第一話 兄弟で勇者ってありですか?
初投稿作品です。
書きたい作品が頭の中にたくさんあるので、いろいろなジャンル書いてみたいなって思ってます。
ぜひ仲良くしてください!
「兄様!新しい服を頂いたので前の服がいらなくなりました。お古ですが着てみてください!」
村のはずれで隠居しているアイズのもとに、双子の弟のアイルが大きなかごを手に携えてやってきた。アイルはかごからガサゴソと服を取り出して広げてみせた。それはお古とは思えないほど綺麗で、装飾が取れていないどころかほつれ一つ見当たらない。さすが名門貴族だ。感心して眺めていると、はやくはやくとアイルがせかした。双子なだけあって体格は全く一緒。顔も瓜二つで、違うのは性格と、額の傷の位置、そして能力くらいだった。
「よいしょ…。どうかな?」
普段は麻衣を着ている自分には、きちんとした服は少し重く感じる。サイズはもちろんぴったりだった。
「兄様!とても似合ってます!!」
アイルは顔を綻ばせて褒めてきた。隠居生活では人から褒められることはほとんどない。久々に褒められてアイルは分かりやすく照れた。
「この麻衣はだいぶ汚れているので屋敷で洗っておきますね!それと、一個お願いがあるんですけど…」
「なんだ?」
「髪の毛の流し方、変えてみて欲しいって言ったら怒りますか…?」
アイルがこのような聞き方になるのは額の傷にある。同時に産まれたアイズとアイルには、どういうわけか二人とも額に傷があった。アイズには左、アイルには右に。完全に左右対称で、鏡に映ったアイズを母親や乳母でさえアイルと勘違いするのは小さい頃はよくあることだった。額の傷はそれほど悲惨なものではなく刃物で浅く切られたような傷だったが、美形の双子には似つかわしくないという母親の考えで二人は髪を伸ばして、それぞれ額の傷を隠すように髪を流しているのだ。だがアイズは特に傷を気にしていない。いいよと返事して、近くの小川へと向かった。
小川で手を濡らして、少し癖のある金髪をかき上げる。いつも左に流しているので、一度では流れきらなかった。何度か同じ動作をして、ようやく髪は右に流れた。
「どうかな…て、服装どうした?」
振り返ると、アイルはさっきまで自分が着ていた麻衣を着ていた。
「新しい服が今までのに比べて重かったので疲れてしまって、兄様にしか見られないしいいかなと。なんか、自分に会っているみたいです。本当にそっくりですね!」
母親に麻衣を着ているところを見られでもしたら間違いなく説教だというのに、能天気だなぁ。
あ、そうだ…と、アイルも手を濡らして髪を反対に流し始めた。
「何してるんだ?」
「こうすれば兄様にも同じ気持ちを感じていただけるかなぁと。よいしょっと。どうですか?」
本当に自分に会っているみたいだ。とその時____________
「いたぞ!勇者様だ!!」
5人の村人がこちらへと駆けよってくる。
勇者…?あたりを見回しても、俺とアイルの二人しかいない。
村人たちは二人の目の前で止まった。
「探しましたよ、勇者様!」
話しかけられたのは…アイズだった。
「さあ、行きましょう。村長がお待ちです。」
何が起こったかわからずアイルを見る。そして、すべてを理解した。
そこにいたのは麻衣を着た癖のある金髪を左に流した少年、アイズだった。そのアイズは少しあどけなさの残る顔でこぶしを握って、声には出さずにがんばれと口を動かした。
状況が状況だ。村人たちは聞く耳を持たない。勇者になるのは致し方ない。それならば
「いかにも、僕が勇者アイルだ。そしてこちらが従者のアイズ。村長の場所へ案内してくれ!」
アイルを見ると、何が起こったかわからないようなとぼけた顔をしていた。
そして村人たちは二人をはやし立てるのであった。
第一話、楽しんでいただけましたでしょうか。
これからもどんどん書いていくので、アイズとアイル、そしてこの作品、小鳥遊千歌をよろしくお願いします!
また、あまり書き方がわかっていないのでアドバイスなどもあればぜひお願いします!