碧空の下で 026
今日も動画を編集したり、読書したりするジャスティンはいつもどおりそこにいた。彼が日本から逃れて、たまたま知り合ったジェシカとその弟、アンドリューもいつもどおりの生活をしている。そんな感じに暮らしていると、もう12月25日になり、あと少しで2021年を迎えようとしていた。
「ジャスティン、今年一番の大きな出来事は?」
「そりゃ、カナダに来たこと。で、カナダ人になったこと。」
「それ以外で。流石に大きすぎる。」
「なんやかんやいって、日本の国では戦争が未だに続いている。半年経ったけど、オセロのように目まぐるしく敵・味方が変わってる。昨日までの隣人がいきなり自国に猜疑心持ったりしてんのか知らんから、信用できない。呪詛したり怨嗟の念を持ったりしてんのかな。実際さ、残酷なことに、両親をこのせいで失った。他にも失ったものは多すぎて語れない。日本の友達や美しい自然、足繁く通った学校。で、ジェシカは?」
「ジャスティンと会えたこと。実際、厳密に言うと、アンドリューがお兄ちゃんが欲しいとか私に向かって言ってきた。あのシベリア鉄道の車内にいたとき。その鶴の一声であっさり決まったんだよね。もうそれから半年。こんな形で家族が増えるとは思ってなかった。アンドリュー、あなたは?」
「ケベックに行ったこと。モントリオールとか、オタワはあったけど、あそこに行くとは思ってなかった。まあオリンピックが東京の代替で開かれたから、だけど。それは置いといて、2人とも誕生日なんだね。どちらも2005年12月25日生まれなんだよね。」
「そうだ。まったく同じ日に違う場所で生まれて、違う国の国民として生きてたのに、今や同じ国民だから。」
「そして一つ屋根の下で暮らしてる、ってわけ。」
「まったく同じ日に生まれた、といったら双子かと言われたことあるけど、違うって答えてる。同じJから名前が始まってるし、勘違いされるけど。」
「事実上の家族だけど。」
「なぜか顔立ちも似てる、という。」
「哲学みたい。」
「何故だろう。」