異世界は突然に
気付くと茶色で小さな凸凹がある知らない天井が見えた。
周りをぼんやりと見回すと四角く、天井と同じような壁がある部屋で、木でできた机と椅子、そして自分が寝ていたこれまた木でできたベッドしかない。
「あれ?……ここどこだ?」
確か居酒屋に向かう途中だったはずだ。
そんで電話来て携帯落としたんだった。
探してたらすげー音と衝撃で…………。
……えっ?もしかして……死んだ?
いやいや、まてまて!病院かもしれないじゃないか!
もう一度周りを見渡してみてわかった。
窓も扉もねーじゃねーか!あれか?リアル脱出ゲームか何かか?……いや、そんな事じゃなくて!
これってヤバくね?出れそうに無い上に、ここがどこかすら分からない。
こんなとこで一生過ごすのか?そんなの嫌だ!第一俺は……ん?
ふと机に目を向けると何かがあることに気付いた。
自分がどうなったのか、その事を考え半ば絶望しながら机に向かい、椅子に座って何かを確認……するまでもなく紙切れと本だとわかった。
暗い顔をしながら、まずは紙切れから見てみるかと紙切れを手に取り、死んだ魚のような目で書かれている文字を見る。
『あなた達は死にました。ご苦労様です。
そしてあなた達にはオスタージルと言う世界に転生して頂きました。この世界は所謂、剣と魔法のファンタジーな世界、と認識して下さい。
あなた達にやっていただく事は1つ。ダンジョンを経営し、人類の敵になっていただきます。
ダンジョンについてはお手元の本にて確認して下さい。
では、御健闘を御祈りしております。』
なんだこの腹立つ紙切れは!
死んだ事はこの際割り切ろう。薄々分かってたしな。
だが!ご苦労様ですはねーだろ!ふざけてんのか!?
……よし、落ち着け。クールだ。クールに行こう。
まず手紙?の内容を分析してみようか。
あなた達って事は俺以外にも似たような状況の奴らが居るって事だよな。そんで皆死んでると。
何人居るか解らないし、敵か味方かも解らない。
そもそも会えるかどうかも解らないし、これはいいか。
次にオスタージルって所に転生したらしいけど、周りは茶色の壁でどんなところかさっぱりだ。
少し……すこーし憧れてた異世界で悪役とかなんの嫌がらせだ?
まぁいつか出れるだろうし暫く辛抱するかぁ。
最後はダンジョンだけどさっぱりわからん。
本に書いてるから見た方が早いな。
俺は早速手紙?を置いて本を手に取る。
表紙はくすんだ赤色をしていて何も書いていない。
本を開いて内容を確認していく。
要約すると
今後はダンジョンマスターとなって生きていく
マスターの死でダンジョンと創作したもの全てが消滅
ダンジョンや魔物、罠はPと呼ばれるもので創作
ダンジョンにはレベルがあり、経験値が一定値に達するとレベルが上がり、レベルが上がると様々な恩恵がある
ダンジョンレベル=自分のレベル
などか書いてあった。がちょっと説明足りなくないか?
例えば、ダンジョンレベルが上がった後の恩恵とか何あるのか記載がない。
更には、Pや経験値の獲得方法も記載がない。
自分で探せってか?説明が少なすぎる!大体ダンジョン作るにしたって入り口とかどうすればいんだよ。
ここは地下なのか?それとも山とかの中腹か?何処に向かって作ればいいのかすらわからん!
それ以前にダンジョンって手で掘るのか?道具すらねーぞ!
それにPってので作るんじゃ無かったのか?まさか、掘ると消費って事なのか?
それに魔物も生活用品もどこで買うんだ?リストとかあっても買い方がわからん。
リストに触ってみたし、声にも出してみたが何も反応がない。
バカみてーじゃねーか!
まさかP持ってないとか?出れない上にP無かったら詰みじゃねーか!
クソッ!こんな状況じゃふて寝すらできねぇ。
本でも読み返してみるか?見落としがあるかもしれないし。
あれから結構な時間がたった、と思う。
読み返してみたけど何も見つけられず、4回位読み返して飽きた。
それから部屋の中を調べたけど分かったことは壁が土で出来てることと、4m四方の部屋って事くらい。
そこそこ明るいけど光源は分からなかった。
掘ってみたけど固すぎて全然ダメ。
多分道具あっても無理じゃないか?
今はやることも無く途方に暮れてる。
本を読み返してから体感では3時間位だけど腹も空かないからそんなに建ってないのかな?
そもそも何で飛ばされたんだ?
何か目的があるのだろうか?
一体誰が飛ばしたのだろう?
神ってやつか?
それに俺は帰れるのか?
……いや、死んだらしいし帰れないな。
あっ!あいつらの話って、なんだったのかな?
そんな事を考えて、段々と切なくなっていると、目の前に突然半透明な画面が出てきた。
「うお!……なんだこれ?」
突然現れた画面には『チュートリアル』とでかでかと書かれていた。
こんな物があるなら早く出せよ……と思いながらも画面に目を通していく。