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悪魔の日常

悪魔の世界と聞くと、一体どんなものを想像するだろう。黒い煙が淡々と立ち込める、緑など一切ない世界?それとも、魔王による絶対的な闘争社会?様々な憶測が飛び交うと思うが、実際はそんなに禍々しくはない。魔王は存在しても、特にこれといったことをするわけではない。天使の世界にも言えることだが、誇大妄想という言葉の所以はこういったところにあるのかもしれない。



「はーいみなさん十分後に業務内容の説明会がありますので、遅れないように参加してくださいねー。」


 間延びした声が響くのはとある企業の会議室。事前説明会という入社式の大まかな流れを説明されたが、ほとんどの男性新入社員の耳には到達はしても入ってはいかなかったであろう。なぜなら説明を担当した女性の腹部よりちょっと上に、二つの爆弾が抱えられていたからだ。


 もちろんこれは比喩だ。もしそんな爆弾が実在したら、きっと男の繊細でピュアっピュアなハートが文字通り爆発してしまうだろうから。

 しかして、意外と豊満な胸の持ち主だったなぁ・・・。という男性新入社員達の小さな声をスルーして、大量の人の波は徐々にうねり始めていた。

 この会議室の出入り口は決して多くはない。まるでお約束のように出入り口で混雑が起き始めていた。


 約150人の人間・・・ここでは少し語弊があるが、そんな膨大な数がたった数か所の出入り口に群がったら、そりゃあぐちゃぐちゃに入り乱れるだろう。

 そんなことを予見したのか、いまだにその場から動かない者もちらほら見られる。

 そんな中にあって、特別異彩を放つ青年が一人。


 「はぁ・・・なんでこんな会社に入っちゃったのかなぁ・・・。」


 まださっきの豊満な胸の女性が目の前にいるにもかかわらず、事前説明会にはあまり似つかわしくない独り言を話している青年。この青年が異彩を放っているのだが、それはこの独り言のせいではない。

 いやまあこの独り言も結構な破壊力は持っていると思う。目の前の豊満な胸の女性の持つ爆弾と同じくらいの破壊力は兼ね備えているだろう。

 

 「なんだって天使とペアにならなきゃいけないんだろう・・・。天使ってすごくキラキラしたオーラを持ってるって聞いてるぞ。そんなのまともに浴びたらきっと俺消滅しちゃうよ・・・。」

  

 どうやらこの青年は独り言が癖になっているらしい。心の声がついつい漏れてしまっている。

 カツカツ・・・。独特な擬音が近くに迫ってきている。ぱっと顔を上げた青年の目の前には、二つの爆弾を持つ女性がふんぞり返っていた。

 

 「嫌なら別に帰ってもらってもいーのよー?あなたの代わりなんていくらでもいるんだからねぇ?」

 

 「いや、あの・・・働くのが嫌とか、そういうことじゃないんです。御社の業務内容には非常に感銘を受けており・・・」

 

 「あのさぁ面接やってるんじゃないんだけどー・・・。あっもうすぐ時間よ。早く移動してねー。」

 

 青年はたじたじといった具合だ。女性側としてはただからかっただけなのだろうが、社会の機敏がわかっていない新入社員には少し厳しすぎたのだろう。


 ふと出入り口を見ると、すでに大半の新入社員は移動しており、混雑を避けた数人もほとんど会議室にはいない。さっきまで堅苦しいと思っていた会議室もやけに広く感じる。そして、同時にあの堅苦しい連中のなかに再び戻るのが嫌だとも思ってしまう。


 青年は会議室を出ると、一階上で始まる業務内容の説明会に参加すべく、人の波に自ら飛び込む。




「はぁ・・・いつになったら昇格できるのかなぁ・・・」


 何とも頼りない独り言を漏らしたのは、やっぱりあの青年。ついこの前高校を卒業したような若々しさを持っており、なお情けなさが際立っている。

 黒のジャケットを羽織ったラフな風貌、ちゃんと見ればそこまで悪い顔をしているわけではないのだが、いかんせん前髪が長くよく顔が見えない。黒髪なので、見た感じまっくろだ。


