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碧空の下で 030
やれやれ、やっと日本の大阪北部に着いた。関空から南海電車に乗って、大阪市街を目指していた。泉佐野、泉大津、岸和田、堺と過ぎて行き、大和川を渡ろうとして、突然車掌のような誰か、いや、迷彩柄の服を着ていたから民兵か。そんな人がパスポートを見せろ、と要求してきた。そこが国境となっているのか。民兵曰く、大阪や京都、米原や北陸三県から直江津あたりは西日本が、堺、奈良南部、東海地方は東日本が掌握しているからだという。
あそこまで玲瓏として見えていた、大阪という街が灰色がかった壁により阻まれるなんて。
入国審査が過ぎれば、大阪から電車やバスで茨木に戻った。しかし、生家はもうなかった。強制収容所になっていたのだ。アウシュヴィッツ・ビルケナウ並みの惨劇が、目の前で繰り返されていたということは言うまでもない。
あの日記を渡せば、どうなるのだろう。