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序章2

山の頂上の岩に寄りかかり、呆けている男子高校生がそこにいた。どうしたらいいのか、どうすれば元の世界に戻れるのか答えの出るはずのない問答をひたすら繰り返していた。


「はぁ..」


もう何度目かわからないため息をつく。寝て起きたら夢だったなんて淡い期待をもって目を閉じるもちっとも眠れる気配はなかった。

ぼけっと座り込んでいると足音が聞こえてきた。誰かがこの斜面を登って来ているようだ。


「人だっ」


足音のする方へ向かおうと立ち上がったが、ふっと軍服の少女の姿が脳裏によぎり、まずは様子を伺うことにした。足音が向かってくる方向と逆に向かい、岩を挟んで身を隠し岩の陰から足音の方を覗く。そもそもここが地球ですらないのなら、登ってくる「何か」が人間ですらないかも知れない。そう考えると途端に恐怖に駆られた。とっさに岩の裏に隠れたが、岩を一周回られたら鉢合わせるあたりここに隠れたのは安直過ぎたかもしれない。

やがて足音は斜面を登りきり、立ち止まった。

おそるおそる足音の正体を岩陰から確認する。

男だ。20代くらいの外国人だろうか。ずいぶんとガタイのいい男だ。

一先ず人間であることに一安心するが、軍服の少女の件もあり、慎重にならなければなるまい。


「とりあえず様子を見るか」


こちら側に回り込まれてしまわないように常に様子を見ようと再び男の位置を確認しようとしたが、いない。先ほどまで男のいた位置には誰もいなかった。


「あれ、どこいった?」


すると頭上から高笑いが聞こえた。

声の方向を見ると先ほどの男が数メートル上から自分目掛けて落ちてくる。


「うわっ」


間一髪で男をかわす。男が落ちて来たというよりはジャンプからのボディプレスといったところだろうか。どちらにしてもまともに喰らったらただじゃすまないだろう。


敵だ。


相手は明確な殺意を持って襲いかかって来ている。逃げなければ..。


「なんなんだよぉ..」


もう嫌だ。もう訳がわからない。

俺は半ベソをかきながら斜面を転げ降りていく。


「うわあぁぁぁああ!!」


叫びながら転げ降りる。また後ろから高笑いが聞こえたと思ったら、男は俺の頭上を通り越し20メートル以上を飛んで俺の前に立ちはだかった。


「嘘だろ..!?」


男のおよそ人間離れしている身体能力は元より、その風貌は人間からかけ離れている。特徴としてはその腕だ。先ほど見た時にはそこまで巨大なものではなかったはずの腕が、今や大木の直径はあろうかという程までの太さをしている。


「逃げっ..」


逃げようとするも、男の早さには敵わずそのバカでかい腕に捕まってしまった。首を掴まれ足が地面から離れる。男は俺に向かって何かを話しているのだが、英語だろうか?日本語ではないので何を言われているのかはわからない。


ゴキッ


頭の後ろの方で鈍い音が鳴ると手足の感覚が無くなった。どうやら首を折られたらしい。だらりと身体が垂れ下がり、俺はそのまま投げ捨てられる。

男はそんな俺を見ることもなく立ち去っていく。


また目の前が暗くなっていった。





ー下降:128




「もう沢山だ!」


首の骨を折られた激痛で目が覚める。

前回、前々回と同じ状況だ。激痛が走った首を触ってみる。折れてはいない。痛みも感じない。

そもそも手足が動く時点で身体は正常なのだろう。

三度目ともなればもう認めるしかない。


俺は確かに死んで、生き返っている。



生き返っているのか、死ねなくなっているのか定かではないが、死んだ時の記憶を持って別の場所で目覚めているのは確かだった。


「今度はどこだ?ここは。」



辺りを見回すと草原のど真ん中だった。自分の知っている限りではモンゴルとかがこういった草原地帯の地域だと思うのだが、やはり決定的に異なるところは地平線の向こうには相変わらず巨大な壁がそびえ立っているところだ。およそ地球では見ることはない異様な光景を眺めていると、元の世界に戻れるのか、かなり不安になってくる。


「せめて話しができる相手を見つけなければ」


今自分が置かれているこの状況を説明出来るだけの情報が欲しい。そのためにもまずは対話をしてくれる人との接触が必要だろう。前々回の軍服の少女、前回の外国人。そのどちらもこちらを見つけると真っ先に襲いかかってきたところをみると次に会う人間も襲いかかってくる可能性が高い。しかもどちらも人間離れした力を持っていた。次に会った人間もそんな力を持っていたら殺される他ないだろう。


「多分逃げられないしな」


考えに耽っているとゴロゴロと雷雲が東の空の方で鳴った。いや、東西南北がわからないから東なのかすらそもそもわからないのだが、とりあえず自分の向いている方向を北だとすると東の空つまりは右手の方角だ。


「ちょっとまて..」


辺り一面の大草原に雷雲。自分の他に遮蔽物はない。このまま雷雲がこちらに流れてきたら雷に打たれてしまう。俺は雷雲とは逆方向へ逃げるように歩きだした。

20分ほど歩いただろうか、願いとは裏腹に雷雲はどんどんこちらへ広がってゆく。早いところこの草原を抜けたいのだが、四方を見渡しても地平線の先に見える壁以外には何も見えない。


「参ったな、これ進んでるのかどうかもわからん」


さらに20分ほど歩いただろうか、ぽつり、ぽつり、と雨が降り始めた。とうとう雷雲に追い付かれてしまったようだ。しかし、目の前に草原以外のものが見えてきた。


「穴、か?いや、崖か。」


突如草原が終わり、大地に穴が空いたような谷に行き当たった。


「グランドキャニオンだったっけ、いやでもあれはアメリカの砂漠地帯だったかな。」


と言っても地平線の果ての壁を見るからにここも窪んだ谷底なのかもしれないが..

しかし、進路に崖があるせいで雷雲から逃げられなくなってしまった。


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