 青年の近くには誰もいない。薄暗い公園に一人ブランコに腰掛ける青年は、つい先ほどまで社畜として勤労に勤しんでいた。


 先日の説明会からすでに二週間。なんやかんやで振り回され、希望する部署のアンケートでも、自分にできる仕事があるならどこでも構いません。という、ある意味挑戦的な回答を差し出した青年は、十年に一人の逸材の容疑をかけられまたもやたらいまわしにされた挙句、結局そうでもなかったみたいな空気を作り出した罰として、半分いやがらせで実働部隊に配属された過去を持つ。

 過去といってもつい十日前のこと。他の新入社員の平均年齢よりも三歳ほど年上なので、たった数十分で終わる新人研修の実験台をすべてやらされた。これほど自分の年齢を呪ったことはない。


 どうでもいいが、彼は人間ではない。なぜならその背中には黒い翼があり、尾てい骨からは黒い特徴的な尻尾が生えているからだ。


 そう、悪魔である。


 悪の召使い。魔王にその命を捧げ、人間を騙し契約を結び、人間を堕落させる。ソロモン七十二柱というのもあり、非常に人間と密接な関係にある。

 ・・・というのは、人間側の知識であり、彼ら悪魔のことを真に指しているわけではない。百聞は一見に如かずというが、彼ら悪魔ほど可哀想な種族はほかにいない。神様の勝手な要求で生み出された存在であり、その大きな役目も天使の善性を証明するための、都合のいい悪役という不名誉なものだ。


 しかし、それでも悪魔は存在し、自分たちの仕事を毎日一所懸命こなしているのだ。決してご都合主義の代名詞にはなりたくないのだ。


 「あっもうこんな時間だ。帰ってご飯作らないと。」


 もう日がだいぶ落ちており、人通りは皆無だった。ブロック塀の影でまっくらな住宅街を、自宅に向けて歩いていく。街頭が等間隔で並んでいるのが救いだ。

 パタ・・・彼の胸ポケットから何かが落ちた。音からして軽いものであることは予想がつくが、目を向けると、それはIDパスだった。


 ハクマ。そこには彼の名前と、彼の働く会社の名前、部署がかかれていた。


 人類お悩み解決センター。最近徐々に人気が出始めている会社で、魔界の職業では唯一魔界外との接触が必要な仕事である。そのため人気になりつつあるのだが、魔王城関係の仕事が常にトップを占める魔界において、いくら公務員的な扱いをされても決して好きな職業第一にはなれない宿命の、ちょっとかわいそうな職業でもある。


 IDパスに実働部隊と書いてある通り、ハクマは実働部隊で働いており、すでに人間界に行ったことはあるが、そんなに活躍はしていない。

 ハクマはIDパスを拾うと、とっさに吹いた寒風にぶるっと体を震わせた。もう季節は十一月を迎えており、四季が存在する魔界にとっては、冬支度をする季節に突入していた。かくいうハクマも来る冬に向けて、暖房器具を買うために、仕事終わりに家電量販店に向かったのだが、どの商品も新入社員のハクマにはとてもじゃないが手が出せないものばかりだったのだ。そのため公園で一人寂しげな声を漏らしていたのだが・・・ 


 「うぅ・・・ぐすっ・・・」


 泣き声・・・?何処から聞こえたのかはわからないが、近くで誰かが泣いている。声からして子供だろうが、声がかすかすぎて性別までは分からない。

 ハクマはとっさにあたりを確認するが、日が落ちていることもあり、あまり情報が入ってこない。


 声はいまだ聞こえているが、少しずつ遠くなっている。おそらく移動しているのだろう。街頭を頼りにしてあたりを探すが、なかなか見つからない。


 「はっ・・・はっ・・・どこだ・・・?」


 ハクマはあまり運動が得意なほうではないので、すぐに息が上がってしまう。だが、その足を止めることは無く、少し範囲を広げて改めて探す。


 「うぅ・・・ママ・・・どこ・・・?」


 少しずつではあるが近づいている。より声が鮮明になっている。なぜ悪魔がこんなことのために動くのかと言われれば、それはズバリ、「理解不能」としか言いようがない。そもそもこんなことのために動く悪魔は少ない。だって悪魔は悪魔なのだから、悪性の象徴なのだから。


