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出禁にしたい隣人は、昔泣いていた少女でした

※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。

※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。

早朝。


テレビ局へ向かうため、ノアは駐車場に立っていた。


「ミツキちゃん、今日もよろしく」


「お願いしますね、ノア」


真田は笑顔で車の鍵を開ける。


ノアが助手席に乗り込もうとした、そのとき。


「アタシも行くー!」


聞き覚えのある声が響いた。


ノアは目を閉じる。


「……ミツキちゃん、早く車出して」


「え? 誰ですか?」


後部座席のドアが勢いよく開き、イヴが当然のように乗り込んできた。


「おはよ金髪」


「帰れ」


「やだ」


即答だった。


真田は冷静に尋ねる。


「関係者の方ですか?」


「不審者」


「ちょっと!?」


ノアは深いため息をついた。


「……ちょっと待ってて」


そう言ってアパートへ戻り、数分後にニコを連れて戻ってきた。


「イヴちゃん!?」


「えへへ、ついてきちゃった」


イヴが勝ち誇る。


ノアは淡々と告げた。


「収録に行く。ニコ、こいつを見張っててくれ」


「う、うん……」


「アタシが何かするわけないでしょ!」


「うるさい」


車は発進した。


――テレビ局。


教育番組のスタジオは、明るい色で彩られていた。


カラフルなセット。

元気いっぱいの子ども達。


ノアはさっきまでの無愛想さが嘘のように、柔らかな笑顔でステージに立った。


「みんなー、元気?」


「はーい!」


音楽が流れる。


一緒に歌い、踊り、手拍子をする。


子どもが転びそうになればさっと支え、

泣きそうになれば目線を合わせて笑う。


「大丈夫だよ」


自然とこぼれた言葉だった。


それを見て、イヴは息を呑む。


――思い出す。


昔、施設にいた頃のこと。


毎日が怖くて震えていた自分。


夜中に泣いて、布団を被っていた。


そんな自分たちの前に、傷だらけで帰ってきても、いつも笑っていた少年がいた。


『大丈夫だよ』


そう言って、頭を撫でてくれた。


自分だって子どもなのに。


誰よりも強がって、誰よりも優しくて。


イヴの視界が滲み、顔が少し赤くなる。


「……ばか」


小さく呟いた。


隣でニコがそっとイヴの手を握る。


イヴは驚いてニコを見る。


ニコは優しく微笑んだ。


「ノア君、変わらないね」


イヴは黙って頷いた。


二人は自然と体を寄せ合った。


ステージの上では、ノアが子ども達に囲まれて笑っている。


あの頃と、同じ顔だった。


収録後。


喫煙所。


ノアはいつものようにタバコに火をつけた。


深く吸い込む。


「……うま」


ふと視線を向けると、少し離れた場所でニコとイヴが手を繋いで話していた。


イヴはまだ少し目が赤く、ニコは優しく笑っている。


ノアは煙を吐き出しながら、小さく笑った。


「……変わらないな」


誰に言うでもなく呟くと、煙は空へと溶けていった。



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