【番外編】子高、目覚める……!
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
子高が目を覚ますと、視界に飛び込んできたのは豪奢な天井だった。
「……ここは、どこだ」
低く呟くと、部屋の扉が勢いよく開いた。
「子高様……! 目を覚まされたのですね!」
慌てて駆け込んできたのは、この屋敷で働く使用人――いわゆる奴隷だった。
子高はゆっくりと体を起こす。
「……何があった」
奴隷によれば、突如屋敷を飛び出した子高は数ヶ月後、屋敷から百キロほど離れた農村で発見されたらしい。
発見時、意識はなく、譫言のようにこう呟いていたという。
『ノアちゃん……俺の女神が……ゼウスに……』
医者の診察結果は、記憶障害の可能性だった。
ショックによるものか、あるいは山で食べた毒キノコの影響か。
完全に元に戻るとは断言できないが、しばらく体を休めるようにとのことだった。
「ノアちゃん……?」
子高は小さく呟く。
胸の奥に、ぽっかりと穴が空いたような感覚があった。
理由は分からない。
ただ、何かが足りない。
子高はぼんやりとテレビをつけた。
商店街のロケ番組が流れている。
「……貧乏人が映っているな」
そう言いかけて、チャンネルを変えようとした。
そのときだった。
画面に、一人の男が映った。
輝く金髪。
青い瞳。
白い肌。
地酒を勢いよく飲み干している姿。
――その瞬間だった。
胸に空いていた穴が、すっと埋まった気がした。
「……奴隷」
「はい、子高様」
「こいつを調べろ」
子高は即座に命じた。
奴隷は戸惑いながらも従う。
子高は書庫に向かい、個性派ファッション雑誌や写真集を漁った。
「なんだ……この感情は」
胸がざわつく。
ときめき、と呼ぶには重く。
執着、と呼ぶには温かい。
――相手は男のはずだ。
そう分かっているのに、心が静まらない。
資料の中に、一枚の写真を見つけた。
メイド服を着たノアが写っていた。
その瞬間――。
全ての記憶が、洪水のように戻ってきた。
「……思い出した」
子高は立ち上がる。
金庫へ向かい、ゆっくりと扉を開いた。
そこに、大切にしまわれていたもの。
それは――。
子高がどうにか手に入れた、メイド服姿のノアとの二人きりのチェキ写真だった。
子高はそれを両手で握りしめる。
「……ノア」
低く、しかし確かな声で呟いた。
恋とも、崇拝ともつかない感情が、胸の奥で静かに息をしていた。