 しかし、それでもハクマは探すことをやめない。別に心の中で葛藤しているわけではなくこれが正しいと思ってやっているわけでもなく、ただ無意識に行動を起こしているだけなのだから。

 まるで悪魔らしくない。さっきから聞こえている声は、おそらく女の子だろう。きっと迷子で母親を探しているのだ。普通、悪魔はこんな事には関与しない。自己中心的な、悪性の象徴である悪魔にとって、泣き声はむしろ喜びを上げて聞き惚れるぐらいのほうがまだそれらしい。実際そんな悪魔も少数派だろうが、悪魔らしさを追求すれば、そのほうが自然であることには変わりはない。

 だが、ハクマはそんな悪魔の中にあっても、自分の行動に迷いはない。だからこそ・・・


 「やっと見つけた・・・」


 「うぅ・・・誰・・・おにいちゃん?」


 ハクマのいた位置からちょうど反対側の路地の奥で見つけることが出来たのは、予想通り女の子だった。年齢は十歳くらいと思われるが、暗くてよく見えない。


 「泣いてる声がしたから来たんだけど、お母さん、見つからないの?」


 「うん・・・ママとはぐれちゃったの・・・どこにいるかわからないの。」


 後半声が崩れかかってまた泣き出しそうになるのが分かる。そうとう歩いたのだろう。


 「よかったら、一緒に探してあげよっか?」


 「え・・・いいの?」


 「うん。お兄ちゃん暇だから、一緒に探してあげるよ。一緒においで。」


 手を差し伸べるハクマの手を、暗闇から伸びた手が掴む。暗闇から現れたのは、かわいいという言葉がびしっとハマること間違いなしの、美少女だった。

 服は所々汚れており、かなりの時間探していたことが伺える。ハクマは携帯を取り出すと、とある場所へと電話をかける。


 「あの、すみません。迷子の女の子を見つけたんですけど、今からそちらへ行っても大丈夫ですか?はい。わかりました。」


 すぐに電話を切り、いこう。と手を引っ張るハクマ。向かう先はもちろん、迷子センターだ。

 いまどきは迷子の子供と一緒になって街をひた走る、なんてことはせず、迷子センターに連絡してそこまで送ればすべて解決する世の中なのだ。まあ、そんなことする悪魔がほぼ存在しないことも魔界の社会問題として取り上げられているのも事実なわけだが。


 迷子センターは意外と近くにある。なぜハクマがそんなことを知っているかと言うと、ハクマは今までで迷子を五人ほど迷子センターに届けた実績があるからだ。そのせいで迷子センターの受付のお姉さんに顔と名前を憶えられてしまい、半分顔パスみたいな状況になってしまっている。受付のお姉さんと仲良くできる可能性があるので意外といいのかもしれないが、ハクマは別段気にしているそぶりはないのだった。


 ハクマがいた公園の通りを大通りに抜ける形で曲がると、ひときわ光を漏らす建物が目につく。外が暗いので余計に目立っているこの建物が、迷子センターだ。


見た目は西洋風の宮殿だが、所々に魔界特有の突起が付けられている。魔界の建物はそのほとんどにこの突起が付けられている。いかにも魔界らしいが、単に「魔界っぽさ」を演出するために、魔王の命令で付けられたものであるのは、言ってはいけない暗黙の了解。

