ヒロの妹のユイ襲来!
※本作はギャグ・コメディ中心の作品です。
※倫理・制度・恋愛要素などは深く考えず、ゆるくお楽しみください。
またしても、妹のユイがやってくるらしい。
学校が休みになったユイが、デッサンの勉強のため、ヒロのアパートにしばらく泊まるという話だった。
ヒロはいつも通り駅まで迎えに行ったが、妹の荷物がやけに多いことに気づいた。
「お前、それ一人で持てる量か……?」
「勉強道具が多いの」
ユイは平然と言った。
アパートに戻り、扉を開けた瞬間――ヒロは固まった。
ニコがノアを押し倒していた。
床に手をついたニコは慌てた様子だったが、タイミングを逃したまま固まっている。
ノアは無表情で天井を見ていた。
「……」
「……」
「……」
時間が止まる。
「お兄ちゃん、相変わらずすごいね……」
ユイは無邪気に感嘆した。
ヒロは絶句した。
ニコは慌てて顔を真っ赤にする。
「違うの、躓いちゃって……!」
「いたた……」
下敷きになったノアは少し痛そうに呻いたが、表情はいつも通り薄かった。
ヒロは心の中で叫んだ。
(なんだこのカオス空間……!)
気を取り直し、ニコはユイと向かい合った。
初対面の挨拶だ。
ユイは人懐っこく手を差し出したが、ニコは緊張で硬くなっていた。
その様子がおかしくて、ヒロは少しだけ笑った。
そこへ、キッチンからサクラの声がした。
「お昼ごはん、できましたよ」
全員で食卓に集まる。
ノアは今日も非常食のバーをポリ、ポリ、と食べている。
ユイはそれを見て、思わず小声で震えた。
「……まだそれ食べてるんだ」
ノアは気にしていない。
合理的だから、という顔だった。
そのとき、アパートのベルが鳴った。
真田が顔を出す。
「ヒロ、今日は遅くなるよ」
「いってらっしゃい」
ノアはそれだけ言うと、上着を羽織って出かけていった。
ユイはその背中をじっと見つめ、ぽつりと言った。
「ノア君、なんか変わったね」
ヒロは思わず飲みかけの茶を吹き出した。
(この妹、観察力が妙に鋭い……!)
アパートには、相変わらず生活音が残る。
皿を置く音。小さな笑い声。窓の外の風。
賑やかなのに、どこか落ち着く空気。
昼食のあと、ヒロはふと思い出したように口を開いた。
「それで、いつまで泊まるんだ?」
ユイは平然と答えた。
「言ってなかった? しばらくデッサンの勉強するの。受験まで頑張るから」
ヒロは固まった。
「……え?」
サクラはすぐに立ち上がる。
「では、お部屋の準備をしますね」
ニコは目を輝かせた。
「デッサン、見てみたいなあ」
ユイも嬉しそうに頷いた。
ヒロは両手を上げて叫んだ。
「俺を置いて話を進めるなー!」
一瞬だけ静かになり、すぐに笑い声が広がる。
今日もアパートは騒がしい。
笑いと混乱と、ほんの少しの静けさが混ざったまま。
ヒロの胃薬が、また一錠減った。




