表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/103

34.愉快な朝

 遅くなりまして、申し訳ございません。

 今回も長文です。それぞれの会話のシーンが多くなっております。

「うーん? あー、そうか。………もう朝か。」


 目を開けると、朝日が差し込んでいた。見る景色がいつもと違い、一瞬不思議な感覚に陥る。直ぐに、ここがオリビア連合国であると気づき、ゆっくりとベッドから起き上がった。

 お日様の匂いがするふかふかの布団に包まれて、心地良く朝まで眠っていた。珍しく遅い時間に目覚めたが、目覚めはとても良かった。


 (久々によく眠れた。寝過ぎたからかな、まだ眠いな。)

 大きな欠伸をしながら、目を擦る。カーテンと窓を開けて、大きく背伸びをした。


 「よし!準備するか。」と朝の身支度を手際良く済ませて、部屋に置いてある水差しの水を飲む。そして、外を眺めながら、昨日の出来事を思い出していた。

 あの後、甲斐甲斐しく世話を焼くクライシスを全力で抑止するオーウェン、ゾーゼフ、エドワードの三人のおじさん達。見ている側としては、面白すぎてゴードンと一緒に大笑いをしていた。

 エドワード以外は皆同い年であり、クレイアス国王とクライシス総帥は双子だと伝えられた時は驚愕した。

 ゴードンは、クライシス総帥が青年と見間違えるほど若く見えた為、自分の父親と同い年である事が信じられない様子であった。『え⁈ まじか。嘘だろ。』と繰り返し何度も言いながら首を傾げていた。


 初めて受ける、父親からの直球の愛情表現が、たまらなく嬉しかった。思う存分泣いて、笑った所為かすっきりとした気分で、身も心も軽く感じていた。


 突然、ドアを叩くノック音がした。普段なら足音や気配を感じるが、警戒心が緩んでいて気づかなかった。

 「はい。」と返事をすると、部屋の中にクライシスが入って来た。


 「え⁈」と驚くライオネルを余所に、いきなり抱擁する。再び、ライオネルは驚いて目をパチクリさせる。

 「おはよう、ライオネル。良く眠れたか?」と頭を優しく撫でた。そして、体を離し両腕を掴んだまま、上から下まで全身隈無く凝視している。

 ライオネルは、見つめらて恥ずかしくなり顔が赤くなっていた。


 「あのー、どうかしました?」

 「身支度は、いつも一人でしているのか。いつからだ? おい、なぜこんなに部屋を綺麗に整えている?いつも掃除は自分でやっているのか?」と掴んだ腕を離し、腕を組みながら部屋の中を眺めていた。


 「ええ。まあ、そうですが。」

 嘘は言えなかった。

 朝起きたら、ベッドの布団は整え、カーテンは留め具で纏めるのはお決まりの所作であった。掃除も含めて身の回りの事は、殆ど自分でしていた。掃除の手間を省く目的で、常に整理整頓を心がけていた。10年前から習慣として身についていた所作が、まずあり得ない事であるのは分かっていたが………。


 たちまち表情が険しくなり、殺気が一気に放出する。突如、大声で怒りを露わにした。

 「どういう事だ‼︎ 我が息子をぞんざいに扱いおって、許さん‼︎ みなご…ろもごうごうぐ。おい!やめろ‼︎」と口を塞がれた手を力強く掴み、払い除ける。

 大声と殺気に気づいたゾーゼフが、部屋に駆けつけてクライシスの口を手で塞ぎながら、羽交締めにしていた。


 「それはこっちの台詞だ!ライオネル王太子殿下、大丈夫ですか?お怪我はないですか?朝食の準備が整いましたので、エドワードと一緒に先に行ってて下さい。此奴(こいつ)は説教してから私が連れて行きますので、ご心配なく。エドワード、後は宜しく頼みます。ほら、行くぞ。まったく朝からやめてくれ。ゆっくり寝てもいられない。」