 ハクマは女の子を連れてその扉をたたくが、一回目のノックの瞬間に扉が内側に勢いよく開き、二回目のノックを見事に空振りしたハクマは、女の子の前でいかにも無様に転んでしまった。


 「いてて・・・なん・・・で?」


 扉の前には女性が仁王立ちしていた。手にはファイルを持っており、いかにも事務職ですよと言わんばかりである。


 「フフフ・・・私の予想力は魔王様の千里眼の五万倍の力を持っている!ハクマくんが来ることを予知し、一時間前から扉の前でスタンばってた甲斐があったわ!」


 もはや悪寒すら感じさせるこの女性が、例の受付のお姉さんだ。茶髪のショートヘアーが似合う、ちょっとグラマラスなラインを持ち合わせておきながら、やることなすことはすべて子供のような、反則技の塊のような女性である。

 迷子の女の子は目の前で起きたことを理解するのに時間がかかっているようだった。主に受付のお姉さんに圧倒されているだけなのだが、目を見開いてびっくり仰天な顔をしている。


 「あの、さっき連絡したんですけど、もしかしてそれで待ち伏せを?」


 「待ち伏せなんてしてないわよ!大体ハクマくんが連絡くれたのって、つい十分前くらいでしょ?私はここで一時間も前からいたんだからね!」


 さすが頭はいいのに馬鹿を体現するお姉さんである。そのほうがより気色悪いことに気づいていない。そもそも、受付のお姉さんは三日でローテーションし、迷子センターの内部事務職と掛け持ちしているはずなのに、ハクマが訪れるときはいつもこのお姉さんなのだ。もはや意図的なものがあるとしか思えない。


 「あっ、それでその子が迷子ね。今親御さんから連絡が来ていないか調べるから、ちょっとそこらへんに座って待っててね。」


 きっちり公私は分けるタイプかもしれないと思うハクマ。だったら仕事場ではプライベートな面を出すなと言いたいハクマ。実際言えないから心の声が漏れてしまうのだった。


 「ね、ねぇ・・・お兄ちゃん、あのお姉ちゃんは大丈夫なの・・・?」


 十歳くらいの美少女にまで心配されている!?受け付けのお姉さんらしいといえばその通りだが、世も末、世紀末感がさらに強まった気がする。そのうち世紀末救世主とかに転職とかしそうな勢い。

 心配しないで。と言っておいたが、あんな感じでもなんだかんだ生きていけるのであれば、あんな生き方も案外悪くもないのかもしれない。まあ、それをこの迷子美少女に教えるつもりはないのだが。


・・・それにしても、この子は何で迷子になったのだろう。迷ったからというのは当たり前だが、だからといってあの時間に迷子と言うのはいささか不思議な気持ちにならざるを得ない。最近の魔界は治安があまり良くなく、日が沈むころに出歩っている悪魔などあまり見かけないものなのだが。

 なんか悪魔っぽくないとか思っているかもしれないが、実際悪魔などそんなものである。妄想力にばかり頼っていると、案外現物を見たときに拍子抜けしてしまうような、そんな気の抜け方に似ている。


 「ねえお兄ちゃん。助けてくれておりがとね!」


 いきなりお礼を言われてちょっと照れてしまう。お礼を言われるなんて実に何年ぶりだろうと頭を巡らすと、答えが出てこないところが悲しい。

 しかし、この子の笑顔を初めてみた気がする。まあ考えれば、迷子で不安いっぱいの時にいきなり現れた謎のお兄ちゃんに連れまわされるという・・・言い回しを変えるだけでとてもブラックでダークサイドな感じになるのが恐ろしいが、そんな状況で笑顔など零れるはずもない。やっと今安心できたのだろう。動きが若干俊敏になっている。これはもうメタルスライム並み。


