路傍の干しミミズを笑うな
何が言いたいんだこいつは
アスファルトの上で干からびるミミズ。
この時期はよく見かける。
そこかしこに。さっきも見かけたのに、また。
「マヌケだなあ、なんでわざわざ地面から出てきてアチアチのアスファルトで悶え死ぬのか」
干しミミズを笑うな。
干しミミズの何が分かる。
彼らは暗くべたついた地面の中で、光を求めたのだ。
その身が焼かれると知っていても、それでも尚。
峻烈に、衝動に突き動かされ、地面から這い出したのだ。
光を!もっと光を!
この薄暗い生に意味を!
彼らは殉教者である。
君たちは何かに殉じたか。何かのために生きたか。
彼らの薄っぺらくしわくちゃになった骸は、磔刑の聖人と等しい。
干しミミズを笑うな。
私は嗚咽しながら、路傍の干しミミズに手をあわせた。
その尊い死に心を寄せた。
刹那、電撃的啓示。奇跡が生じ、死せる干しミミズの声が私の脳裏に響いた。
干しミミズ曰く。
―― ぃゃ、ぁーしらそんなこと考えてないし。ゥケる(ゎら
なんか間違って出ちゃって、まぢ暑すぎて、やばやばで、死んだみたいな(ゎら ――
「黙れ非国民が!!!貴様反日か!?!?」
私は干しミミズを蹴飛ばした。
完
何が言いたかったんだこいつは