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32.クライシス総帥との謁見

 今回、長文になっています。読みにくいかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

 重厚感のある鉄製の大きな扉が見えた。

 花と蔦の飾り彫が緻密に施されており、建物を一層際立たせている。

 漸く官邸の正面入口に到着する。馬車が入口の前に停車した。


 「へぇ~。わぁ~。」

 ライオネルは、建物の外観に視線が釘付けとなり、驚きや感動を表す言葉ばかりを口にする。


 「はぁーー。」

 ゴードンは、ずっと変わらないライオネルに、半ば呆れて溜息ばかり吐いていた。

 

 叔父のエドワードが合図すると、扉がゆっくりと開く。

 ノック音と共に馬車のドアが開き、傍にいたエドワードが深々お辞儀をする。ライオネルとゴードンは、馬車から降りて簡単に挨拶を交わした。

 その後、エドワードの案内に従い、邸内へと歩いて行く。

 一緒に同行していたグランド公爵閣下や私兵達は、総帥閣下の命令により邸の外で待機となり、二人だけで官邸内に入る。軍服姿の男性四人が、前方と後方を警護しながら、広い邸内を物々しい雰囲気で移動していた。


 二人は広い応接室に通される。

 「こちらで少々お待ち下さい。」とエドワードは直ぐ部屋をあとにした。


 「ふぅー。」とゴードンが溜息を漏らす。

 「ゴードン、大丈夫か?緊張で疲れただろう。後は、心配いらない。大丈夫だ。」


 ライオネルは、先程までとは明らかに様子が一変していた。妙に落ち着いている様子が何となく気にかかかる。不意に胸騒ぎを感じて、密かにライオネルの行動を警戒する。


 エドワードが応接室に戻って来た。

 ライオネルは、扉の前に立つ叔父の顔をまじまじと見つめる。

 母上に何処となく雰囲気が似ており、温かく懐かしい視線を向けられていた。目には、僅かに涙を浮かべている。

 時折互いに目は合うが、目を見てエドワードの感情や心理を大体察していたライオネルは、あえて内輪話は伏せた。

 エドワードが好意的であるのは、確かではあるが、先ずは目的を果たしてからと考えていた。


 「大変な長旅お疲れ様でした。まずは、ご無事で何よりです。そして、お疲れのところ大変恐縮ですが、待ち切れないお方がお一人いまして、このまま直ぐ謁見となりますが、宜しいでしょうか。」と申し訳なさそうな表情を見せる。


 「こちらは、構いません。」とライオネルが返答した。

 「ありがとうございます。では、ご案内致します。」

 エドワードの後を歩きながら、邸内の奥へと進んで行く。一際大きい両開きの扉が見えてきた。

 「ここかな。」とライオネルが呟く。

 「左様でございます。」とエドワードは扉をノックした。

 「どうぞ、入りたまえ。」と威厳のある低音の太い声が聞こえる。

 聞き覚えのある声に、二人は一瞬首を傾げる。


 大会議室の中へと入る。

 ゴードンは緊張と恐怖で顔面蒼白であったが、ライオネルは思いの外、冷静であり凛とした姿勢で堂々としていた。


 部屋に入った瞬間、突如クレイアス国王に似た青年が、ライオネルに近づいて来る。余りにも素早い動きに、青年の護衛達が叫びながら向かって来てはいるが、全然間に合わない。

 傍にいたエドワードが、咄嗟に大声を出して、ライオネルの前に立ち塞がる。


 「 おやめ下さい‼︎ 」と両手を大きく広げた。

 「どけ!エド!」とエドワードの体を払い除けようと、大きな手を振りかざそうとした。

 しかし、エドワードは怯むことなく、立ち向かおうとした。まさにその時、漸く追いついた護衛達に、あっという間に羽交締めにされて、その場から引き摺り出された。


 「あーー。はぁーー。」とエドワードは溜息を吐きながら意気消沈している。

 ゴードンは、更に顔を青白くさせて今にも倒れそうになっていた。


 「ゴードン、大丈夫か?しっかりしろ。エドワード様、座らせて頂いても宜しいでしょうか?」

 ライオネルはゴードンを支えながら、エドワードに視線を向ける。

 「ああー!私としたことが、気づかずに大変申し訳ございません。急ぎ、椅子をお持ち致しますので、お待ち下さい。」と走り去って行った。

 