 ぽん。え・・・

 ぽんというのはハクマが出した効果音。そしてえ・・・というのはその行為によって女の子が上げた声だった。

 状況を整理すると、ハクマが手をぽんと女の子の頭に置き、それに対し女の子がえ・・・と反応したのだった。


 女の子はびっくりしている。ハクマもびっくりしている。だって無意識同士のコンタクトなんて、どっちが早く気付くかの勝負みたいなものだ。そこには善悪も優位性も何もない。そこにはあるのはただただ、驚き。そしてそれを第三者に見られた暁には、あらぬ疑いをかけられても仕方がない。だって無意識なんだもん。


 「あらぁ~ハクマ君が女の子に手ぇ出してるぅ~・・・!」


 このタイミングでなぜスポーンするんだお姉さん!というか、受付のお姉さんキャラ崩壊を起こしている!?てか手を乗っけるくらいならまだセーフだろう!いやなにがアウトでなにがセーフなのかは知らないけども!知りたくないけども! 


 「い、いや!いやいやいや!これは無意識の産物でして!というかこれはまだ許容範囲内なのでは?てかあんたこれ以上のインパクトいっつも俺に畳みかけてるだろ!」


 こいつこそが一番のキャラ崩壊を起こしている。実際今までのハクマがオフモードだったというのもあるのだが、土壇場のアドリブ力には定評のあるハクマである。こんな場合など切り抜けられないわけがないのだ!


 「ほほう・・ほほ~ん!ハクマ君はあたしというものがありながらこんなかわいげ満載の女の子に手を出しちゃうような外道だったなんてね!!失望だわ失望ですよ失望したよ失望しろこの野郎!」


 「私と言うものはこの世には存在しない!てか後半言ってることめちゃくちゃでもはやこれは話し合いでは解決しないな!うんそうだその通りだ!ということで俺はこの子をここに預けて家路にでもつこうかな!」 


 話のテンポの速さに乗っかって帰ろうとするハクマ。しかし、それを許すほど受付のお姉さんは甘くはない。世界が滅ぶ寸前で、その手に世界の命運が託されているときですら、目的のためならば世界を見捨てるような人第一位こと受付のお姉さんである。万が一の状況ですら、金棒を振ってジャズでも聞きながら追いかけまわすこと間違いなしだ。え?例えが意味わからない?だって意味わからないのが受付のお姉さんなのだから仕方がない。


 「でーーーーーーん!!!!!」


 ハクマの前に立ちはだかる受付のお姉さん。とても顔が引きっつっており、この話の展開には余裕でついてくるのに、女の子と二人っきりになったらどうすればいいのか分からないからいかないで!と言う感じだ。


 「お・・・お姉さん・・・!そこをどくんだ!俺は明日も仕事がある。そのために必要な休養を取らなければいけないんだ!お姉さんだって俺が過労でぶっ倒れたら困るだろっ!?」


 「ふん!ハクマ君がぶっ倒れたら私が看病できるっていう利点があるのを忘れないで貰いたいわ!それこそ根掘り葉掘りハクマ君のいろんなところを・・・ヘヘッ・・・へへへ・・・。」


 「おい!!子供の前で変なことを言うな変態女子!!ていうかあんたに人の看病が出来るような家庭スキルはないだろ独身女!!」


 ピシッ!!・・・

 その瞬間空気が凍り付いた。リアルに気温が何度か下がったのかと思うほど、受け付けのある玄関ホールは冷え切った。

 ガタンッ!という音をあげたのは、受け付けカウンターの奥のドアだった。その奥では、(ご愁傷様・・・!)という、日替わりで受付業務をこなしているのであろう別のお姉さんのひきつった困り顔が見え隠れするのだった。


 「あたふた・・・あたふた・・」


 女の子は場の空気が変わったことに気づいていない。空気を読め!とはとてもじゃないが言えない年齢である。


 「・・・ハクマ君・・・」


 「はっ・・・はい・・・!」


 「早く謝って・・・?」


 「ごめんなさい。」


 スライディング土下座・・・。初めて見た・・・。

 図らずも、年上のお姉さんのダークサイドを垣間見たハクマであるのだった。

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