妹の本気のデッサンは防犯効果があるらしい(モデルは俺)
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
デッサンの練習は、当然のように家でも続いた。
「協力して!」
ユイはスケッチブックを抱えて、真っ直ぐノアを見た。
ノアは少し考え、淡々と言う。
「服、どうする?」
そして、シャツの裾に手をかけた。
「待て待て待て待て!!」
ヒロが全力で止めに入る。
「お前がモデルやると危険度が高すぎる! 俺がやる!」
「なんで?」
「なんでって色々だよ!!」
結局、なぜかヒロがモデルを務めることになった。
ユイはぽつりと呟く。
「痴話喧嘩……いい構図」
「ネタにするな!」
ヒロは半ば投げやりに、上半身をさらすことになった。
意外なことに、ほどよく筋肉がついている。
サクラが赤くなって視線を逸らした。
「……しっかり鍛えていらっしゃるんですね」
ニコも目を泳がせる。
「し、知らなかった……」
当のノアは壁にもたれたまま、興味なさそうに眺めている。
「合理的な体型だね」
「評価が雑!!」
最初は冷やかされていたヒロだったが、やがて空気が変わったことに気づく。
ユイの目が、本気だった。
スケッチブックに向かう視線は真剣そのもの。
線を引くたび、迷いが消えていく。
部屋が静かになる。
騒がしいアパートの音が、少しだけ遠く感じた。
ヒロも自然と姿勢を正した。
数十分後。
「……できた」
ユイがスケッチブックを掲げる。
そこに描かれていたのは、思った以上に精密なヒロの姿だった。
陰影。
筋肉の流れ。
視線の強さ。
さっきまで騒いでいた空気が嘘のようだった。
「すごい……」
ニコが小さく息を吐く。
「どこかに飾りましょう」
サクラが嬉しそうに言う。
「いや待て!? 飾るってどこに!?」
――数分後。
玄関。
来客が必ず目に入る位置に、
半裸のヒロのデッサンが堂々と飾られた。
「やめろおおおお!!」
ヒロの絶叫がアパートに響く。
ノアは靴を履きながら、淡々と言った。
「防犯効果ありそうだね。少なくとも、普通の客は入ってこない」
「どんな理屈だそれ!!」
今日もアパートは、笑いと騒がしさに満ちていた。