 ゾーゼフに引き摺られながら、一瞬微笑み、手を振った。すかさず手を振り返すと、満面の笑みを浮かべて部屋から去って行った。


 「はぁーー。」と深い溜息が聞こえてきた。

 「叔父上、私は問題ないですから。父上は、ほんとに愉快な方です。」

 「甘やかしてはいけません。すぐ調子に乗りますから。もっと怒って良いんですよ。はぁー。」

 「私の事をあんなにも気にかけてくれているのに、そんな怒るなんて以ての外です。嬉しくて、嬉しくて、また泣いてしまいそうです。」

 「え⁈ はぁ、そうですか……でもこれから重大な話がありますので、閣下の前では、絶対に喜ぶような言葉は言わないで下さい。締まりがなくなりますから。

 あんなに酒を飲んだのに、朝から元気で困ったものです。」と最後の言葉は、ぼそっと呟く。

 「え⁈ あーはい。わかりました。」


 「まぁ、これでは、閣下が怒るのも納得ですな。」と部屋の中をざっと見ながら、再び呟いた。

 「どうかしたんですか?おはよう、ライル!」とゴードンが部屋に入って来た。

 「おはよう、ゴードン。まあ色々とあってな。」

 「え⁈ あーそうなのか。ふぅーん。あーわかった。部屋が綺麗だからだ。そうか、そうか。」と部屋の中を見て、二、三回頷いた。

 「流石ですね。よくご存知でいらっしゃいます。まさに報告書通りです。」とエドワードも二、三回頷く。

 「え⁈ 報告書とは?」と見当がつかず、思案顔になる。


 (今がチャンスだ。考えているうちにどうにかしないと、ばれたらやばいからな。)

 「良いから、良いから、気にしない、気にしない。さあ!行きましょう!朝ご飯は何かな?」

 ゴードンはライオネルの手を引きながら、ダイニングルームに向かって歩き出した。

 「お前、何か隠しているな。白状しろ!」と歩く足を止めるが、手を引く力が急に強くなり、引き摺られていた。

 「痛い、痛い。やめろ!一人で歩けるから!離せ!」

 「朝からギャアギャアうるさいぞ。ほら、行くぞ!」と聞く耳を持たないから、話が全然通じない。もう面倒臭くなり、諦めて身を任せるしかなかった。

 「くっくっくっ。やっぱり親子ですね。」とエドワードが笑みを溢す。


 「おっ、ライオネル王太子殿下も引き摺られているとは。親と子は似るもんですね。」とゾーゼフがクライシスを引き摺りながら歩いて来た。

 「ええ、本当に面白いくらい似ています。」とエドワードは目を細めながら、眺めている。

 「そうか、そうか。良い事じゃないか。それより、おい!もう離せ!一人で歩けるから、やめろ!」と体をよじりながら、抵抗している。

 「だめです。今、ここで離したら何を仕出かすかわかりませんから。先程、説教したばかりなのに、懲りない人だ。もしや、聞いていないな。あーもう、お仕置きが必要だな。」

 「おい!やめろ!誰に向かって言っているんだ!いいから離せ!」

 「ライオネル!聞こえるか!!」と突如、大声で叫び出した。咄嗟にゾーゼフは口を塞ぎ「何してるんだ!」と怒鳴り声を上げる。


 「あっ!父上!大丈夫ですか?ゾーゼフ様を虐めてはいけませんよ!優しくしてあげて下さい!」と聞こえるような声量で返答した。

 「あーわかった。」と呟いて、しょんぼりと肩を落とす。

 「くっくっくっ、あははは。息子に言われて、面目丸潰れだな。」

 「うるさいぞ!ゾーゼフ!はぁー。ほら、さっさと連れて行かんか。」

 クライシスはすんなり諦めて、引き摺られながらダイニングルームに向かって行った。


 「朝から騒がしいわね。」

 遠く離れた場所から、一連の光景を眺めている一人の女性。


 「オーウェン、ほら早く行くわよ。」

 「いきなり現れて、どうなっても知りませんからね。ご自分で対処して下さいよ。」

 「平気よ。問題はないわ。ふふふ。」

 「どうだか……。はぁー。夫婦揃って、朝から手の焼ける人達だ。」

 「あら、主人に対して無礼ですわよ。」

 「あーはいはい、すみませんでした。」

 「ほら、さあ早く行きましょう。遅いわよ。」


 優雅に歩く女性は、明朝にロズウェル国から馬を走らせ、報告の為に駆けつけた。任務は失敗してはいないが、顔はバレたらしい。

 昔からじゃじゃ馬娘と言われていた、マリアンヌが突然来てしまった。


 オーウェンは、これから起こり得る事態に、不安を募らせる。

 「ライオネルは、生きているのは知らないだろう。そして、クライシスはマリアンヌに怒っているだろう。いやいや、誰が喧嘩の仲裁に入るんだ・・・。」とブツブツ呟いていた。


 「ブツブツうるさいわよ。さっさとしなさい!」


 強気でいられるのも、残り僅かであった。



 いつも、いつも遅くなってしまい、申し訳ございません。ストックがなくなり、絞り出しながらなんとか日付け変わる前に間に合いました。

 明日も遅い時間の投稿になると思います。頑張って執筆しますので、読んで頂けたら嬉しいです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