02 そもそも自分に書けるのか
実は私は、自分の文体というものがありません。
文章を書くのは昔から嫌いではなかったので、例えば会社の回覧板だのお知らせの書類だ告書だというのは、溜めずにちゃちゃーっと作る方です。
ここでいうのは、「小説としての」って意味です。
徒然草とか、このエッセイに関して言えば、たぶん素の鳴海の文体に近いんでしょう。でも、この調子でお話は書けません。
それでも最初は見よう見まねで書いてみたんですが、文体が定まらずになんじゃこりゃ、ですよ。
感覚的な話になるんですが、なんかメタル聞いてたらいきなりバラードになって、またメタルに戻って。曲の速度も一定してなくて、読んでてきもーい、と。
対して、昔から妄想は大好きなので、キャラが動かなくて困るってことはありませんでした。
起承転結とか面白さ整合性はともかくとして、この強味があったからこそ、余裕で小説が書けるのだろうなと思います。
ちなみに整合性に関しては、何パターンか妄想して一番よさげなのを選ぶパターンです。
例えば、
(あ)Aがダンジョンに潜る、Bさんがついていく、あー弱いから死にかけるよね、そんで魔法でふっとばしてー→ううん、いまいち。
(い)じゃあBさんがついていかない。Aは一人で頑張るけど、途中で引き返すでしょ。ああ、それいいかも。で、Bと協力してもう一回→保留
(う)Aは一人で潜り、途中でAが引き返すまでは同じ。Bが後をおいかけるけど、途中ですれ違ったらどうなるだろう?→保留
みたいな感じでざっと脳内シミュレートしたあと、(い)(う)のどちらにするかは後から決めてますね。
ちなみに脳内に関しては、わりと細かな背景込みで思い浮かべてます。脳内ですでにアニメやってるレベルです。
ここらへんの詳細はまた後日。順番にいきましょう。
で、私が考えたのが、適当な作家さんの文体をコピーするという方法です。小説一冊買ってきて、それをつまみ食いみたいな読み方をしました。
相手はプロなのですから、文体も最初から最後まで一定のテンポで、安定感があるはずです。
もちろん好みもあります。
星新一さんは、ダメでした。文章は非常に簡素でコピーしやすいようですが、なんか味のない新聞紙をかじっているような印象です。色が白すぎて書きづらい。書いても楽しくない。
向田邦子さんは、逆の意味でダメでした。煮物のように味があり、昔からとても好きな作家さんなのですが。テンポがねじ曲がりすぎていて、うまくコピーできない。不規則なのが味なのです。複雑すぎるのでした。
一番良かったのは、とある海外小説です。というか、海外小説全般が非常に読みやすく、書きやすい。きっと簡潔に淡々と説明していく英語のテンポが、自分に合っていたのでしょう。
一作目を書いていたときは、その小説の本を手放さず持っていました。寝る前に枕元に置き、仕事場にも持っていき。書くときにも、表現に詰まったらページをめくったりとかして。
あとは簡単です。脳内で妄想アニメが繰り広げられているのですから、それを彼の言葉で実況してやるだけです。すぐにでもスラスラ書けますね。
そんなわけで出来上がったのが、「死ね死ね☆マイダーリン」です。旧題は「Future in an oblong box」。(いずれまた変更するかもしれません)
同時期に一人称で書いた作品もあります。「The Disintegrators」というやつです。
「小説家になろう」では一人称が流行りと聞いたので、練習のために書きました。そちらも作り方としては、基本的に同じです。