。
ゾーゼフは周りの外野を気にも留めず、背後からゴードンの両脇に自身の両腕を入れて軽々しく持ち上げ、なんとクライシスの背にゴードンを載せた。
ライオネルは、一瞬の出来事と機敏な動きに圧倒され、何も出来ずにただ呆然と眺めていた。だが、部下の失態を黙って見過ごすわけにはいかない。ましてやあろうことか、クライシスに背負われていたので急ぎ、進言をする。
「父上!私の部下ですから、私が背負います。此奴は重いですから。」
「無理するな。お前にはどう考えても無理だ。この中で背負えるのは私しかいない。大した事はない、いつもこうして倒れた部下を担いでいるから平気だ。よし、さあ行くぞ。あーそうだライオネル、後ろから押さえるように支えてくれんか。」とゴードンを背負い歩き出した。
申し訳なさそうに、浮かない顔をしているライオネルを見ていたエドワードは「心配は要りませんよ。閣下が一番お強いですから。」と肩をポンと軽く叩き、微笑んだ。
「すみません。ご迷惑おかけして。」とエドワードとゾーゼフに向かい頭を下げて、指示通りに支えながら一緒に歩き始めた。
突然、クライシスが振り返り怒気を含んだ低い声で命令する。
「ゾーゼフ!そこの女は執務室に連れて行け!エドワード!オーウェンからもっと詳しく事情を聞け!直ぐ戻ってくるから、覚悟しとけよ!」
そして、去り際にマリアンヌを鋭く睨みダイニングルームから消えた。
「「「はぁーー。」」」
ゾーゼフ、オーウェン、エドワードは、一旦椅子に腰掛けて、心を休ませる。
オーウェンは緊張感から解放されてか、一気に疲労と脱力感に襲われた。だらっと腕を下ろして疲れ顔を見せた。
マリアンヌのじゃじゃ馬っぷりに心底うんざりして、疲れ果てていた。文句を言う気力すらも残っていない。ぼんやりと天井を眺めていた。
「おーい、オーウェン、大丈夫か?大丈夫じゃなさそうだな……。見てみろ、あれは随分と肝が据わっているみたいだ。よくこんな状況で、飯が食えるよな。信じられん。はぁ。無理矢理、引き摺り出したら面倒な事にならないだろうか。どうしたらいいんだ。あーもう、こんな朝っぱらから夫婦の問題に巻き込むなよな。もう、家に帰りたい。」
ゾーゼフは頭を掻きむしりながら、命令に従うか葛藤する。いずれにしろ、人害は避けられない。珍しく逃げ腰であった。
マリアンヌは全くもって、毅然とした態度である。クライシスの言葉には物ともせず、優雅に朝食を嗜んでいた。
そんなマリアンヌを睨みながら、エドワードが動き出した。隣に座り、テーブルを力強く叩いて叱責する。
「姉上!呑気に食べている場合ですか!何ですかその醜悪な態度は、いい加減にし下さい!いいですか、貴方の所為でこうなったんですよ!わかっていますか!責任をとって急いで閣下に謝罪して下さい!」
「エド、そんなに怒ったらお体に触りますわよ。ふふふ。」
「貴方という人は、性懲りも無く……あーもう、いつまでそうしているおつもりですか!助けてもらった恩は忘れたんですか‼︎」
青筋を立てて、怒鳴り散らす。遂に姉弟の喧嘩が勃発する。真っ赤な顔で吠える弟と怒声を浴びせられても、澄ました顔でせせら笑う姉の姿は、まさに悪女である。
エドワードは、怒りが頂点に達した。胸ぐらを掴み、手を振り上げて、頬に目掛けて掌を振り落とそうとした瞬間、誰かが手首を強い力で握り、動きが止まる。振り返ると、クライシスが背後に立っており、優しく微笑み、ポンポンと頭を軽く叩いた。
「エド、こんな事させてすまんな。こんなしょうもない女の為に、手を痛める必要はない。それより、すまんがライオネルの所に行ってくれないか。温かい飲み物を準備した方が良さそうだから、後は頼んだぞ。此方は気にしなくて良い。さあ、行ってくれ。」
クライシスの穏やかな表情に心が苛まれて、咎められている気になる。無意識に謝罪をしていた。
「閣下、大変申し訳ございません。我が姉の犯した過ちです。私にも責任があります。順当な処罰を与えて下さい。」
土下座しようとしたが、クライシスが身体を持ち上げて立たせる。そして、両腕を強く掴んで、体を揺さぶりながら仏頂面で言い放った。
「聞いてなかったのか、さっきエドは悪くないって言っただろ。あーもういいから、さっさと行け!」
「はっ!畏まりました。」とエドワードは走り去って行った。
足を組み、頬杖をついてマリアンヌを見ているゾーゼフ。女性の一向に変わらない態度を嘲笑う。
(うわぁー修羅場だ。あの女はどうするんだ?どうでるか見ものだな。)
この後、マリアンヌの一言が大変な事態を巻き起こす事となる。
予定通りに投稿が出来ず、大変申し訳ございません。次話投稿の予定が立てれませんので、暫しお待ち下さい。
いつもいつも、拙い文章をたくさん読んで頂き、本当にありがとうございます。
まだまだ、最後までとなると長くなりそうですが、よろしくお願いします。
次の次くらいに、漸くエミリアが登場します。読んで頂けたら、嬉しいです。




