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箱庭から始まる俺の地獄(ヘル) ~今日から地獄の飼育員ってマジっすか!?~  作者: 白那 又太
~第5章~ 地獄変

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地獄の53丁目 二度目の告白

「禁忌というと……具体的に聞いてもいいの?」


 俺は少しためらいながらもデボラに問うてみた。


「やつらと同じだな。天使と悪魔の子」


 禁忌の子が禁断の恋か。デボラが言う通りならそりゃあ魔力も高まるはずだ。


「父様は上級とはいえ何の変哲もない悪魔なのだがな。母様はそれなりに位の高い天使だったらしい。結局は堕天させられて今は立派に悪魔の仲間入りをしておられる」


 天界と地獄の関係はなんとなくこの前も聞かされたし、お伽噺なんかでもよくある話だから感覚で理解はできるが……。堕天と言うぐらいだからリストラとはまたレベルが違う話なんだろうな。


 暗闇の中、月明かりと花火の光だけがデボラの表情を映し出していたが、心情を推し量るには頼りない輝きだった。


「話ってのはそのこと?」

「ああ、一応危険な奴らも現れたし、どこかで話しておこうとは思っていた」

「その話、知ってるのは?」

「ベルとバラン様だけだな」

「わかった。ありがとう」


 なぜ、お礼を言ったのかはわからない。けど、とても大事なことを聞かせてくれた。そう思ったから自然と口をついて感謝の気持ちを伝えた。キャラウェイさんにも前にそう教えてもらったしな。


「さあ、こんな盛り上がらん話は線香花火と一緒におしまいだ」

「みんなのとこ戻る? それともまだ二人で話す?」

「うむ。戻ろう! でも、この線香花火が消えるまでは……」

「わかった」


 なんだこれ。甘酢っぺぇ。


「ダママとかヴォルってこの先どれぐらい強くなるのかな? 人間界では割と伝説級の生き物なんだけど」

「地獄でもそうはおらん種別だしな。はっきりしたことは分からん。ボックスの影響もどこまで出る事やら」


 なんもわからんという事か。手に負えなくなったらどうしよう。みんなでレベルアップしないと。


 ……ところで、デボラの手に持っている線香花火だが、かれこれ3分は全開でバチバチ光っているように見えるが。気のせいかな。


「あの、デボラさん」

「ん? な、何か?」


 挙動が不審な魔王様に一応、念のために問い質してみた。


「俺の知ってる線香花火と違うんですが」

「そ、そうか?」


 俺の知ってる線香花火はたしか『牡丹』『松葉』『柳』『散り菊』の段階を経て燃え尽きるはずだが、どう見ても『松葉』の威力がおかしい。か細い枝のような火花がパチパチと咲く様子が魅力だったはずだ。俺の目の前で光ってるやつは小規模な雷の様だ。これじゃあ閃光花火だ。


「これホントにあの束からとった?」

「当たり前だろう。いやあ、なかなか終わらんな」


 折しも閃光花火の光でデボラの顔が煌々と照らされていたが、さっきの遠くを見つめるような真顔はどこへやら、ニヤニヤと締まりのない顔へ変化していた。


 表情の変化に気付いたのを悟られたか、急に真顔になったデボラは咳払いをして、こう言い放った。


「キーチロー、線香花火の燃え方は『起承転結』を表しているそうだぞ! 地獄に来た花火職人が語っておった! 今『承』が盛り上がってるところだ!」

「俺達の戦いはこれからだ! ……ってやかましいわ」


 やがて、俺達の箱庭を巡る物語もド派手な『承』を迎える事をこの時の俺達はまだ誰も知らなかった……的な盛り上げ方でいいのかな? ここは。そもそも今『起』なのか?


