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碧空の下で 029

 年末年始の休みに祖父母の元を訪れたジャスティンは、すぐそこにまで迫っている例のイベントに関して考えていた。初めて訪れたヴァンクーヴァーという街は、トロントとはやや異なる。

 そもそも、ジェシカとかアンドリューというのは、英語とフランス語の両方が話せるというが、こちらの方ではあまり珍しいことはない。ケベックなる土地はもう近いから。特に、カナダ版新幹線が出来て以降そうだ。しかし、バンクーバーはフランス語が聞こえることはないが、ジャスティンには聞き慣れた日本語や中国語、韓国語も聞こえてくる。大阪生まれだから、京都なんてすぐそこにあるのだ。

 3日後、全裸サバイバル に関わる一行は、フィンチ中央高校の前に集合した。ほかの9,11,12年生は始業式だが、こちらだけ特別に許可が出た。近くにフィンチ高校というのもあり、前者の方が歴史が浅いが、小規模なので目は行き届くし、仲はどうしても濃くなる。これだってそうだ。

 アンドリューは早速、全員に目隠しをさせて全員をトロント国際空港に連れて行った。パスポートを審査官に見せて、いよいよ日本に向けて飛び立った。

 飛行機の中では、流石に目隠しは外され、食事や睡眠もとれた。眼下には碧空が広がっていた。碧海に、純白の花が咲いていた。

「初めて見た。」

「嘘だろ。」

「ほんと。カナダに来る時だって、東の方、ロシアの方からモントリオールにやってきたのだから、知る由はない。そして、西日本と東日本に日本列島は別れてしまって、今別々の国になっているけど、抗争状態。そしてどちらも国家としての体をなしていない。どちらも自治政府が報道の規制をしてるから、今のところ日本でこのような風景を見られることはまずないんだ。」

「ジャスティン。」

「え。」

「あなたの人生はこんなに悲惨だったの?」

「そうだよ。」

「どんな感じで。」

「日本の大阪で生まれたけれど、観光のガイドブックなんかでよく見るグリコの看板も、梅田の高層ビル群も、ましてや大阪城だって、全て煤塵となって無に帰した。そのようななかで、姉妹とは生き別れて、さらに親や先生、友達も飢餓や熱波や寒波やなんやで、倒れていった。」

「…。」

「こちらの写真を見てほしい。」

そう言うと、ジャスティンは戦争が始まるまでの大阪の姿と、始まってすぐ、命からがら撮った写真を見せて対比させた。

「こんなに空爆があったの。ジャスティンはよく生き残って、カナダまで来れたね。」

「アンドリューとか、ジェシカのおかげだけど。もし日本海を越えず、そのまま太平洋を横断し、カナダに行っていたり、シベリア鉄道の車内でジェシカと違う車両に乗らなかったりしたら、フィンチなんかにはいなかったかもしれない。そう考えると、奇跡だったんだなって思う。」

「ジェシカ、ジャスティンと一緒にカナダ大使館に行ったって本当の話なの?」

「虚偽だったら、今ジャスティンはここにいないよ!パスポート忘れた振りしたけど、懸命に大使館員と交渉してたの。彼が日本から命賭けで逃げてきて、出来るだけ早くカナダに入国することを要求している、と。」

「それだけ度胸あるんだったら、2人がそれぞれのリーダーでいい?」

 反対した人の行方はだれも知らない。アンドリューですら賛成していたのだから。彼の持っていた名簿には、以下が書いてあった。原文のまま記そう。


Male members:Justin, Andrew, David, Matthew, Oliver, Steven

Female members:Jessica, Anna, Chloe, Emma, Zoe, Grace

Staff: Mark, Marine


と書いてあった。

 そのまま就寝したから、あとは覚えていない。しかし、夜の明けないうちに大阪に着いた。入国審査で、ジャスティンだけはかなり猜疑心すら持たれたかのような表情を浮かべられた。





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