第二話:孤独
侑人は息を切らしていた。走って職員室まで来たからだ。息を整えた後、職員室の扉を開け、中に入った。
「失礼しまーす」
そう言って中に入ると、担任の先生の姿があった。担任の先生の名前は春吉桜子。国語の担当だ。
侑人は大会に参加したいことを先生に告げた。先生は、
「申し込みの締切まで時間があります。それまでに12人以上(3人は補欠)の申し込みがあった場合は選抜になりますよ。それでも良いですね?」
と侑人に言った。侑人は、
「もちろんです。絶対に大会に出ます。」
と言い、職員室を後にした。 教室に戻ると、クラスの野球部員が大会(以下クラスマッチと表記)の話をしていた。クラスには野球部員が四人いる。中松、大久保、村多、小村の四人だ。(四人については登場人物についてを参照) 四人はクラスマッチに参加させるメンバーは誰が良いか話し合っていた。
中松
「あと8人だな。誰か野球上手そうな奴いるかいな」
小村
「悠琶はどうだ?」
村多
「三木は?」
…という具合に次々と名前が挙がり、あっという間に12人になった。 その中に侑人の名前は無かった。侑人はまだ12人全員がクラスマッチに参加することを承諾したわけではないので、まだ選抜しなくても自分はクラスマッチに参加できると思っていた。しかし、12人全員が参加を引き受けたのだ。
ある日の帰り、先生が、
「クラスマッチの選手12人丁度申し込みがありました。私は他に参加を希望する生徒がいなければこのまま名簿を提出しようと思いますが、参加を希望する生徒はいませんか?」侑人は何かがおかしいと思った。侑人は職員室で先生にクラスマッチに参加したいと告げた。そのあと12人が申し込んだ。それなら、参加希望者は13人になるはずなのに、どうして先生は12人丁度と言うんだ?
侑人は手を挙げた。先生はそれに気付き、
「あっそうでしたわ。侑人君も希望者でしたね。そしたら希望者が13人になったので選抜を行います。」
教室でざわめきが起こる。
「アイツ、野球出来るのか?」
「あの暇潰し部の侑人がねぇ。きっと試合で足引っ張るだけだよ。あっ選抜で選ばれたらね。ハハハ」
侑人はこのような周りの声よりも先生に忘れられてた事がショックだった。俺は確かに運動は得意じゃない。でも、俺が野球してるとこ見たことあるのは悠琶と三木しかこのクラスにはいない。それでもみんなは俺はスポーツすべてにおいてダメだと思っている。先生にもみんなと同じような気持ちがあったから、忘れていたのだろう。
「選抜は明日の昼休み、高嶋先生のノックを受ける形式で行います。詳しいことは明日説明します。では今日はこれで終わります。さようなら!」
先生はそう言って教室を後にした。
侑人は明日の選抜に備え、その日は早く寝た。夢の中では侑人が友希弥と一緒に手を繋いで公園を歩いていた。