表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/102

たまたま隣に引っ越しただけ(嘘)

※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。

※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。

あの飲み会から数日。


イヴは、店に来なかった。


カツン、と響くはずのヒールの音もない。


ヒロはカウンターを拭きながら、ふと口を開いた。


「……せっかくの客だったのに、良かったのか?」


「出禁にする手間が省けた」


ノアは即答した。


「おいおい」


ヒロは苦笑する。


ニコは少し寂しそうに窓の外を見ていた。


そして、その夜。


アパートに帰宅し、リビングでそれぞれくつろいでいた時だった。


ピンポーン。


玄関のチャイムが鳴る。


「はーい」


ニコが立ち上がろうとした瞬間、インターホン越しに聞き覚えのある声がした。


『隣に引っ越してきましたー』


――嫌な予感しかしない。


ノアは無言で玄関へ向かい、ドアノブに手をかけた。


ガチャ。


扉を開けると、そこに立っていたのは――


全身パンクファッションのイヴだった。


どや顔である。


「よ」


バタン。


ノアは即座に扉を閉めた。


「ちょっ!!」


外からドンドンドンと扉を叩く音が響く。


「開けろ金髪!!」


騒音にサクラが慌てて廊下に顔を出した。


「ご近所迷惑になりますから!」


仕方なく扉を開けると、イヴは遠慮なく部屋へドカドカと入ってきた。


「おじゃまー」


「帰れ」


「帰らない」


即答だった。


ノアはイライラしながら窓際へ向かい、貴重なタバコに火をつける。


深く煙を吸い込み――その前に、イヴが仁王立ちで立ちはだかった。


腕を組み、ノアを睨む。


「金髪」


「……なに」


「ちゃんと責任とってよね!」


部屋が一瞬、静止した。


ヒロが「は?」と声を漏らし、ニコも「え?」と首を傾げる。


ユイは小声で「展開早すぎない?」と呟いた。


ノアは煙を吐き出す。


「……何の責任?」


「この前のやつに決まってるでしょ!」


「?」


イヴの顔が真っ赤になる。


「なんで覚えてないの!!?」


ノアは面倒くさそうに目を細めた。


「ケンカを売ったのはそっちだし、顔を近づけただけ」


「だからって、あんなの反則でしょ……!」


語尾は少し弱い。


ヒロは頭を抱えた。


「説明を求む」


イヴは深呼吸してから言った。


「……アタシ、隣に引っ越してきたから」


「聞いた」


「だから!」


ビシッとノアを指差す。


「逃げられないってこと!」


「逃げる予定だった」


「最低!」


ノアは再び煙を吐く。


「ヒロ、こいつ出禁にしよう」


「家は出禁にできねぇよ」


「壁壊して向こう側に戻すか」


「犯罪だ」


ニコがおずおずと口を開いた。


「イヴちゃん、どうして隣に?」


一瞬、イヴの目が揺れた。


「……別に。たまたま空いてただけ」


明らかに嘘だった。


ユイがニヤニヤしながら言う。


「へぇ〜、“たまたま”ねぇ〜」


「うるさい!」


ノアは貴重なタバコを消し、イヴの前に立った。


「責任って、何のことだ」


イヴは視線を逸らし、小さく答える。


「……アタシを、無視すんなってこと……」


一瞬、空気が変わった。


ヒロがわざとらしく咳払いする。


「とりあえず騒ぐな。近所迷惑だ」


サクラも頷いた。


「まずは座って話しましょう」


イヴは渋々ソファに座る。


ノアは少し離れた位置に腰を下ろした。


距離はある。


それでも、同じ空間だった。


ユイが楽しそうに呟く。


「隣人ラブコメ、開幕だね」


ヒロは天井を見上げた。


「……俺の家、いつから舞台になったんだ?」


こうして。


出禁寸前のパンク少女は、壁一枚を隔てた隣人になったのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