第一話 プロローグのプロローグ
見渡す限りの大草原。
そこに、大の字で寝そべり黄昏れている子供が一人。
「眠い。いい感じに眠い。おやすみなさい」
そう呟いた子供の傍らにはその子供よりもさらに小さな人形のようなものがある。お人形遊びだろうか?
だとすれば、大草原の中一人でお人形遊びをする子供。
なかなかどうしてかわいそうな子供ではある。友達がいないのだろうか?
「なあ、フェル。なんか無性にバカにされたような気がするんだけど?」
口調が荒い少年?である。
少年は人形に話しかけるような程で言葉を漏らした。どうやら、フェルというのはお人形さんの名前のようだ。なんと、少年は傍らの少しおバカそうなお人形さんに名前をつけているようだ。悲しいやつだなww。
すると、どうしたことだろうか。お人形さんは勝手に動き出したのだ。
「マスター。私も同感です。なんなんでしょうか?なかなかに不愉快ですね。喧嘩売ってるんでしょうか?買います?」
「まあ待て、チビ妖精。そう逸ることはない。喧嘩はきちんと売られて辛かった方が楽しいからな」
身の危険を感じたので、これ以上はやめておくとしよう。
さて、そんな少年の傍らには、少年曰く妖精さんと、小さな瓶が一つ。瓶には『魔王様封じ』と子供らしい筆跡で書かれてある。そしてその中には小さな悪魔のような生き物が一匹寝ている。
「おーい、魔王様。そろそろ起きろよ。ぼちぼち例の勘違い勇者君が迎えに来るんだぞ」
小瓶の中の悪魔は、「んぅ?」と、くぐもった声を発する。
「おぉ、もうそんな時間か。いや、久々によく眠れたのぅ。うむ、起きたぞ!」
悪魔は、およそその可愛らしい見た目に反して随分と低い声を出す。ハスキーボイスというやつか?
うぅーん、渋い。
「はっはっは、なぜか随分と気分が良いな。まるで誰かに褒められでもしているかのようだわい。」
「なあ、フェル。何でこいつだけ俺らと違う反応なんだろうな」
「さあ?私に聞かれても困りますね。そんなことより、マスター。そろそろ準備しなくていいんですか?」
「準備?そんなの特にないだろ。俺たちの仕事は、あくまであの勘違い勇者くんのサポートだけだし。それに、必要なものは全部取り出せるようにしてるしな」
少年が手をひらひらさせながらそう言うと、今度は悪魔の方が少年に語りかける。
「それで、わしはどうすればいいのだ、このままでは役に立てそうにないぞ?」
「ああ、大丈夫大丈夫。必要になったら出してやるから。魔王様がもう暴れる気はないのはわかってるけど一応、体裁上は封印ってことにしてるだけだし」
「そうか。で、これが終われば約束通りここから出してくれるのであろうな?」
「ま、一応約束したしな。俺にとっちゃ、魔王様が暴れようがどっちでもいいし。邪魔にさえならなければだけど」
「うむ。わしも自由になれば大魔王を引退する気だしな。あとはそれなりにのんびりと暮らすとするわい。わしとて自分の意思で暴れる気はないからの」
どうやらこのちっさい悪魔は魔王様ということらしい。