三つ編みの女の子
「ねぇ、やめなよ」
三つ編みの子は振り向いた。
「ワタシに言ってるのそれとも自分に?」
三つ編みの子は力なさげに言った。
私はその見透かしたような物言いに少しカチンときた。しかし実際見透かされてるのだ。お互いやろうとしていることは同じなのだ。どんな気持ちかは、痛いほどわかるだろう。
ここにきてようやく普通の質問が浮かんできた。
「それにしてもどうやって私より先に入ったの」
そうなのだ。鍵はこの手に握られてる。ピッキングでもしたのだろうか?
「そんなのどうだっていいでしょ。それより目的アレれでしょ、理由は何よ?」
またも見透かされた。その上私の質問はスルーされた。
「そんなのどうだっていいでしょ。」
私もスルーしてやった。
「そう、ワタシはねちゃんとした理由と覚悟を持って来たの。」
「何それ私がなんの理由もなく覚悟もないみたいじゃん。私だってそれなりの覚悟と、理由を持って来たはよ!!」
少し強がったかもしれない。理由はあっても覚悟はあまり持ってなかった。
「そうなの。ワタシの理由はね・・・」
やめろ、他人の自殺理由語りとか聞きたくない。そんなの聞いたら私がちっぽけになるじゃないか・・・
「運命の人だったの。」
「え、」
「初恋だとかそういうのではなかったけど、どうしても愛されたかったの。でもそれは叶わなかった。」
(ちょっと待て、今私の目の前の三つ編みのこいつは恋一つで自殺しようとしてるのか?なんという・・・そんな理由で・・・)
私は酷く自分がバカバカしくなるのと同時に怒りが湧いてきた。口から出てきた言葉は、怒りに満ちていたと思う。
「ふざけんな!!」
三つ編みの子はあからさまに驚いた
「そんな理由で私より先に逝こうだなんて私が許さない!もっと生きて新しい運命探せよ!それに・・・ここにはもっとみじめな私がいるんだから。」
三つ編みの子は少し苦笑した後ゆっくりと立ち上がった
「そうね。もう少し生きてもいいかもね。あなたの理由は知らないけど、その口ぶりだとそれなりな理由っぽいはね。じゃあ待ってあげるアナタが逝くまで。それになんか話したら楽になったし、今日は興が覚めちゃったし、帰るね。」
三つ編みの子は少し明るい表情で階段の暗闇に消えてった・・・。
「私も帰るか」
三つ編みの子が消えてしばらくして私も階段を降りてった。体育館からの声はもう聞こえない。代わりに生徒の声が廊下から流れてきてる。もうすぐ放課後だ・・・。