はぐれもの、はずれもの
季節外れのツクツクボウシが鳴いていた
馬鹿だな、こんな時期に羽化したりなんかして
今頃鳴き出したって、聞いてくれるメスももういないだろうに
僕がそうつぶやくと、君は密やかに笑った
けれども、君も僕も、こうしてツクツクボウシの声を聞いているじゃないか
君はそう言って、僕に微笑みかけた
いったいそれに、なんの意味があるんだい?
そうつぶやきながら、僕はそっと顔をそむけた
少なくとも、あの恋の歌は、誰にも聞かれずに消え去っていくということはないんだよ
君は静かにそう告げて
そうして、僕をまっすぐに見てこう告げた
ツクツクボウシ――と
僕はしばらく、声を出すことが出来なかった
けれども、君は、黙って待っていてくれた
だから、僕も告げることが出来た
ツクツクボウシ――と
とても回りくどくて分かりにくい、告白なのかもしれない話