翠眼美少女は狙われる
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
お店で堂々と立つようになったニコは、普段の生活でもフードで顔を隠さず外を歩くようになった。
だが最近になって、妙に視線を感じることが増えていた。
「気のせい……だよね……?」
ニコは少し不安そうに呟いた。
ある日、サクラとニコが二人で買い出しに出かけたとき、その違和感ははっきりした。
「……知らない人がついてきています。どこか店に入りましょう」
サクラが小声で言う。
「え……?」
ニコの表情が固まった。
ヒロは大学に行っていたため、二人はすぐノアに連絡した。
部屋着のスウェット姿のまま、ノアが到着する。
「どうした?」
状況を聞いたノアは、少し考えてから言った。
「一度、ヒロの店に隠れよう」
サクラも同意し、三人で移動を始めた。
途中。
相手が女性だけだと思い油断したのか、男がニコに近づこうとした。
「ニコちゃん、だよね?」
手が伸びる。
その瞬間、ノアが静かに腕を掴み、素早く距離を詰めた。
無駄のない動きだった。
抵抗しようとした相手は、すぐに警察へ引き渡された。
事件はそれ以上、大きくならずに終わる。
泣き出したニコを、サクラが優しく背中から支えた。
その後、アパートに戻る。
「ノア、すごいな……どこで習ったんだ?」
ヒロが感心したように言う。
「暇なときに動画で見た」
ノアはいつも通り淡々としていた。
「こいつ、本当、妙なところで才能を発揮するな……」
ヒロは頭をかいた。
夜。
「ノア君、一緒にお風呂入ろう……」
ニコが小さく声をかけた。
ノアは特に何も言わず、浴室へ向かう。
湯船に二人で浸かる。
静かな湯気の中、ノアは何気なくニコの肩の近くに手を置いた。
ニコの頬を、ぽろぽろと涙がこぼれた。
「怖かった……」
小さく震える声。
ノアは何も言わず、背中を軽くさすった。
しばらくして、ニコの涙が頬から落ちる。
ノアは少し考えたあと、翠色の瞳からこぼれた涙を、ぺろりと舐めた。
「えっ……!?」
ニコが真っ赤になる。
「あ、ごめん」
ノアは悪びれず言った。
「泣いてるときの水分って、人体的にどういう味するのかなと思って」
「ノア君のバカ!!」
ニコは顔を両手で覆いながら叫んだ。
リビングでは、ヒロとユイが並んでテレビを見ていた。
「……もう、付き合えばいいのに」
ヒロが小さくつぶやく。
ユイも静かに頷いた。
だが、ノア自身はまだ気づいていない。
恋愛感情というものが、
どういう形をしているのか。
それが、ぼんやりとしか分かっていなかった。




