1.談笑と死
そのとき俺は、幼馴染の乃絵と一緒に下校していた。
「和人、明日の放課後、テスト勉強教えてくれない?」
「やだよ。俺だって暇じゃあないんだ。」
「暇じゃないとかいって、どーせ、ゲームやるだけでしょ。だったら可愛い幼馴染の言うことでも聞いておいた方が有効な時間の使い方と言うものよ?」
「うるさいな、俺の双肩には、魔王に脅かされるガルナ王国の命運がかかっているんだ。魔王の城に眠るメリナ姫を俺の熱いキスで起こしてやるのさ。あぁ早く助けてやらないと。」
「うわ、キモ。」
「あぁ!?メリナ姫はキモくなんかない。言っておくが、メリナ姫はお前の100倍は可愛いぞ。彼女の白い太もものために今まで何人の勇者が犠牲になったことか。」
「何とか姫じゃなくてキモいのはあんたよ...」
「ん?なんか言ったか?」
「いや、何でもない。お願い!お姫様を救うついでに、私にもそのご大層な力をちょっとお貸しくださいな。」
俺は他の科目はまるで話しにならないが数学だけはそれなりに優秀で、人に教えるのもうまい。だからテスト前のこの時期だけ俺はクラスみんなの人気者だった。
「まあそこまで言うなら考えてやらんことも…」
そうこう話していると、「歩道上でボール遊びをしている男の子がこっちに近づいて来た」。
この一文を見ただけで大体同じ運命を皆予想できると思う。
そう、それはこんな風な想像。
ボールが車道に転がり、子供がそれを取りに脇目も振らず車道にかけ出す。
そして、トラックがそこに突っ込む。
すぐ近くにいた男子学生が思わず路上の男の子を突き飛ばす。
不快なブレーキの音。
そして近くにいた女子生徒の甲高い悲鳴。
残念ながら、その予想は全部大当たり。
俺はポックリ死んでしまった。