24.オーウェンの想い
オーウェン視点です。
投稿して1時間半後に大幅に修正しました。
読み直したら、一部抜けている事に気づいて……。大変申し訳ございません。
今回は、読んでてよくわからない部分が多いかもしれませんが、読んで頂けたら嬉しいです。
ゴードンは、自分が知り得る全てを洗いざらい話した。ただ、たった一つだけは除いて。
一方でオーウェンは、終始、形容しがたい複雑な表情をしながら話を聞いていた。
心情は、表情からは読み取れない。
(どうしたんだろう。いつもと何か違う。)
ゴードンは、オーウェンを怪訝そうな表情で見ていた。
ライオネルから知らされた、俄に信じ難い疑惑には、固く口を閉ざす。
ゴードンは、オーウェンを第二の父として慕っていた。
必ず正当な理由があるに違いない。安易に罪を犯すような人物ではない。何はともあれ、ずっといつまでも味方でいようと心に決めていた。
母親が亡くなった悲しみを救ってくれた恩は、必ずいつか返したい。
今がその時であるとーーーゴードンは、オーウェンを守る為に臨戦態勢に入る。
(よもやここまで知り得ているとは……やはり侮れない。……もっと他にも知っているな。)
オーウェンは、ライオネルの情報量に驚かされていた。
だがしかし、秘密を抱えて人知れず悩み苦しんでいた事情から漸く解放される日が来ると感じ、肩の力が抜けて、少し気が緩んでいた。
いずれ暴かれる大罪。複雑に絡み合う人間関係から生み出された史上最悪の陰謀。
それが故に、事実関係は錯綜し、真実は闇の中に葬られたままである。
首謀者の残忍非道な手口に、弱みを握られた者達は、共謀や共犯の罪を繰り返す。
自ら犠牲となり、亡くなった愛する妻と無実の罪を着せられ、亡くなった親友の妻。
そしてーーー死亡したと記されている、もう一人の女性。
実は、三人の女性の死亡診断書をオーウェンが改竄していた。
家族や仲間を守る為に、決死の覚悟でやむを得ない罪を犯す。
真実が語られる日まで、自分の犯した罪は隠し通すつもりでいた。
家族、仲間達の無念を晴らす為にも、先ずは順当に事を進めて首謀者を誘き出す事に尽力を尽くす。
(エミリアを……娘は、貴様の思い通りにはさせない! 絶対に死なせない! 私の命をかけて守ってみせる‼︎)
オーウェンも娘を守る為に、臨戦態勢に入る。
青い瞳を憎み、狙う黒鳥。再び毒を使うとは、相変わらず小賢しい黒鳥である。
権力を行使して、再び魔の手が忍び寄ろうとしていた。
親友に頼るしか方法はなかった。
エミリアは、首謀者が侵入できない隣国オリビア連合国への亡命を余儀なくされた。
(ライオネルとは……これを機に決別するしかない。当然、娘の覚悟は出来ているが、ライオネルは……。)
オーウェンは、二人が結ばれる日が一生訪れないのは、重々承知していた。
しかし、傍から見ても相思相愛の二人に、心痛が絶えなかった。
ライオネルに、真実を伝えてはいけないと自制心が働く。
世の父親は、嫁ぐ我が子が離れる寂しさから、反対や僅かな抵抗をしているとよく周りから聞いていた。いずれそういう時が、自分にも訪れると待ち構えていた。
でもそうはならなかった。オーウェンは、他人とは違う心情を抱く。
息子のように見守り続けてきたライオネルが、エミリアを選び、結ばれたいと切望している。
申し分ないくらい相応しい相手に選ばれて、本当は心から喜んで、二人を祝福したい気持ちが溢れていた。
しかし、現実は非情で、不条理でしかなかった。
ロズウェル国の裏社会で頂点に君臨するオーウェンは、常に先を見据えていた。
この国には、輝かしい未来は残されていない。
闇に葬られた真実が明かされた時ーーー全てが終わりを迎える。
ロズウェル国は長い歴史に幕を閉じる。
オリビア連合国の親友にロズウェル国の未来を託した。そして、自分はこの10年、陰で親友を支え続けてきた。
遠くない未来、本来成るべき統治者が頂点に君臨する日が訪れる。
それと同時に、エミリアは、存在しない事となる。王国の新しい未来には、呪われた青い瞳は消えるしかない。
母親が亡くなったあの日、自ら志願して諜報員になったエミリア。
諜報員は所詮、影でしか存在しない。輝かしい未来は、最初からない。他人の未来を重ねて、守り生き抜くのが我々の使命である。
諜報員の誓約書に記された一文。
『王族との交際、婚約、婚姻等の男女間の親密な関係全てを固く禁ずる』
過去に、禁じられた愛に溺れて、愛する女性を失った男性が策定した誓約である。
諸悪の根源は、これを機に始まり、今に至る。
彼らは、今の王族と諜報員の関係を無情なものにして、不和を生じさせた。
青い瞳を憎み、諜報員であるグランド一族を恨み続けた。
結局、今も昔も変わらず続いていた。
前国王が崩御しても、何も変わらなかった。変えようとはしなかった。青い瞳は排除され続けた。
オーウェンは、現国王に対する怒りが我慢の限界を越えていた。
長年グランド一族は、国随一の高位貴族でありながら、国民を守る為に、理不尽な王命も忠実に従い続けてきた。それも、もう終わる。
既に、オーウェン率いるグランド一族は、隣国オリビア連合国で諜報員となり活躍していた。
国民に新しい未来を約束する為、ロズウェル国との誓約は破り、絶縁する事を決めた。
ロズウェル国の言い伝えが脳裏に浮かぶ。
呪われた青い瞳の話。紛れもなく捏造した噂話である。
『リアの目ね、おくにをこわすのろいがあるからね、おうじさまとけっこんして、おひめさまにはなれないんだって。』
まだ幼いエミリアが、どこからか聞いた話を口にした。妻と一緒に返す言葉に思案したのを思い出す。
民衆の心に根付いた呪われた青い瞳の話は、この10年でも払拭できなかった。
国民は、青い瞳の人間をまだ忌み嫌っていた。
国民からの反発は避けられない。エミリアは、ライオネルの足枷であった。
潔く身を引かなければならない。
オーウェンは、己の無力さに打ちひしがれる。
どんなに努力を重ねても、子供の願いを叶えてあげられなかった。
誰よりも、ライオネルとエミリアの幸せを願っていた。
無惨にも二人を引き離すかたちで終わろうとしていた。
未来の子供達の為にも、ここで終止符を打たなければいけない。
これでもう全てを終わらせるーーー娘を想う気持ちは、心の中に封じ込めた。
真実が暴かれる時は、もうすぐそこまで迫っていた。
投稿が遅くなりまして、大変申し訳ございません。
明日(6月7日)も22時頃に投稿します。
応援よろしくお願い致します。




