やり手社長からの宿題とアンサー
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
借金が消えたあと、ノアは少しだけ変わった。
必死さが消えた、と言えばいいのかもしれない。
仕事はこなす。だが、以前のような、妙に危ういまでの集中力は見られなくなっていた。
ヒロはその様子を見て、胸の奥がざわつくのを感じていた。
(……これ、まずいんじゃないか?)
そんな折、事務所の社長から呼び出しがかかった。
ヒロは半分保護者のような気分で、ノアの代わりに社長室へ向かった。
「ヒロ君、気付いたか?」
社長の声は静かだった。
「ノア、最近、仕事への食いつきが少し弱くなっている」
ヒロは何も言えなかった。
やはり、社長も気づいていたのだ。
「このままだと、業界に飲み込まれる可能性がある」
社長は続ける。
「何か、手を打たないといけない」
ヒロは唇を噛んだ。
(どうする……)
(ノアを、ここから守るには……)
ノアの顔が浮かぶ。
ピアノを触っているとき。
酒を飲んでいるとき。
服を着て立っているとき。
何も考えていなさそうで、妙に静かなあの顔。
(……あいつを、もう一度動かすには……)
ヒロは焦っていた。
数日後、再び事務所に呼ばれる。
社長はにこやかに笑っていた。
「ヒロ君。答えを聞いてもいいかな?」
ヒロは少し俯く。
正直、明確な答えは出ていない。
(無理に必死にさせても、壊れるだけだ)
(でも、このままでも……)
無意識に、口が動いた。
「えっと……」
「今までと違う層にアプローチする、みたいなのは……」
社長の目が光る。
「それ、いいね」
机の引き出しから紙を取り出し、ヒロに差し出した。
「ヒロ君がそう言うなら、これをノアに任せよう」
ヒロが視線を落とす。
タイトルが書かれていた。
『子どもと一緒に遊んで学ぼう!』
教育番組の企画書だった。
ヒロの頭の中で、嫌な予感が鐘のように鳴る。
(……この社長)
(また絶妙なところを攻めてきやがる……)
ノアに教育番組。
合理性と狂気の境界に立つ男に、
純粋な子ども向け企画。
危険としか言いようがない。
だが同時に、ヒロは思う。
(……断れない)
(俺が提案した流れだ)
深く息を吸い、ヒロは覚悟を決めた。
(ノア)
(また何かやらかす覚悟をしておけ……)