 「ゴードン、少しの間、私と一緒に床に腰を下ろそう。」

 二人はその場に一旦座り、深く息を吸い込んで吐いた。ライオネルは、ゴードンの背中を摩る。

 「少し落ち着いたか?驚いたな、あれ程似ているとは……。悪気はないはずだ……。」と極めて冷静なライオネルに、改めて王太子としての品格の高さに驚かされる。

 ゴードンは、ライオネルに介抱されて、すっかり落ち着きを取り戻し、顔色も元通りになっていた。しかし、もう少し好意に甘えたかった。


 「だいぶ良くなってきた。」と覇気のない弱々しい声で応じる。

 「一人で立てるか?」

 ゴードンは、首を横に振った。ライオネルは、流石にこのまま床に座り続けるのは、失礼にあたると思い、ゴードンの顔色が良くなったことを確認して、ゆっくりと支えながら立ち上がった。


 エドワードと軍服姿の男性が、椅子を抱えて小走りで戻って来た。

 「遅くなりまして、すみませんでした。お体はいかがでしょうか。さあさあ、遠慮は要りません。気にせずお座り下さい。」と不安げな顔をしている。ライオネルは、エドワードが心を痛めている様に感じて、不安を募らせる。


 「エドワード様こそ問題ありませんでしょうか?そこまで我々の心配しなくても宜しいですから、先程のお方の元へお戻り下さい。あのお方は……クライシス総帥閣下とお見受けされましたが、間違いないでしょうか。」

 ゴードンは椅子に座らせ、ライオネルは立ったまま真剣な表情で、目の前にいる男性二人を見つめながら話した。


 「ええ、はい。その通りです。お見苦しい所をお見せしてしまい、誠に申し訳ございません。閣下のご無礼をお許し下さい。私とした事が、考えが浅はかであり、軍務長官失格で御座います。此度は大変失礼を致しました。」と深々何度も頭を下げて謝罪をしている。エドワードの傍にいる軍服姿の男性も同様に頭を下げている。


 「まず頭を上げてください。エドワード様は叔父上とお呼びしても宜しいでしょうか。」とにっこり微笑んだ。

 「ええ、是非是非、叔父上でもエドワード、エドでも構いませんので、お好きな様に呼んで下さい。私もライオネルとお呼びしても良いのでしょうか?」と目に涙を浮かべている。

 「はい。愛称のライルでも構いませんので、叔父上のお好きな様に呼んで下さい。漸くお会いする事が出来て、本当に嬉しいです。母上から聞いていた通りのお方です。それに軍務長官様であるとは知りませんでした。母上が知ったら泣いて喜びそうです。此度は、手厚いご歓迎、ご配慮に深くお礼申し上げます。」とライオネルも涙を浮かべながら、深々お辞儀をした後、エドワードと軽く抱擁をした。

 その後、ライオネルもゴードンの隣に腰掛けた。


 そして、笑みを浮かべながら衝撃的な言葉を口にする。


 「父上が拘束されていれば、事が進みませんので、お呼びして頂いても宜しいでしょうか。あっ!父上と呼ぶのは流石に早過ぎますね。大変失礼を致しました。

 あのー叔父上、お聞きしたい事があるのですが、父上は私を抱きしめたくて、あの様な行動をしたのでしょうか?申し訳ない事をしました………。」


 「「「え⁈⁈⁈ 」」」


 その場に居合わせた三人の男性は、目を丸くしたまま、口を開けて呆然としている。


 「くっ、くっ、くっ。」

 ライオネルは、まんまと騙された三人を見ながら、笑いを堪えるのに必死であった。



 次話投稿は、6月21日(火曜日)20時を予定しております。


 毎日投稿が出来ずに、本当に申し訳ありません。これからも、読んでいただけたら嬉しいです。執筆頑張りますので、よろしくお願い致します。

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