小ネタa
とある店に電話が鳴った。
「もしもし。こちら、薬局です」
『もしもし?薬局ですか?』
「はい、そうですが、ご要件は?」
『あのー、そちらの店に、マスクはありますか?』
「申し訳ありません。マスクなんですが在庫を切らしております。と、言うのも、昨日の終業後に泥棒が入りまして、盗まれてしまったんです。とても悲しいのですが」
『そうですか。わかりました。それでは』
店主は受話器を置いた。
しかし、すぐに電話が鳴る。
「もしもし。こちら、薬局です」
『もしもし?薬局ですか?』
「……? はい、そうですが、ご要件は?」
『そちらの店に、マスク置いてます?』
「申し訳ありません。マスクの在庫はありません。昨夜、泥棒が入りまして、残念ながら、盗まれてしまって」
『ああ、そうですか。それでは』
店主は受話器を訝しげに置いた。
どうも似たような男性の声。同一人物だろうか。
そして、再び電話が鳴った。
「……もしもし。こちら、薬局です」
『もしもし?薬局ですか?』
「……そうですが」
『マスクは……
同じ男の声だ。
「いい加減にしろよ! 営業妨害のつもりか。何回同じことを言わせれば気が済むんだ!」
それを聞いた相手が受話器から、嬉しそうに喋った。
『いやあ、何度聞いても、昨夜頑張って良かったなあって』