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25.謎解き

 遅くなりました。

 大変申し訳ございません。

 

 ライオネルは、馬を操縦している男性に掴まりながら、10年間片時も忘れたことがない謎を紐解こうとしていた。


 前国王のエスバーンは、ライオネルが生まれる前に、キールッシュ帝国人に暗殺される。

 当然ながら現国王も、国王就任当初から暗殺の標的にされていた。


 全ては、エスバーンの残虐で卑劣な恐怖政権が引き金となっていた。


 我が国は、エスバーン政権時代にキールッシュ帝国と争いを起こす。激しい攻防戦により、膠着状態が続いていた。

 その最中、突如エスバーン国王が暗殺される。

 一気に優勢となった帝国軍は、一斉に攻撃を仕掛けてきた。

 しかし、エスバーンの異母弟、すなわちラリーシュシュ辺境伯のライアン閣下率いる辺境伯軍が侵略を阻止した。その後、和平交渉への道筋を立てて、漸く長期化した戦は終わり、両国の和平が成立した。

 メレエナーラ王妃は、キールッシュ帝国から和平交渉成立の証として、クレイアス国王と婚姻を結んだ。王妃の実母は、ロズウェル国出身であり、早くに亡くなっていた。皇帝は、娘であるメレエナーラを気遣って、母親の母国に嫁がせた。



 戦によるロズウェル国の損失は甚大であった。

 未だ立て直しに奮闘している所為で、国内の情勢は悪化の一途を辿っている。

 更に、数年前から腐敗堕落したクレイアス王政が拍車をかけていた。実は、既に財政は破綻していた。事実上、ロズウェル国は崩壊寸前であった。

 クレイアス国王は、玉座に座り、頬杖をついて傍観しているだけであった。

 キールッシュ帝国に再び侵略された場合、ロズウェル国は一瞬にして消滅する。


  

 ライオネルは、自問自答を繰り返し、思案する。

 一人でぶつぶつと呟き始めた。

 独り言にしては、声量が大きいが、男性は気にも留めていない様子であった。


 キールッシュ帝国の戦法や時代背景から考えて、和平の証は帝国側の策略であり、王妃は皇帝より要人達の暗殺を命じられていてもおかしくない。

 身の安全の為にも命令に従い続けてきたのではないだろうか。

 けれど、キールッシュ帝国の前皇帝が毒殺された。ではもう命令には従う必要もないはずだが、何故、闇組織(ベル商会)に関与しているのであろう。

 そして、何故あの日、あの忌々しいドレスを纏い、私の部屋に来たのであろう。

 誰か別の人物に、命令されているのであろうか。

 『青い花と悪魔の鳥』と記されたカード。王妃の仕業ではないのかもしれない。筆跡は王妃に似ていたが、勘違いか。勘違い………。


 ライオネルは、急に頭痛がして、こめかみを手で押した。

 乗っていた馬が方向転換した瞬間、脳裏に()()()()が映る。


 全身が黒くギザギザに塗り潰された女性。気味の悪い笑みで、こちらを見つめている。歪んだ唇に塗られた真っ赤な口紅の色が、黒色の隙間から迫ってくる。


 突然、不安と恐怖が襲いかかる。目をぎゅっと閉じて、手に力が入る。肩で息をしながら、心を落ち着かせる。

 直ぐに落ち着きを取り戻した。男性は、異変に気づいていない。深い溜息が漏れた。


 ふと、俯いていた顔を上げる。その拍子に、過去に夢で見た光景が走馬灯の様に蘇る。


 今までに一度だけ死の危険に直面した出来事がある。

 母親が亡くなった翌日の夜、寝ているところを突然、襲われる。

 犯人は馬乗りになり、首を締めた。エミリアに教わった護身術を使い、危険な瀬戸際でかろうじて一命を取り留める。女性は、苦しむライオネルを睨みつけながら走り去った。

 その後、悪夢にうなされ、不安や恐怖に怯えて、眠れない日々か続いた。度々、侍女のメイラに泣き縋り迷惑をかけていた。

 しかし、ライドが専属の護衛に就任してから、悪夢が嘘の様に消える。

 無意識のうちに、頭の片隅にとある人物に関わる全てを封じ込めたからである。


 (今日はもう無理だ。ライドに聞いてからだ。)

 再び、記憶を封じ込めようとした。

 しかし、あまりにも衝撃が強すぎて、また鮮明に蘇ろうとしていた。再び、頭痛に襲われる。


 違う謎解きに思考を集中させて、気を逸らした。

 ライオネルの一番の謎に手を出す。

 ミドルネームに前国王の名を記した理由である。

 国民はエスバーンと聞く度に、脳裏に焼き付いた記憶を思い出し、恐怖に怯えていた。ライオネル自身も成長していくにつれ、国民と同じ心情であった。

 いつもミドルネームを公表する事を強く拒んだ。

 それは、幾重にも民を想う心優しい計らいであった。


 (父上が名付けた………。父上の子供ではないからなのか。)

 クレイアス国王が、エスバーン前国王を憎み、忌嫌う言葉を何度も聞いていた。

 


 母上が亡くなったあの日ーーー


 『お前は、私の子ではない。』


 ぼそっと呟いた一言が、見るもの全てを灰色に染める。


 父上は、生まれた時から私が嫌いだった。

 だから、自分が一番嫌う名前を付けた。


 父上は、父上ではなくなった。





 私の父親は、一体誰なのだろう。

 ーーー謎は、深まる一方であった。



 次話投稿は、6月9日 22時頃となります。

 よろしくお願い致します。


 6月8日に全話を修正した事になっておりますが、サブタイトルを少し修正しただけですので、気にせず読んで頂けたら嬉しいです。


 ※すみません( i _ i )

 6月9日 22時に次話投稿予定でしたが、まだ途中までしか執筆出来ていなくて……。

 大変申し訳ございません。頑張って、出来る限り早く投稿します。よろしくお願い致します。

 

 

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