「でいつになったら終わるのかね? デボラさん」

「できれば、最後の小さな玉のようになる部分はLEDに変えたいと思っている」

「随分と長持ちな事で。でも、物語は終わって初めて『物語』と呼ばれるのですぞ」


 愛情表現が地味で歪でそれこそ人間よりもダママやカブタンを相手にしているような気分になる。


「ネバーエンディングストーリーという物語があるのを我は知っているぞ!」

「あれも物語としては一旦終わるの! さあ、魔法を解いて、戻るよ!」


 しぶしぶデボラが閃光花火を線香花火に戻し、やがてはジジっと音を立てて光の玉が地面にポトリと落ちた。俺の知っている結末だ。


「もっと話してたかったんだがな―」

「いつでもうちに来て存分にお話しください」

「ムードが大切なのだ。むーど、がな。この辺が解らんようでは、人間の女を落とすのはキーチローには難しいかもしれんぞ!」

「へいへい」


 俺はわざと大げさに両手を広げ、分かりましたよと言わんばかりに首を振った。


 デボラと二人、戻ってみると全員和やかに花火を楽しんでいた。最初は人間も変わったことが好きなもんだと半ば馬鹿にしていた様だがいざやってみると多様な進化を遂げた手持ち花火にDANDAN心が惹かれていったようだ。しまいには誰が一番面白く花火を火魔法で再現できるかという遊びに変わり果てていった。


 優勝者は勿論我らが魔王、デボラ。先ほどの閃光花火でエントリーしたようで、僅差でローズの『これがホントのネズミ花火』を破っていた。


「ところで、キャラウェイさんとステビアはこんな暗がりで何を見てるんですか?」

「こ、これは私が元の自分のプライドを捨ててまで手に入れた宝物です!」

「に、人間界の本……うへ、うへへへへへ」


 これはこれで今回の旅を楽しんでいるようなのでそっとして(触れないで)おこう。


 よし、今回の旅はデボラの思い付きだったが、大成功! 海や動物園にも久しぶりに行けたし俺も満足だ。デボラに改めて感謝の気持ちを伝えねば。


「デボラ、今日は楽しかったよ! ありがとう!」


 デボラは満面の笑みで俺に応えてくれた。そして、


「我はな、キーチロー、やはりお前が好きだ。お前といるのが好きだ」


 俺のピュアハートは悪魔に奪われそうになっていた。



 ☆☆☆


「ねぇねぇねぇ、禁忌キッズのお二人さん! フェンリルの捕獲すら失敗してくるって今、どんな気持ちなのかねぇ?」


 長い黒髪の女が挑発的にリヒトとシュテルケに話しかける。


「二度と僕達をそう呼ぶな!」

「あなたは、デボラとバラン様の二人を相手に出来るというのですか?」


 自前なのか盛っているのかやたらに長いまつ毛を上下に揺らし、時に大きく目を見開き、あるいは両手を頬に添え、真っ赤な口紅を引いた唇の中心の穴からはスラスラと相手を貶める言葉が出てくる。


「おお、怖い坊ちゃん達だこと! あのドラメレク様のご子息とは信じられないねぇ! 穢れた天使の血なんか入れるからこんなことになったのかねぇ!」

「貴様……!」

「止めておきなさい、リヒト君」


 今にも女へ向けて魔法を繰り出そうとしているリヒトを制止したのは頭を包帯でグルグル巻きにされたコンフリーであった。


「男ってのは情けないねぇ。そりゃあ、魔王なんて相手にしようとするから怪我したり尻尾撒いて逃げ出したりする羽目になるのさ」


 女の繰り出す正論に皆一様に押し黙ってしまう。


「愛しいドラメレク様に帰って来ていただくためには最も手軽で最も早い手段を取りたいの。解るぅ?」

「お手並み拝見といき魔しょう」

「とは言えフェンリルはどこかに隠されてしまったしとりあえずは氷の方かねぇ。私の当てを探ってみるからあなた達はさっさと代わりの手段を考えておいて欲しいものだねぇ」

「くっ……!」


 女は言いたいことを言い終わると踵を返して立ち去った。


「まあ、せいぜい頑張ってください。ベラドンナさん」


 コンフリーは期待半分、皮肉半分に女の背に向けて応援とも呪いともつかない言葉を吐いた。

ここまで読んでいただきありがとうございますm(_ _)m

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